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勇者へこみちの覇道  作者: 弐屋 丑二


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伝説のアレ

ギルドマスターは大きく深呼吸をすると

「兄ちゃんを伝説のアレにするには、一人ではちょっと難しい」

と言いながら息を吐いて

「うちのクズ妹に手伝ってもらうけどいいか?」

へこみちは腕を組んで大きく頷く。

ギルドマスターは手で「ちょっと待っていてくれ」とジェスチャーしてから、奥へと引っ込んでいった。

へこみちとポエミーは小声で

「やつがとうとう来るな」

「そうね。あの子の使い所が大切なのよ」

と打ち合わせし始める。


ギルドマスターは金髪碧眼ポニーテールでウエイトレスのような格好をした若い女性を連れてくる。女性はアヒル口を作りながらギルドマスターにねだるように

「ぽひょーおにーちゃーん……お薬くれだにゅうー」

薬をねだり始めた。ギルドマスターは煩わしそうに

「そこの兄ちゃんの伝説のアレへの転職に成功したらやるよ」

女性は猫背でへこみちに目を細めると

「あー……やべーやつだにゃあ……クソみたいな職歴とスキルだにゅー」

そしてポエミーを見てため息をついて

「ぽひょーえー悪意のかたまりみたいなBBAだにゃあ。うちはこんな反社会勢力に手を貸したくないにゅー」

ギルドマスターはイライラした顔で

「薬いるの!?いらないの!?どっちなの!?」

女性は涎を垂らしそうな表情になり

「いるにゃあ……お薬ほすいにゅうー」

と言うとギルドのカウンターから出てきて

「お兄ちゃん、ホントに伝説のアレになるのかにゅー?やめるなら今だけどにゃあ?」

へこみちが無言で頷くと女性はため息をついて

「しょうがないにゃあ……じゃあ、ちょっと待ってろにゅー」

足早にマスターとギルドの奥へと戻っていき、そして宝箱とツボと樽を奥から次々に運び出してきた。


マスターと女性はへこみちの前に宝箱、ツボ、樽の順番でそれを並べるとさらに、彼の足元に小銭をばらまいて

「1個ずつゆっくり拾えにゅう」

と要求してきた。へこみちがしゃがんで小銭を拾うと

「チャリーン、1ヴィラを拾った」

女性がそう言った。またへこみちが拾うと

「チャリーン、5ヴィラを拾った」

と拾うたびに繰り返しだした。


へこみちが20枚ほどの小銭を拾い終えると今度は女性は

「宝箱から、探っていけにゅうー」

とダルそうに指示してくる。へこみちが黙って宝箱を開けると空だった。女性がすぐに

「ピョルン、宝箱は空だった」

次にツボに手を突っ込むとへこみちは硬貨を1枚手にした。また女性が

「ピョルン、5ヴィラを拾った」

最後にへこみちが樽を探ると、中からセクシーな女性ものの上下下着が出てきた。

「ピョルン、えっちなしたぎを見つけた」

女性はポエミーを見て

「装備しろにゃあ」

ポエミーは黙って上から着ると、女性はようやく満足そうになり、へこみちに

「道行く人に無闇に話しかけますか?」

へこみちは黙って頷く。

「鍵のかかっていない民家に無断で侵入して家探しをしますか?」

へこみちはまた頷く。女性はやるせない顔で

「モンスターに権利はないと思っていますか?」

へこみちは深く頷いた。

「例え人間でも悪人は裁判を受ける権利はないと思っていますか?」

へこみちはニヤリと笑って頷いた。

「選挙で選ばれた代表より、世襲の王様のほうが国を治めるのに適している?」

へこみちはまた頷く。

「特に信仰心はないけど、神に守られていると思っている?」

へこみちは迷いなく頷く。

「魔王は何としてもSATSUGAIしたい?」

へこみちは深く何度も頷いた。

女性はダルそうに

「ぽひょー……何の迷いもないにゃあ……儀式終わりーお兄ちゃん、あと頼むにゅう」

と言うと近くの椅子に座り込む。

ギルドマスターはポンポンとへこみちの肩を叩くと

「お前こそ勇者だ。おつかれ」

と言った。


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