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勇者へこみちの覇道  作者: 弐屋 中二


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ハラスメント

明け方に起きたポエミーが部屋に入ってきた頃には、床に転がっている縛られたワンスコルも椅子に座っているニャンスコルもよく眠っていた。ポエミーはジッとワンスコルを見つめて

「ああ……捕獲したのね。レアモンゲットだぜなのね」

事態を把握した表情になると、ワンスコルの横にしゃがみ込んで何かを考えだした。


「う、うーん……やめてくださあいい……食べないでえええ……降伏しますからああ」

ニャンスコルが寝言をつぶやき出して、いきなり両目を開けると、窓から朝日が射していた。彼女は慌てて、床に転がされていたはずのワンスコルを見るが、いなかった。

「に、逃げられたああああ!」

慌てて、隣の部屋に駆け込むが、ベッドにはよしこが寝ているだけでへこみちもポエミーもいない。ニャンスコルは真っ青な表情で宿屋一階の食堂に駆け込んだ。そこにはテーブルを囲んで朝食を食べている、へこみち、ポエミー、ワンスコルがいた。ワンスコルは角が突き出たフード付きローブを着ていて、モンスターとは分からない格好をしている。ニャンスコルはホッとした表情で近づいて

「ワンスコルさんのペット扱いは、やめたんですねえ」

へこみちが不思議そうな表情で

「ワンスコルじゃなくて新たな仲間であるヴァヴァンチーだぞ。ニャンスコル、ペットとしての分をわきまえろ」

「えっ……あの……私だけペット継続……?」

ポエミーも真剣な表情で

「あなた、昨晩、ヴァンちゃんに立場を利用したハラスメントをしたそうね。これは深刻なコンプライアンス上の問題だわ」

ワンスコル改めヴァヴァンチーも深く頷いて

「呆れたとか無能とか言われた。縛られたまま、言葉でのハラスメントをいっぱい受けた」

しばらくニャンスコルは口を半開きにしたまま固まって

「え、いや、人間として憎きモンスターに当然の報いを受けさせただけですし……そもそもヴァヴァンチーさんの部下を全滅させたのは、そこにいるへこみちさんですよ?」

なんとか言葉を絞り出した。いきなりヴァヴァンチーは立ち上がり

「お前!嘘をつくな!この二人から聞いたぞ!私の部下を全滅させたのは、殺戮ペットマシーンであるお前だと!」

掴みかかろうとするのをへこみちから腕を掴まれて止められて 、ポエミーから座らせられる。ニャンスコルは全身の力が抜けたらしくその場に座り込み

「……そうですよ……全部、私が悪いですよ……どうせ……猫耳と尻尾が生えたモンスターで、モンスター一万匹倒した殺戮ペットマシーンですよ……へへっ……へへへ」

床を見つめ、虚ろな笑い声を立てていた。

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