海辺の幻灯機
掲載日:2026/04/26
春は色彩を贅沢に費し
雨を降らせて
海辺の街を白と黒に集約させてしまった
不意にもたらされた肌寒さは
過ぎた季節へと巻き戻す試み
知らず知らず流れていった歳月を
少しでも ふたりに添えてやろうとしたらしい
静けさのなかにひたれば
太陽は時を示すのもやめてやり
ふたりをモノクロームのフレームにおさめた
かれのフィルムが
かの女のそれに重なったのか
あるいは
はじめから 用意されていた
一枚きりのスライドだったのか
……
移り香も消えて 確かめようもない




