趣味の文章書きも意外に仕事で役に立つ
僕の生活は趣味の創作活動…… 主に文章を書く事が中心で、その為に膨大な時間を割いて生きて来た。
僕の職業はシステムエンジニアなのだけど、まぁ、そんなだから、あまり積極的にスキルアップはして来なかった。ただ、色々な事をやらされるから、それで結局はスキルアップをしてはいるのだけど、それでも時々ふと思う事がある事はある。
もし仮に、小説やエッセイを書いている時間を使って、スキルアップに集中していたなら、今頃は、もっと凄い技術者になっていたのではないだろうか?
もしかしたら、僕は時間の使い方を間違えてしまったのかもしれない。創作活動のお陰で確かに文章のスキルは上がっただろうけど、それにどれだけの価値があるというのか。小説やエッセイの文章はビジネスで用いる文章とは違う。少なくとも、仕事では役に立たない……
……と、僕はそう思っていたのだけど。
ある時だった。突然、上司からこのような仕事を振られた。
「フレームワークの共通部品を作って欲しいのだけど」
――はい?
と、それを聞いて僕は思った。会社の共通部品チームはちゃんと存在している。だから本来はそのチームが作るべきものであるはずだ。
だからそう言ってみると、
「それが、共通部品チームがやりたくないって言っていてさ」
などと返されてしまった。
いやいやいや。
どういう事?
……とは、思ったけれど、どうにもそれにはちょっとした事情があるようだった。話し始めると長くなるから、詳しい説明は省くけれども、それは共通部品チームの手から既に離れた仕事内容だったらしい。
もっとも、僕がやらなくちゃいけない道理もないのだけど、僕に断る権限があるはずもなく、引き受けざるを得なかった。
因みに、それから上司は見積もりも何もしていないのに「一週間でよろしく」と告げて仕事を丸投げして来た……
さて。
その共通部品は少しばかり特殊な仕様だったけど、それでもプログラミングは順調に進んで、テストも滞りなく終えた。
が、問題はここからだった。
先に述べた通り、僕が今回作ったのは共通部品だ。しかし僕は共通部品チームではない。だから、共通部品をいじる権限は持っていないし配布する権限も持っていない。更に言うと、各アプリで仕様が微妙に異なるから完全に共通部品化する事もできない。
だから、“共通部品”と言っても、実際は各アプリでそれぞれ実装してもらうしかなく、僕の仕事はより正確には“見本及びに雛形の作成”だった。そして、担当者にそれを伝える為のマニュアルの作成も必要だったのだ。
“マニュアル”
資料なら何度も作った事があったけれど、マニュアルは初めて作る。正直、上手く作れるかどうか自信がなかった。上手く作れないと会社全体の工数が膨らんでしまう……
が、自分でも不思議だったのだけれど、迷いなく僕はマニュアル作成を進められたのだった。
しかも、なんだかいい感じにできている気がする。
機械的にやり方を説明するだけじゃなく、どうして必要なのかを分かり易く理解させるように工夫をし、担当者が容易にカスタマイズできるようにする……
しばらくマニュアルを作成し続けて僕は気が付いた。この感覚は、エッセイや小説を書いている時と同じだ、と。
そうして僕が作成したプログラミングもマニュアルも大いに好評だった。不明点の質問が来るかもしれないと多少は不安だったのだけど、一度も来なかった。
どうやら僕が無駄だと思っていた趣味の文章作成は、いつの間にか僕の中で確かな実力となっていたようだった。
僕は軽く感動を覚えた。
“趣味の創作活動は、無駄じゃなかったんだ!”
ただ、そうして仕事を成功させたのに、それから僕の契約金(外注社員なんです)は物価変動分くらいしか上がらず、仕事を丸投げして来た上司が、何故か出世をしたのですけれども……




