ペパーミントの魔物
『勇者ナカモトとペパーミントの魔物』
草原に涼やかな風が吹く、ある夏の日のこと。
勇者ナカモトは、魔王討伐の旅の途中、森の奥で妙な香りを漂わせる魔物に遭遇した。
「……おや、今日の勇者はミントの香りに気づくとは、お鼻が利きますねぇ」
と、影からぬるりと現れたのは――全身が葉っぱで覆われた、ペパーミントの魔物だった。
「貴様、ただの草とは思えん!名を名乗れ!」
「ワタクシ、魔界のアロマ担当、ミントドラールと申します。今日は特別な日ですので、ちょっと張り切ってるんです」
「特別な日?」
「ええ、今日はペパーミントの日なんですよ。6(ミ)と20(ハッカ)で"ミントの日"、語呂合わせってやつです」
「まさかの語呂合わせ!?そんな記念日まで知っているとは…恐るべし魔界!」
「ふふっ、勇者さんもいかがです?この香り、集中力が高まって、ブロックチェーンの検証効率もアップしますよ?」
「お前…なんで俺の職業まで知ってるんだ……?」
「そりゃもう、有名ですから。仮想通貨界の伝説、勇者ナカモト」
「やめろ!そういうの一番困る!」
するとミントドラールはくるりと回り、葉を一枚差し出した。
「戦う前に、一枚どうぞ?戦闘中の息のリフレッシュに」
「…く、くそ…敵なのに、爽やかすぎる……」
その後、ナカモトはミントドラールとの戦闘をやめ、共にハーブティーを飲みながら談笑したという。
そして伝説はまたひとつ