表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

五百文字の小説

役にたつ魔法を覚えたい

作者: 銭屋龍一

「つまり、そういうわけじゃよ」

 世界最高レベルの魔法学の権威という白髪の博士はそう言うと、話はこれまでとばかりに目を閉じた。

 何を言っているのかさっぱりわからない。説明も何もなしでいきなりそんなこと言われても困る。わたしは博士の肩をゆすった。

「そういうわけって、どういうわけですか」


 すると博士の首はぐるんと半周ほどまわり、口が頭のてっぺんにきた。


 げっ、死んだのか?


 わたしは博士の手首を取って、脈をみようとした。

 が、そこはすでに蛇の頭に変容していて、もう少しで噛みつかれるところだった。


 危ねぇなぁー、と思った私は机の上に置いてあった厚紙に文字を書いた。

「危険物。取り扱い注意」

 その厚紙に穴をふたつあけると、紐を通して博士の首にかけた。


「わかったようじゃの。つまり、そういうわけじゃよ」

 白髪の博士は目をぱっちりと開けて、宣言するように言った。


 いや、なんのことかさっぱりわかんないんですけど。

 わたしはいいたい言葉を飲み込んだ。

 それを言ってしまうと、もっとおかしなことが起こりそうで怖かったからだ。

 博士はにこにこと笑っている。


 そのときわたしは気づいた。

 博士の周りにはロダンの「考える人」に似た彫像がいくつも並んでいるではないか。


 するとわたしは?


 自分の手足を確かめてみようとしたが、わたしの体はぴくりとも動かなかった。

 なによりも視線の角度さえ変わらない。


「つまり、そういうわけじゃよ」

 新しい訪問者が博士の前で首を傾げ、何事か考えはじめている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ