タピオカ村
途中で昼食を取り、なだらかな山をいくつか越えると、次第に日が暮れてきた。
「大王、俺たちに野宿させる気か」
「一緒にテントを立てなさいよ」
御者席のにゃにゃーん大王は焦りながら
「た、確か、変な村があったはずですけど……」
山道の先を見つめていると、遠くに大きな集落が見えてきた。近づいていくとそこは山中に切り開かれた場所に造られた村だと分かる。馬車のまま入っていくと、すぐに村人の老婆が寄ってきて
「もし、旅人さんや。宿を探しているなら、うちに泊まらんか?」
と言ってきて、にゃにゃーん大王が何か言おうとする前にへこみちが
「泊まる」
「泊まらせて貰うわ」
ポエミーも賛同して老婆はにっこり頷いた。
近くに馬車を繋いで、民宿だった老婆の二階建ての家の、2階の部屋に三人は通される。
老婆が行ったあとに
「金は要らんらしいぞ。罠だな」
「そうね。ここは先制攻撃よ」
いきり立つ二人に、にゃにゃーん大王は慌てて
「た、たぶん、他に頼みたいことがあるのでは?」
「何でモンスターのお前が知っている」
「グルね。まずは脱がせて吐かせないとね」
二人から囲まれたにゃにゃーん大王は焦りながら
「ま、前にここを通った時に大変なことに……」
「何で通ったんだ?」
「モンスター的な卑劣な罠の設置?」
「ち!違います!グリグランへ行く途中に通ったら……」
にゃにゃーん大王がそこまで言ったところで扉が開かれて、ふんどし一丁の髪の毛がない痩せた高齢男性が入ってきた。
いきなり男性は土下座すると
「タピオカ村の町長であるこのジャスティスたからざきの願いを聴いて頂けないでしょうか!」
「きくぞ」「ききましょう」
「えっ……聞くんですか?」
にゃにゃーん大王が驚いていると、ジャスティスたからざきと名乗った男性はシワの深い顔を床につけて
「ありがたき幸せ!」
と叫び、すくっと立ち上がると
「この村は、タピオカたくわんやタピオカご飯、それにタピオカバターや、タピオカカレー、さらにはタピオカいちごジャムなどを売って暮らしてきました」
にゃにゃーん大王が顔をしかめて
「それらに、タピオカ入れる必要ないですよね?」
だがへこみちとポエミーは
「おいしそうだ」「さすがね。売れそうだわ」
「でも!この辺りに住み着いた魔物のせいで!悪評が立ってしまい!売れなくなったのです!」
にゃにゃーん大王が呆れた表情で
「ブームが過ぎただけでは?」
「許せんな」「許せないわね」
へこみちとポエミーは同情した顔になった。ジャスティスたからざきは嬉しそうに
「さあ!魔物を倒しに行きましょう!今すぐに!夜襲です!」
「夜襲だな!」
「夜襲よ!今度こそ成功させるのよ!」
へこみちとポエミーは深く頷いて、にゃにゃーん大王はその後ろで肩を落としていた