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勇者へこみちの覇道  作者: 弐屋 中二


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大自然に抱かれて

河川沿いにグルっと一周しても岩石町ガガガガーンに入る橋や道はなかった。へこみちが不思議そうに

「どうやったら入れるんだ?」

ヴァヴァンチーは腕を組んで

「よく知らないんだ。飛んで入るとも岩の中に通路があるとも」

へこみちは腕を組んで高さ二十メートルの大岩のある町を見上げると

「……ロープ……を垂らして……上り下り……だな。それから河を泳ぐ」

と真剣な表情で言った。御者席のニャンスコルがたまらずに

「それ、無理でしょ!出入りにどれだけ無駄な体力使うんですか!」

と言ってしまったのを全員無視して

「ロープなのね」

「さすがだ。ありえるな」

「そうかもね」

と同意したのを見て、ニャンスコルは何かを言う気力をなくしたように両肩を落とす。


その後、へこみちが河を泳いで渡り、そしてロッククライミングで町の様子を見に行くと言うので、女性四人は馬車とともに待機することにした。

へこみちは血濡られた棍棒を背負ったままフンドシ1枚で勢いの強い河に飛び込んで

「ああああっっっっ……ちょっ……流れが速っ……」

すぐにそのまま流されていった。馬車の荷台からポエミーはそれをお茶を飲みながら眺めて

「たまには水に流されるのもいいのよ」

よしこもボリボリとクッキーをかじりながら

「へこみちさんだし」

ヴァヴァンチーも真剣ば眼差しで頷いて

「河くらいには負けない男だ」

ニャンスコルも馬に飼葉を与えながら

「皆さんに同意します」

と言った。


それから1週間が経過した。


四人は河辺にテントを張ってへこみちの帰りをずっと待っていたが、とうとうへこみちが帰ってくることはなかった。

ポエミーがふと、言った。

「……へこみちは死んだわ」

よしこも頷いた。

「河に負けたね」

ヴァヴァンチーも悲しげに

「大自然に抱かれてしまったか」

ニャンスコルだけ茫然とした表情で

「……えっ……さすがにもう帰ってくるでしょ?」

ポエミーが首を横に降って

「へこみち抜きで魔王を倒さないといけないわ」

「いや、私、キャットランドに帰るだけ……あっ……はい、魔王を倒します……」

ポエミーから睨まれてニャンスコルは顔をそらした。

よしこが布袋から本を取り出して

「よし!これでまずはこの国を救わないとね!」

と言った。ヴァヴァンチーが

「初期魔法が使える本か……」

微妙な顔をする。ポエミーはずっと布袋にしまっていたタピオカソードを取り出して、そのグロい刀身を空に掲げ

「志半ばで逝ったへこみちの仇を討つわよ!」

よしことヴァヴァンチーが頷いて、ニャンスコルは小声で

「……な、なんかおかしい……へこみちさんが死ぬなんて……」

ブツブツ言いながらガタガタ震えていた。

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