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ジャスティスたからざきの死

「ジャスティスたからざきー!」

へこみちの絶叫が満月に明るく照らされた渓谷美に響き渡る。彼の目の前で、鉄の鎧に身を包み、鉄の大盾を構えていたジャスティスたからざきは、巨大なドラゴンから吐かれた火炎ブレスに飲み込まれ人型の消し炭となり、そして崩れた。へこみちとポエミーから数メートル離れた岩にしゃがみ込んで隠れたにゃにゃーん大王が

「もっ、もうダメだ……テンペスト級ドラゴンを怒らせた……だから止めたのに……」

ガタガタ震えながらブツブツ呟いている。

へこみちは、血塗らた棍棒を構えると

「許さんぞ……三人目の仲間になるはずたったジャスティスたからざきを……」

ポエミーも怒りに満ちた瞳で

「こんのクソ◯◯◯野郎!小さいその◯◯◯をちょん切ってスープに入れてやるわ!」

とても字面にできない言葉で罵った。


翠のウロコに覆われた巨大な大蛇のようなドラゴンは、冷たい爬虫類のような目つきで二人を見つめると、大きく口を開けてへこみちめがけ猛烈な火炎ブレスを吐きかける。へこみちは全身黒焦げになり、服も下着も全て焼け、髪の毛もチリチリのアフロパーマになったが耐えきり

「ジャスティスたからざきのことか……」

仁王立ちをしてドラゴンを見据えるとそう呟いた。ドラゴンが微かに怯えた表情をした。ポエミーは目を閉じて

「るーるるー勇者の怒りは仲間への愛で目覚めるのー」

と歌い出した。さらに勇んだへこみちは

「お前がバカにしたのは、俺たちの大事な仲間のジャスティスたからざきのことか!」

思わず岩陰から立ち上がったにゃにゃーん大王が

「まだ出会って1時間くらいですよ!あとそのドラゴンは一言も喋ってないですって!」

と叫んだのとほぼ同時だった。ニートレベル99の鍛え上げられた脚力で、ドラゴンの頭上に一気に跳躍したへこみちの、両手持ちした棍棒を振り下ろした渾身の一撃が、ドラゴンの眉間にクリーンヒットした。


「グオオオオオオオオ……」

思わず呻いたドラゴンは、数十メートルはありそうな長く太い巨体を猛烈に後退させていく。

「待て!逃げるのか!」

追撃しようとしたへこみちをポエミーと駆け寄ったにゃにゃーん大王が左右の腕を取って引き留めた。

「へこみち、勝ったのよ」

「そうですよ!もうこれであのドラゴンも去るでしょう。すごい戦果です!」

へこみちは舌打ちをして

「ジャスティスたからざきを侮辱したアイツのことだけは絶対に許さない」

にゃにゃーん大王は何か言おうとして諦めた。


三人はジャスティスたからざきの遺灰を袋に詰めると、森に留めていた馬車に乗り、タピオカ村へと引き返し始める。新しい服を着たチリチリパーマのへこみちが袋を握りしめ

「くそっ、何でこんなことに……」

「にゃにゃーん大王が説明してくれるわ」

いきなりポエミーに話を振られた御者席のにゃにゃーん大王は、戸惑いながら

「……あの、渓谷で水浴びをしていた罪のないドラゴンに、ジャスティスたからざきさんが因縁つけて……お前のせいでタピオカが売れないこのクソヘビが、とか大声で侮辱したので怒っていきなり焼かれたんですよ……」

「つまり、やつがジャスティスたからざきを侮辱したんだな」

「許せないわね……ジャスティスたからざきの死を無駄にしないようにするわ」

「何でそうなるんですか……あっ、はい、そうですね……お二人が正しいです……あっ、タピオカ村の方が燃えてる……」

三人が、怒り狂ったドラゴンの八つ当たりで壊滅したタピオカ村を見るのは、十五分後のことだった

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