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勇者へこみちの覇道  作者: 弐屋 丑二


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30/71

魔王様

2日後。


傷だらけのへこみちが樹海の中に倒れていた。西へと戦いに行ったは良いが、戦力が足らず数百体のモンスターに馬車は破壊され、どうにか四人と馬は散り散りに逃げ去ったのだ。

「うう……もう嫌だ……」

ほぼ全裸のへこみちはどうにか立ち上がり、辺りを見回す。仲間は見当たらず、樹海をトボトボと歩き始めた。


「どうしたら、私、国に帰れるんだろう……」

涙目になって立ち止まったへこみちの目に樹海に似つかわしくない看板が映る。そこには


「すごく強い防具あります この先の洞窟」


と汚い字で書かれていた。へこみちはため息をつきながら、フラフラと看板の背後の獣道を歩いていく。少し先にツタに覆われた洞穴の入り口があり、吸い込まれるようにへこみちはその中に入っていった。


真っ黒な洞窟をひたすら進んでいくと、奥に明かりが見えてへこみちはそこを目指す。明かりの元は湖になっていて、その中心には、光輝く円形の金属盾のようなものが浮いていた。へこみちが湖の畔に、近づいていくと盾はひとりでにへこみちの前まで浮いてきて、手を伸ばしたへこみちの右手に収まると

「尻に挟め……尻に挟め……尻に挟め」

という神秘的な声が洞窟中に響き渡る。

へこみちはその場に座り込んで

「尻に……挟め……?この盾を?」

憔悴しきった表情で呟いた。



漆黒の鎧に身を包んだ悍ましい騎士が、稲光の轟く塔の屋根から暗黒の大地を仰ぎ見ている。

「ふむー毒の沼地はどうにもなんないかー」

意外と可愛い少女の声が鎧の中からして、その肩にとまったコウモリが

「魔王様、魔王将の盾、まだ見つかりません」

「あーあれは、人間の手には渡せないからねえ。ちゃんと探して。捕まったヴァヴァンチーちゃんはまだ?」

「明日にはここ、魔王城に移送されてくるかと」

「おっけー。コモーはどんな刑が良いと思う?」

「死刑かと」

コウモリが重々しく答えると鎧騎士は首を横に振り

「殺したくないの。考えて」

しばらく沈黙が続き、コウモリが重々しく

「髪と眉毛以外の毛を剃って服を着せず、魔王様の足置きとしたらよろしい」

「あー……まあ、仕方ないか。敵前逃亡と一万死亡はねえ。ちょっと我慢してもらうか」

納得した声が鎧の中からした。

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