かわいいからよ
ニャンスコルは心が折れてしまい使いものにならないので、寝ているよしこと部屋に置いておき、へこみち、ポエミー、姿を隠したヴァヴァンチーの三人は、冒険者ギルドへ依頼の報告に行った。
道中ポエミーがヴァヴァンチーに
「もう大丈夫なの?」
「ニャンスコルに居場所をなくされた私は人間の中で隠れて生きるしかない。人間の営みを学びたい」
と殊勝なことを言っていた。
ギルドマスターはへこみちから古びたギターを渡され、シロカミが出たと告げられると
「……そりゃ悪かった」
とだけ言い、依頼書報酬の額よりも少し多めの一万ヴィラを渡してきて
「本部への報告の手紙を書いてくる。もう帰っていいぞ」
とカウンターの奥へと引っ込んでいった。
宿屋に三人が帰ると、よしこが寝ている横のベッドでシーツがもぞもぞと動いていた。ポエミーが一人近づいて、少しシーツをめくると、へこみちとヴァヴァンチーに
「あとは私がやるから、二人は隣の部屋でゆっくりしてて」
ヴァヴァンチーは首を梶げ、へこみちは
「紳士だからな。いくぞヴァン子」
「う、うん」
二人が隣の部屋に去ったあとポエミーはもぞもぞ動いているシーツの横に腰掛けて
「たまには、自分を慰めるのも大事よね」
「……」
「私、つきあってもいいけど?」
「……何で、みんな意地悪なんですか……」
シーツの中からニャンスコルの声がした。ポエミーは少し考えて
「あなたがかわいいからよ。かわいいからイジりたくなるのよね。まあ、人間のよくない習性なのだけど」
「私……可愛くありません……」
ポエミーは軽くため息をつくと、スルスルと全ての服を脱いでシーツの中に入っていった。
「あっ……待って、うそっ……私の尻尾をそんなと……こっ……に……」
その後はずっとニャンスコルのくぐもった喘ぎ声がシーツの中から漏れ続けていた。
隣の部屋ではへこみちが真面目な表情で
「ヴァン子、俺たちは魔王を倒さねばならない」
「うん。朝に聞いた」
素直に頷くヴァヴァンチーにへこみちは
「だが、仲間たちはまだ弱い。レベルを上げなければならない」
「……私の元仲間を売れと?」
へこみちは不敵に笑うと
「最弱の師団を教えてくれ。ニャンスコルが壊滅させるついでに、仲間のレベル上げをする」
ヴァヴァンチーは俯いて
「私の第3師団が最弱だったが……次に弱いのは第七師団だ。ここは石像や岩系の隊員が多く、師団長もそれほど強くない」
「そいつらはどこを攻めているんだ?」
「ここから南に五十キロほど下ると、超獣王国ババーンという頭の悪い名の野人国家がある。現在、そこと戦っていると聞いた」
へこみちは嬉しそうに
「次はそこだな!」
「壊滅はやめてくれ。我々にも生活や命がある」
心配そうなヴァヴァンチーに
「ニャンスコルにキツく言っておくが、あいつは見境がないからな」
へこみちはニヤリと笑った。




