人みたいだね
へこみちはめんどくさそうににゃにゃーん大王を見た。彼女は必死に考えながら
「えっと!なんでお腹減ってるのか、説明お願いします!」
進み出てきたゴブリンは
「我々は魔王軍グリグラン王国方面派遣軍の第三師団生き残りですゴブ……」
「そっ、そういう軍編成だったのですがあ……」
関心しているにゃにゃーん大王にゴブリンはさらに
「先日、王都グリグランを囲んでいた本体の軍は全滅したゴブ……1年かけて増援も含めて一万のゴブリンとスライムが戦死したゴブ……とんでもない敗戦だゴブ……我々はたまたま被害がほぼない北東の丘陵での監視任務だったので生き残ったゴブ……」
「ああ、北東は森が途切れて行かなかったな、俺が……」
「ダメダメー!へこみちさん余計なこと言わないで!それでっ!?」
慌ててへこみちの話をにゃにゃーん大王は遮ると、ゴブリンに続きを促した。
「師団長のヴァヴァンチー様は魔王様に怒られるのが怖くて、持ち場を放棄して、この遺跡の最深部に隠れちゃったゴブ。戦線崩壊してるし我々は故郷に帰りたいゴブ……なので師団長に任務解除の要請をするため、頑張ってここまで来たゴブ……でも……」
「食料が尽きたと……」
よしこがいきなり手をあげて
「このあたり、ドングリとか果物なってる木がいっぱいあるよ!山芋も山程あるでしょ。分からないの?」
「おお……教えてほしいゴブ。恥ずかしながら我らは山に詳しくないゴブ」
へこみちが不敵な笑みで
「待て。協力するなら、教えてやってもいい」
ゴブリンたちを見回した。
3時間後。
日が暮れた遺跡内で火を起こして、取ってきた食べ物でゴブリンたちは腹を満たしていた。へこみちは焼き芋をかじりながら
「おい。そろそろダンジョンに行くぞ。代表者一体でいい。ついてこい」
「私がいくゴブ」
先程進み出てきたゴブリンが立ち上がった。
へこみちは頷いて、ゴブリンたちと談笑しているにゃにゃーん大王とよしこにも行くぞと告げた。三人と一体は遺跡内奥の割れた石階段から地下へと降りていく。
ダンジョンの構造を把握しているゴブリンの案内で、三人はあっさりと、複雑な迷路のような地下一階部分を突破した。要所に配置されていたミノタウロスやコボルトのようなモンスターたちも戦意がまるでなく、ゴブリンと少し話すと道を開けてくれた。地下2階への階段を降りながら
「地下三階が最深部ですゴブ」
「地元に帰ったら何するんですか?」
「農業に戻るゴブ」
「農家なんですねえ」
「魔王様が弱い魔物には就農勧めてるゴブ」
「徴兵されてきたのですかー?」
「そうですゴブ。兵役に就いたら給料も出るし税金安くなるゴブ」
よしこが不思議そうに
「人間みたいだねー」
ゴブリンは何とも言えない表情で
「魔王様が、我々の文明化政策を頑張ってくださっているゴブ」
雑談をしていると遠くから
「もういやだああああ!私は処刑されるうう!」
「ヴァヴァンチー様落ち着いてください!そろそろ腹を決めて魔王様へご報告にいかねば!」
「斬首はいやだああああ!」
甲高い女と野太いモンスターらしき声が響いてきた。