パーフェクトクズ
「ここから西へ行くとどんな街があるの?」
「モスモッスン公爵の治めるモッスン市がありますね……城壁に囲まれた大きな街ですよ」
「そこに向かいましょう。木を隠すには森よ。大都市に紛れて、ジャスティスたからざきを失った傷を癒やすのよ」
「わかりました……」
という会話が深夜の馬車で繰り広げられ、
三人は壊滅したタピオカ村からモッスン市へと向かうこととなった。
馬を休憩させながら半日ほど進み、時にへこみちが立ち塞がるモンスターを瞬殺しながら、昼になる頃には立派な城門が破壊され荒れ、その奥の市街地からは煙が何本も空に伸び、荒れ果てているモッスン市へと到着した。
「……これもしかして……」
戸惑うにゃにゃーん大王ぼ馬車を停めさせ、ポエミーは通行人と話しにいくとすぐに馬車に戻ってきて
「襲撃してきたのはあのドラゴンよ。どうやらモスモッスン公爵も早朝に死んだみたいね」
市街地の中心部で未だ燃え盛っている宮殿を馬車の荷台から指差す。にゃにゃーん大王は何とも言えない顔で
「公爵は、バイセクシャルなだけならいいんですけど、ロリコンでショタコンで人の嫁や旦那を寝取るのが好きで、税金を押領して私財を溜め込んでいて、しかも薬物とアルコール中毒なうえに、庶民を見下しているサディストっていうパーフェクトクズだったので死んでよかったと思うんですけど……」
へこみちは愕然とした表情で
「なんてことだ……つまり、俺たちのメイン軍師になるべき人物だったのか……」
「許せないわね……あのドラゴンは魔王の刺客なのかしら……」
にゃにゃーん大王は肩を落として
「ただ単にひたすら八つ当たりを繰り返しているだけだと思います……あっ、はい……お二人の言う通りですね……無事な宿を探しましょう……」
背後に二人の殺気を受け、慌てて馬車を進ませ始めた。
1時間後。
三人は宿で二部屋とり、へこみちとポエミーは市内へ情報収集へ、にゃにゃーん大王は片方の部屋で休息と睡眠をとることになった。
部屋のカーテンを閉めて、にゃにゃーん大王は一糸まとわぬ、猫耳と長い金の尻尾も露わにした姿で、濡れタオルを使い身体を拭き始める。
「……キャットランド遠いなあ」
ため息とともに弱音を吐いた後に、我に返った表情で
「だめですよ!私!きっと帰れます!」
と自らを励まして下着を着始めたところで、ガチャリと扉を開けてポエミーが入ってきた。
「あら、きれいにしてたのね」
と言いながら、ポエミーもスルスルと脱ぎ始めてまるで少女のような身体を晒すと、濡れタオルで自らの身体を拭き始める。にゃにゃーん大王はその様子を見ながら首をかしげ
「失礼ですけど、大人ですよね……?」
「そうよ。大人の女なのよ」
「……何かわかりましたか?」
「……今なら、公邸のモスモッスン公爵の私財が持っていき放題ってことね」
「いや窃盗はだめですよ」
「知らないの?勇者は世界の全ての宝箱を開けて良いのよ?」
「……あの、止めませんから、私寝てて良いですか?」
ポエミーは黙って頷いたので、にゃにゃーん大王は安心した表情をする。