竜言語
巨大ピンクウサギはそのまま小舟を担いでいき大瀑布に近寄っていく。
「う、うーん……」
眠っていた少女が起きた。へこみちたちはしゃがんで裸の少女に
「だ、大丈夫だった?」
少女は目を開けて、サッと上半身を起こすと、周囲の状況を確認して
「ぴゃやあああ……ぽええええ……」
泣きそうな情けない悲鳴をあげると
「ピョミミーンに……運ばれて、おるが……」
と青い顔で言った瞬間に小舟はまた湖に降ろされ、巨大ピンクウサギは少女を見下ろすと
「わかってんのか?俺はやれるかって聞いてんだよ。お前たちの覚悟をな!やれないものは去る、やれるものはリングに残る。それがワールドだろ、つまりパワーってことだよ。魔族のお前にも問うぞ?やれんのか?」
少女は大きく深呼吸をすると、覚悟を決めた眼差しでウサギを指さしながら、大声で
「お前こそやれんのか!?パワーの集まりがつまりワールドってことなんだぞ!お前はリングに残る資格があるのか、俺は甚だ疑問があるよ。おいピョミミーン!やれんのか!お前は魔王様をやれんのか!?」
ピンクの巨大ウサギは目を細めて少女を見下ろすと
「ああ、やるよ、やってやんよ。このピョミミーン、お前みたいなレスラーに会ったのは久しぶりだよ」
両腕で力こぶを作りニカッっと笑った。少女はホッとした顔で座り込む。
「どゆこと?」
よしこが尋ねると、少女は
「竜言語じゃ……どうにか通じたらしい。魔王様と闘って欲しいと頼んだら、承知してくれた」
へこみちが啞然としたあとに
「なんで魔王と……」
少女は泣きそうな顔で
「もはやわしは帰れん。帰ったらエッチな奴隷か処刑じゃ……こうなったら魔王様を倒すしかない!」
そう言ってようやく自分が全裸なのに気づいて胸と股を腕で隠す。
巨大ピンクウサギは小舟を持ったまま大瀑布の近くへと到達すると、いきなり水しぶきをあげながら跳躍して、大瀑布へと突っ込んでいく。そして大瀑布の表面を滑るように逆流して、そのまま大空へと飛び上がった。
「と、飛んでる!俺たち飛んでるよ!」
へこみちの上着を着た少女が冷静な表情で
「ピョミミーンの尻を見よ」
へこみちたちが小舟からピンクの巨大ウサギの丸尻尾がついた、盛り上がった二つのピンクの山のような尻の方を見ると、尻穴から大量の水が噴射されていた。その近くには虹もかかっている。
「水の力で飛んでいるの?」
よしこが少女に尋ねると
「そうじゃ。しかしどう見ても体長百メートルはないのお……代替わりしとったか」
「あ、あのこれ、どこに向かってるんですか……」
少女は白みつつある夜空を見上げ
「わからん」
と言った。




