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久ぶりにアップします。

「サエ、こっちも手伝っておくれ!!」

「はぁい!!」


 なんだかんだ、この世界に来て2週間が経とうとしていた。


 イチカは、働かざる者食うべからずの心で屋敷のいろいろな雑用を手伝うようになっていた。


 肌身離さず、と言われた青いスカーフは、カチューシャのように頭に巻いていた。


 この屋敷は、どうやらあの堅い騎士殿のお父様の持ち物らしく、使用人は屋敷の主であるお父様の色を身につけているらしい。


「旦那様は王都以外にも領地をもっていてね。今は隠居も兼ねてそちらで暮らしているんだよ」


 と、使用人の一人であるハンナに教えてもらった。


 王都でも大きい屋敷のはずなのに、使用人が驚くほど少ない。女性はハンナ一人で、あとはハンナの旦那さんに息子が一人。3人で切り盛りしているのだ。


「まあ、めったに坊ちゃまはお帰りにならなかったからね。最近は、毎日帰ってきてくれるから腕のふるいがいがあるんだよ」


(私の、せいよね・・・・)


 あまり帰らなかった屋敷に、この2週間ほぼ毎日帰宅してる。間違いなくイチカの存在のせいだろう。


「さあ、洗濯物を干そうかね。サエ、一緒にお祈りしとくれ」

「はい」


 そう言って、目を閉じるハンナにイチカもそれに倣う。


 手を組み、心の中で祈る。


(良い風が吹きますように)


 この世界に来て驚いたのが、精霊がいるということだ。


 精霊使いという、精霊と契約できる人間もいるが、それは一握り。大半の人間が、精霊を見ることもできない。だが、みな精霊を敬い、何かあるたびに祈るのだ。


 イチカが目をあけると、優しい風が頬をなぜた。


「サエが来てから精霊もご機嫌な気がするね」

「そんなことはありませんよ」

「いんや、そうだよ。土の精霊も機嫌がいいみたいでね。野菜がすんなり抜けるんだよ」


 それは、土の性質の問題ではないだろうか?


 イチカ自身、精霊の姿は見えない。異世界に来て魔法使いデビューは出来ないようだ。


(でも、あの時に聞いた声はなんだったんだろう?)


 窓から落ちる時、誰かの声を聞いた気がするのだが、精霊が見えないのなら精霊の声も聞こえないはずなのだ。


 疑問をよそに、手は動いていく。洗濯物を手際良く二人で干していく。


「ホント、あんたが来てくれて助かるよ」

「いえ、お世話になっている身ですから。このくらい、当然です」

「まあまあ、小さいのにホントにいい子だねぇ」


 何度この会話が繰り返されただろうか?確かに、日本でも小柄な部類に入ったイチカは、この国では子供にも負けるらしい。


(いったいいくつに見られてるんだろう・・・・)


 恐ろしくて聞けない。多少若く見えることはうれしいが、度を過ぎるとショックが大きい


 しかも、今イチカが着ているのは、ハンナの息子たちのお古なのだ。


 この屋敷の主の子供たち、あの騎士を含むもう一人のお子様の服は、高価すぎて全力でお断りし、男の子しかいないハンナの子供のお古をお借りしたのだ。


 女性だけでなく、この国は男性も髪が長い人が多い。肩につくかつかないかの長さのイチカは、童顔と服とあいまって少年にしか見えないかもしれない。


 ハンナも長い栗色の髪を三つ編みにして垂らしている。その上に、チョコレート色のスカーフを巻いているのだ。


「さあ、全部干せたね。次は掃除をしにいこうかね」

「はい!!」


 洗濯物がなくなった桶は、軽くなる。それを、ひょいと片手で持ち上げるハンナとは対照的に、イチカは中身がなくなったにもかかわらず、両手で持ち上げる。


 桶を洗濯場に戻し、バケツを手に井戸へと向かう。


 ハンナが片手でもてるものも、イチカは片手では持てない。


「ゆっくりおいで」

「す、すみません」


 イチカの分のほうきやぞうきんも運んでくれるハンナの後ろを、今日もイチカはついて行くのだった。

ストック切れたらまた更新停滞します・・・。

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