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タピオカソード

へこみちたちが戻ると、タピオカ村は壊滅していた。燃え盛る建物群と子どもの泣き声を村の入り口で茫然と三人が眺めていると、村で最初に話しかけてきた民宿の女将が近づいてきて

「討伐は失敗して、主人は死んだのでしょう?」

といきなり言ってきて、三人が言葉を返せないでいると

「私は、ミスティスふじさきと言います。ジャスティスたからざきは旦那です」

「夫婦別姓ですか?」

思わず尋ねてしまったにゃにゃーん大王にミスティスふじさきは

「内縁の妻です」

「そうだったんですか……」

「私も連れて行ってください。敵討ちをしなければなりません」

意志の強そうな瞳で言ってきたミスティスふじさきに

「ダメだ。すでに死亡フラグが立っている」

「そうよ。これ以上仲間は失えないわ」

にゃにゃーん大王がツッコむべきか迷っていると、ミスティスふじさきは涙ぐんで

「お二人の優しさはよくわかりました。せめてこのタピオカソードを持っていってください」

「うえっ」

思わず吐きそうになったにゃにゃーん大王の前にポエミーが出て、その異様な物体を受け取る。ミスティスふじさきが渡してきたタピオカソードは小さなタピオカが無数に連結されて長さ1メートルほどの剣の形に並んでいた。ポエミーはそのグリップを握ってブンブンと振り回す。そのたびにタピオカソードはプルプルと震えた。ポエミーはジッとタピオカソードを見つめると、いきなりにゃにゃーん大王のお尻めがけて振り下ろした。ペシッという音がして

「ああんっ」

にゃにゃーん大王が思わず声を出す。

「痛いの?」

「い、いや、何か気持ちい……あっ、やんっ!」

今度はにゃにゃーん大王の背中目掛け、タピオカソードは振り下ろされ、にゃにゃーん大王は、顔を真っ赤にしてその場に座り込んだ。ポエミーはニコリと笑って

「私が頂くわ。これ回復そして、滋養強壮効果があるわね」

ミスティスふじさきは神妙な面持ちで頷いた。


深夜だが、三人は急いで馬車に乗り西へと向かうべく、タピオカ村を後にした。ポエミーがにゃにゃーん大王に

「今ならジャスティスたからざきの勘違いと、ドラゴンのプライドを傷つけたへこみちのせいで村が滅んだことに誰も気付いていないわ。へこみちが余計なこと言う前に退散するのよ」

と耳元で囁いたので、青くなったにゃにゃーん大王がへこみちの背中を押して馬車に乗せ、素早く出発したのだ。

にゃにゃーん大王は御者をしながら

「あの、ポエミーさんって、もしかしてわかっててやってます?」

ポエミーは荷台で寝だしたへこみちに毛布をかけながら

「なんのことかしら?」

すっとぼけた返答に、にゃにゃーん大王は

「あー……」

と言うしかなかった。

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