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最終話:紫紅の輝き

「共創の光」は、姉の体を蝕む「災厄」の黒い影を、ゆっくりと、しかし確実に浄化していった。それは、騎士の勇気、農夫の希望、吟遊詩人の愛…シャルロッテが旅の途中で受け取った、すべての人々の心の光だった。


「…これは、みんなの…光…?」


姉は、苦痛に歪んでいた顔を、驚きと安堵の表情に変えた。黒い影は、まるで春の雪のように溶け、やがて完全に消滅した。姉の体から、「災厄」の気配は完全に消え去っていた。


「シャル…あなた、本当に…」


姉は、完全に浄化された体で、シャルロッテを抱きしめた。


「よかった…本当に、よかった…」


その時、シャルロッテの左手の紫紅色の紋様と、右手の白銀の紋様が、二つで一つとなるように、一つの大きな光の輪となって輝いた。それは、過去と未来、与えることと受け取ること、孤独と繋がり、そして「紫紅姫」と「シャルロッテ」が一つになった、完全なる魔法の光だった。


「災厄」を倒した彼女は、もう「紫紅姫」ではなかった。彼女は、多くの人々の想いと、自分自身の人生を胸に刻んだ、新しい存在。


「…シャル、あなたの記憶は、もうすべて戻ったのね」


姉の言葉に、シャルロッテは静かに頷いた。彼女は、記憶を失う前の自分自身、そして姉と交わした約束のすべてを思い出した。


「姉さん、約束通り、私たちはこれから、二人でこの世界を旅しよう。みんなの心と心を繋ぎ、新しい未来を創っていくために」


姉は、優しく微笑み、その言葉に頷いた。


家を出た二人の姿は、遠い水平線の彼方へと向かって歩き出す。彼女たちの後ろには、多くの人々が歩んだ道のりが、そしてその先には、希望に満ちた未来が広がっていた。


左手の甲には、もう紋様はなかった。代わりに、彼女の心の中に、すべての記憶と、人々の想いが、温かい光として輝き続けていた。


これは、一人の女性が、失われた記憶を取り戻す旅の物語。そして、その記憶の断片が、世界を救う力となる、壮大な旅の物語だった。

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