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第九話 ヴェルシュタイン侯爵家 その1

アイリスとの話がまとまったところで、倒れていた騎士たちが起きてきたようだ。

「確かオーガと戦っていて…アイリス様、あの化け物は!」


「そこのいるロアが倒してくれたのよ!すごかったの!」


起きてきた騎士たちにアイリスが状況の説明を行なっているのを横目に、俺は今後のプランについて考え始める。

このままアイリスたちについて行ってアイリスの家、ヴェルシュタイン家に招かれたとする。その後、俺の出自やアイリスを助けた経緯などを聞かれるだろう。異世界人だと言うことは隠しておきたい。コレは最重要で隠すとしてユニークスキルも隠そう。全てを隠すのは無理だろうから影魔法だけ明かして、厄災の世界樹(レーヴァテイン)は影魔法によるものだとしよう。相手はどちらも知らないはずだから誤魔化し切れるはずだ。とすれば、森羅万象、ステータスの偽装化は可能か?帰ってきた答えは可能だと。よって偽装した俺のステータスはこうだ


ステータス

【名前】ロア

【種族】人間族 【性別】男 【年齢】10歳

【レベル】30

【称号】なし

【HP】500/500

【MP】2574/3000

【筋力】300

【体力】200

【知力】1000

【魔力】1000

【幸運】25

【ユニークスキル】影魔法

【スキル】生活魔法Lv4 回復魔法Lv6 身体強化Lv7 魔力操作Lv8 高速魔力回復Lv4 剣術Lv4 体術Lv6


まだ結構怪しい気はするが、偽装してないステータスよりは幾分かマシだろう。低すぎても逆に疑われるだろうから。鑑定に対する防御もできるようだが、それをしてしまうと鑑定を妨害するスキルも持っていることになるため余計怪しまれてしまうので今回はしない。設定としては物心ついた頃に森に捨てられて死に物狂いになって生き延びてきた可哀想な少年にしよう。アイリスを騙すのは心が痛むが仕方ない。


方針は決まった。それに、ちょうどあちらの話もまとまったようだ。アイリスがこっちに走ってきてる。


「ロア!正式に貴方を我が家に招待することが決まったわ!安心しなさい、嫌とは言わせないから!」


「アイリス様、その様な何処の馬の骨とも知れぬものを家に招くのはおやめください」


どうやら騎士たちは反対のようだ。コイツは筆頭って感じかな。


「いやよ!ロアには絶対うちの家に来てもらうわ!」


「なぜそこまで必死になるのですか?」


「あら?我が家の騎士は命を救ってもらった恩も返さないような恩知らずばっかなの?」


「そう言うわけではありませんが…」


「じゃあ決定ね!ロア、いくわよ!」


この子、理論武装でゴリ押しやがった。まあ招いてもらえるに越したことはないからいいけどさ、貴族令嬢ってもっとお淑やかなイメージだったんだけどな…。


「分かったよ。代わりと言ってはなんだが、道中の護衛は俺が引き受けよう。それでいいか?」


「もちろんよ!ロアなら安心ね!」


そうして俺はアイリスの家に招かれることになった。道中、特に目立った戦闘はなく俺が影魔法で秒殺した。ちょうど良かったので、俺はアイリスに世界の常識を聞いていた。


「まず、ここは何処なんだ?」


「ここはアルバート王国のヴェルシュタイン侯爵領にある魔の森よ。と言うか貴方、本当になにも知らないのね」


「まあ、物心着く頃にはあの森に捨てられたからな。今こうして生きてるんだから、そんなに気にしてないよ」


「ロアが気にしてないなら、私から言うことはないわ。他に聞きたいことはある?」


「じゃあ魔法について教えてくれ。俺のは特殊だから普通の魔法がよくわからないんだ」


「確かにすごかったもの。それでえーと、魔法についてね。まず人には魔法適性がある人とない人がいるのよ。それで使える人の中でも使える魔法の属性が決まっているの。一つの属性しか使えない人もいれば、二つ以上の属性を使える人もいるのよ。ちなみに私は火、水、風、土の4つの属性が使えるの。すごいでしょ!」


「確かにそれはすごいな」


「でしょ!それで、他には雷、闇、光の三つの属性があるの。伝説上の勇者様は空間魔法という特殊な魔法を使ったと言われているけど、今の所、その勇者様以外に使えた人はいないらしいの。魔法についてはこんなとこね。」


僕もその空間魔法、使えちゃいます。とは口が裂けても言えないと内心焦りつつ質問を続けた。


「この国、アルバート王国の他にはどんな国があるんだ?」


「そこらへんの説明はお父様にしてもらうとして、見えてきたわ!あれがヴェルシュタイン侯爵家領最大の街、ルーデスよ!屋敷もあそこにあるの!」


アイリスが指差した方を見ると、そこには強固な城壁を持った中世って感じの街が見えていた。


街の入り口にある関所は領主パワーで素通りし俺たちはヴェルシュタイン家の屋敷へと到着した。


「でけぇなぁ」


「そうでしょそうでしょ!我が家自慢の屋敷よ!ちょっと待ってて、お父様に事情を話してくる!」


そう言ってアイリスは屋敷へと入っていった。


そして待つこと15分ほど。屋敷から1人の執事服を着た老人が出てきた。老人といっても背筋は伸び、その体は引き締まっている様に見える。おそらくあのデミ・オーガより強いだろう。


「それでは騎士の皆様、そしてロア様、どうぞ屋敷へお入りください」


そういって執事は扉を開けた。そうして俺は扉を通されそのまま一つの部屋へと案内された。


「ロア様が入られます」


そういってメイドが俺がきたことを知らせた。あまりの高待遇にビビりながら、俺は扉を開けて付き添いの執事と共に部屋の中に入った。


「あ、ロア!ようこそ我が家へ!」


するとそこには笑顔で俺を迎えるアイリスと


「君がロア君か、私はヴェルシュタイン侯爵家当主、ユルゲンだ。娘を助けてくれてありがとう。どうぞ、楽にしてくれ」


金髪の優しい顔つきのおっさんがいた。恐らくこの人がアイリスの父親か。あんまし似てないな。てか侯爵家だったのか。そりゃあ街もでかいわな。そんな感想を抱きつつ俺はこの男を観察する。優しそうな雰囲気を出しているが、その体は引き締まっており、先ほどの執事同様強いだろう。そしてその目は獲物を狙うタカの様に鋭い。コレは一筋縄じゃあいかなさそうだ。内心ため息をつきつつ、俺は彼の前のソファに座った。バレた時が怖いから鑑定は無しでいこう。さぁ、交渉の時間だ。

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