ダンジョンへ
へこみちとにゃにゃーん大王は、一部壊滅している街を横目に、西から出て、南西へと進みだした。七キロということで大した距離ではないだろうと二人は高をくくっていたが、崖に掘られたような道を進み、森の獣道を乗り越え、岩山の山道を越えてとモンスターすら出てこないような異様な険しさの道程であった。
「うう、やめとけばよかった……」
服がボロボロになったにゃにゃーん大王が弱音を吐いて、二人に西日が差した頃、岩場に囲まれたような古代遺跡あとが姿を現した。
「やっとついたねー!」
「そうだねえ……ってよしこちゃん!?」
布袋をすっぽりかぶって手足部分に穴を開け服にしているよしこがにゃにゃーん大王の横に立っていた。
へこみちは呆れた顔で
「俺は街を出たときから気付いていたが」
「じゃあ早めに止めてあげてくださいよ!」
にゃにゃーん大王は抗議しつつよしこに
「大丈夫だった?」
「うん。余裕。俺、山遊び好きだし」
「確かに傷一つない……あと、どうやって警察署からでたの?」
「えっと、トイレの窓から逃げてきた」
にゃにゃーん大王は頭を抱え
「よしこちゃん逞しいなあ……へこみちさんどうします?」
へこみちはニヤリと笑うと
「よしこ、このダンジョンに耐えきれば連れて行ってやってもいいぞ」
「何むちゃくちゃなこと言ってるんですか!」
「俺、耐えきるよ!」
「よしこちゃんも乗ったらダメだよ!」
「おいモンスター、差し出がましいぞ。人間の決断に立ち入ってくるな」
「私も人間ですよ!……はい……すいません……へこみちさんの言う通りです……」
へこみちから睨まれてにゃにゃーん大王は小柄なよしこの後ろに隠れた。
三人は崩れた古代遺跡の跡へ入っていく。無数の折れた石柱や割れた石畳を見回しながら進んでいくと
「待つゴブ!」
いきなりダミ声に声をかけられた。石柱の陰から大量の緑や青肌で小柄なゴブリンたちが出てきて、三人は囲まれた。へこみちは鼻で笑いながら血塗られた棍棒を構える。にゃにゃーん大王が慌てて
「へこみちさん!コイツラ武器を持っていません!」
と告げると、ゴブリンたちは一斉に両手をあげてその場にひざまずいた。
そして、一匹のゴブリンが進み出ると
「……腹、減ってますゴブ……何か恵んでくださいゴブ……」
と土下座してきた