ユニフォーム交換
へこみちとポエミーが、鉄鎧をフル装備した守衛が門に立つ大きな屋敷を遠くから伺っている。
「やはり正面突破だろう」
「……さすがね。混乱に乗じるのね」
二人は堂々と守衛に近づくと、へこみちが血塗られた棍棒を横に薙ぎ払い守衛はそのまま横にぶっ飛んでいき見えなくなった。
「よし。行くぞ。メイン軍師の金はつまり俺たちの金だ」
「そうね。魔王を倒すお金をもらわないとね」
二人は門を開けると堂々と中へと入っていった。
人けのない、よく整備された広い庭を抜けると、三階建の広大な屋敷の入り口が見えてきた。扉をへこみちは勢いよく叩く。穏やかな表情の老執事が出てきて
「何用ですかな?」
へこみちは無表情で
「この家の金目のものをもらいに来た」
ポエミーは微笑みながら
「表に出せないお金があるでしょう?」
執事は引き締まった雰囲気になると
「……私を倒せたら、好きに漁ってもいいです」
と言って、二人に庭の広場で決戦をしようと提案した。
老執事はただならぬ雰囲気で、へこみちと対峙する。腰を落とし両拳を構えると
「先に言っておきますが、私はモンクレベル51です」
「そこは53だろ」
「そうね。あと2レベル上げておいてほしかったわ」
「……加齢によるレベル低下で全盛期より12ほど下がっていますが……去年53でした」
「そうか……あと1年戦うのが遅かったな」
「……老いたとは言え、このジーニアスむたもちまだまだ盛んなり!」
ジーニアスむたもちの渾身の正拳突きをへこみちはノーガードで腹で受けた。
「ぐっ……さすがだ……83年の重みだな」
「……今年で76でございますが」
へこみちは老執事の鋭い回し蹴りをバックステップでかわすと
「……そうか、俺と戦うのはあと6年早かったか……」
「へこみち、7年よ」
「ふっ、算数は嫌いだ」
へこみちは地面を踏みしめて気合を入れると血塗られた棍棒を構えた。そして大きく息を吸って
「奥義!超棍棒スイング!」
と技名を叫んで老執事へと踏み込みスイングするかと思いきや、棍棒を投げつけた。老執事はそれを軽く避けたが、一瞬へこみちから目を離してしまった。
次の瞬間、へこみちのハイキックが老執事の顔面を正確に打ち抜き、彼は動かなくなった。
すぐにポエミーが駆けつけ、脈を確認する。
「生きてるわ」
「強かったな。強敵とはユニフォーム交換しないとな」
「そうね。それが礼儀というものね」
二人は気絶している老執事のスーツを素早く脱がして、へこみちの汚れた布の服を着せていいく。そしてへこみちは老執事スーツをまとった。
「さすが、ジーニアスむたもちだ。サイズもピッタリだな」
「そうね。さあ、私たちのお金をもらいに行きましょうか」
「ああ。メイン軍師の財産を無駄にしないためにな」
二人は颯爽と屋敷へ入っていった。