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勇者へこみちの覇道  作者: 弐屋 中二


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54/71

折半

「さっそくキャットランドに向かうのよ。支配するのよ」

空を飛んでいるピョミミーンの背中でポエミーが気持ち良さそうに言うと、へこみちは心配そうに縛られたまま、うなだれているメルルーンに

「おばさん……大丈夫……?」

「あ、アリサちゃん、あのね。魔王様は幾つもお姿があって……その一つに可愛らしい女の子のお姿があるんだけど、その魔王様にヴァヴァンチーちゃんは毎晩可愛がられていて……私も……」

よしこが真顔で

「せいてきとうさくしゃっていうんだよね?俺知ってるよ!」

ポエミーが微笑みながら

「メルルーン、私が飼ってあげるのよ」

メルルーンは項垂れながら

「違うの……魔王様は何処か神秘的で、別の世界の人という感じがするの」

よしこがめんどくさそうに

「大人って大変……じゃなくて変態だなー」

と言った。魔族の少女が

「そろそろわしの名前について誰か訊いてくれんかの……メローって言うんじゃが……」

と呟いて全員からスルーされた。


二代目へこみちたちがキャットランドの首都のキャットシュト郊外の平原に着地したピョミミーンから降りると、続々と猫耳猫尻尾の兵士たちが走ってきて

「おおおお!アリサ王女お帰りなさいませ!大変なのです!」

兵士長の口ひげを生やしたダンディな猫耳族が言ってくる。

「アンディ!どうしたの!?」

へこみちがまるで本物の王女のような物言いをすると

「へこみちとポエミー、そしてカメタという輩が勝手に宮殿を占拠して王を追い出し、しかも王を名乗っているのです!」

ポエミーがニヤリと笑うと

「面白くなってきたのよ」

と言った。


「おいわかってんのか!?リングでは馬力が必要だよ。つまりワールドではタンパク質とアルコールがいるってことだよ。持ってくるかこないか!そこが分かれ道だってことだよ。そうだよ、猫耳族わかってきたじゃねえか」

あぐらをかいて座り込み唐突に酒と肉を要求し始めたピョミミーンの接待は兵士たちに任せ、5人は兵士長と宮殿を目指す。


宮殿の玉座の間に駆け込んだ5人は、玉座の手前に金銀財宝を積み上げて数えている初代へこみち、ゲーチェポエミー、そしてカメタを目にした。

初代へこみちは驚く二代目へこみちたちを見つめ

「ああ、来たのか。何か魔王からキャットランドやるって言われたんだろ?」

二代目へこみちは初代へこみちに詰め寄って

「そ、そうですけど!ここ私の国ですし!貰ったのはうちのパーティーですよ!?というか!二人とも蘇ってたんですか」

初代へこみちは面倒そうに顔を顰め

「詳しいことは後にしろ。国はやる。だが金は貰う」

ゲーチェポエミーも頷いて

「折半なのよ」

天使ポエミーがゲーチェポエミーに近づくと

「ここは争いは避けるが吉なのよ。金は国民から巻き上げれば良いのよ」

何か言おうとした二代目へこみちをよしこが抑えて

「今夜はみんなで宴会だね!」

と言った。メルルーンは目の前の光景にまた崩れ落ちて、メローとか自称した魔族の少女は腕を組んで考え込み始めた。その背後からカメタが忍び寄る。

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