ほしいのよ
土の中から出てきた手はさらに盛り上がった墓を崩して骨だけの全身を突き出してきた。へこみちたちが尻餅をついたまま、後ずさりしてその様子を見つめていると、墓から完全に這い出てきた骸骨は、指で土に
「よみがえったのよ」
と書いて、カチカチと歯を噛み合わせ笑い出す。
「ポッ、ポエミーさん!?」
と尋ねるへこみちに骸骨は頷いて
「きんにくと ぞうきと ひふがほしいのよ」
と言いながら、へこみちたちの脇で寝ている少女を指さす。
「あ、あのもしかして……食べたいとか思ってます?」
「もしかしたら魔物食べたら身体が戻るとか?」
二人に骸骨は何度も頷いて
「そのこ、まぞくだとおもうのよ まものなのよ まものたべたいのよ」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいよ!」
よしこも慌てて
「ポエミーさん!普通のモンスターにしよ!?まだジャングルにモンスター居るから!」
自称ポエミーの骨はまた指で土に
「じゃあSLYMEとかGoblinじゃなくてDRAGONたべたいのよ さがすのよ」
へこみちは脱力しながら
「なんでアルファベットなんですか……この子起こして聞いてみますね」
と言った。
5分後。
「ぽやああ!びょわああああ!」
ジャングルに起こされた少女の悲鳴が響き渡る。しゃがんだ骸骨に至近距離で見つめられてまた失神しそうな少女にへこみちが
「えーと、起こしてごめんね、ドラゴン知らない?この骸骨のポエミーさんが食べたいんだって」
「この人俺たちの仲間だよ!」
二人に落ち着かされた少女は深呼吸したあと
「どっ、ドラゴンだったら……この付近にピョミミーンがいるが……」
「そ、それ強いの?」
「かわいい名前だね!」
「うむ……水に潜んでいて、定期的に水害を起こす水龍じゃな。体長百メートルはあるぞ」
骸骨が興奮した様子で
「それよ!」
と地面に書いて、へこみちはあからさまに嫌そうな表情をした。




