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第4話:不治の病の少女

裏切りの魔術師との辛い別れを経験し、シャルロッテは魔法の力の持つ危険性を改めて痛感していた。彼女は、再び人々に力を与えることにためらいを感じ始めていたが、左手の紋様が示す次の場所へと歩みを進めた。


その場所は、かつて魔術師の暴走によって壊滅的な被害を受けた街の近隣にある、小さな村だった。村の広場では、健康な子供たちが楽しそうに駆け回っている。その中の一人の少女が、シャルロッテに気づき、にこやかに駆け寄ってきた。


「お姉ちゃん、もしかして旅の人?」


少女は、まるで健康な子供のように生き生きとしていたが、シャルロッテの左手の紋様が、かすかな光を放った。


【フラッシュバック】


薄暗い部屋の中で、ベッドに横たわる小さな女の子。その体は病に侵され、日に日に弱っていく。絶望に顔を歪ませる両親を前に、若いシャルロッテは、女の子の手をそっと握った。 「この子は、もっと生きたいと願っている。だから、この命の光を、この子に…」 紋様から溢れ出る光が、女の子の体を包み込み、病の進行を止めていく。女の子は、その光の中で、穏やかな眠りについた。


【現実】


フラッシュバックが終わり、シャルロッテは目の前の少女が、かつて病に苦しんでいた少女であることを理解した。


「あなたは…本当に、元気になったのね」


シャルロッテがそう呟くと、少女は不思議そうな顔をした。


「うん!病気は治ったの。昔、紫紅姫っていう優しい魔女さんが、私を助けてくれたんだって。おかげで、今ではこんなに元気に走り回れるんだよ!」


少女は無邪気な笑顔で言った。その笑顔には、一切の影もなかった。少女は、自分が受け取った魔法が、どれほど大きな奇跡であったかを語ってくれた。そして、彼女から譲り受けたのは自己治癒力だけでなく、彼女の「誰かを助けたい」という純粋な願いだったという。


少女との出会いは、裏切りの魔術師によって傷つけられたシャルロッテの心を癒やしてくれた。彼女が与えた魔法が、必ずしも悲劇を生むわけではない。そこには、確かに救われた命があった。


少女は、シャルロッテの左手の紋様を見て、そっと手を握った。


「ねえ、お姉ちゃんも、誰かを助けたいって思っているんでしょ?」


その純粋な問いかけに、シャルロッテの胸は締め付けられた。彼女は、少女に笑顔で頷き、旅立つ準備を整えた。


「ありがとう。あなたのおかげで、また少し…前を向ける気がする」


シャルロッテは、失われた記憶の断片を、希望の光と共に取り戻した。それは、彼女が「誰かを救いたい」と願う、純粋な心を持っていたという記憶だった。しかし、なぜその願いが、姉という存在に繋がっていたのか、その全貌はまだ謎のままだ。

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