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第十二話 ロアのステータス

翌朝、俺は柔らかなベッドの上で目覚めた。


「知らない天井だ。」


そんなことを言いながら俺は必死に記憶を辿る。確かアイリスの家に招待されてユルゲン侯爵と交渉して、俺はアイリスの護衛になったんだっけ。記憶の整理が終わった俺は部屋の中を見回し、隣の机に子供用のラフな服が置いてあるのを見つけた。そして、その服の横には置き手紙のような小さな紙が置いてあった。なんだろうかと疑問に思った俺は内容を確認する。


おはよう、ロア君。この手紙の横にある服は君のだよ。流石にそのボロボロの服ではあまり良くないだろうからね。用意が終わったら使用人に伝えるといい。そうすればセバスが迎えに行く手筈だよ。朝食は用意してあるから、セバスが案内してくれるよ。ユルゲンより。


なるほど、どうやって俺に気づかれずにこの手紙を置いたのかとても気になるが、ひとまず今はいいだらう。確かに昨日から何も食べてないから腹が減ったな。とりあえず着替えて朝食を食べにいこう。そう考えた俺は着替えた後、異世界にきて初めて食べるまともな食事にワクワクしながら扉を開け、ちょうど近くにいたメイドさんに声をかけた。


「おはようございます。俺はロアといいます。ユルゲン様より使用人の方に伝えればセバスさんが案内してくれると言われたのですが」


「アイリス様のお客様ですね。かしこまりました。」


そういってメイドさんはセバスさんを呼びに行った。それから数分後、廊下の奥からセバスさんが歩いてきた。


「おはようございますロア様。昨晩はよく寝れましたでしょうか?なにかご不満がありましたら申し上げください。」


「昨晩はぐっすり眠らせてもらいました。服の着心地もいいですし不満なんてありませんよ。」


「さようですか。それなら早速、朝食を食べに行きましょうか。ついてきてください。」


そう言われた俺は頷き、セバスさんの後をついていく。屋敷の中を見て思ったが本当にデカいなこの屋敷。昨日は見る余裕なんてなかったとはいえ、俺一回通ってるかもしれないんだよなぁ。そんなことを考えていると、セバスさんが一つの部屋の前で止まった。


「どうぞ中へお入りください。ユルゲン様がお待ちです。」


俺ってばユルゲン様を待たせちゃってたの!?


俺は緊張しながら扉を開け中に入った。そこには


「おはよう、ロア君。顔を見るに、どうやら落ち着いたみたいだね。」


「おはようロア!昨日は心配したのよ!」


なぜかアイリスもいた。まぁ、親子だしな。これが普通か。


「おはようございますユルゲン様。昨日は見苦しい姿を見せてしまい、申し訳ありませんでした。もう、大丈夫です。それとおはようアイリス。心配させて悪かったな。」


「ほんとにね!まぁ、元気になったのならよかったわ!」


「その通りだよロア君。君はもう我が家の一員だ。私に対しても堅苦しい言葉遣いは必要ないよ。」


「流石にそれは立場上できないので、これくらいでいいですか?」


「まぁ、それもそうだね。それくらいでいいよ。まぁ、このまま話し続けるとせっかくの料理が冷めてしまうからね。席に着くといい。朝食を食べようじゃないか。話の続きはその後にしよう。」


「分かりました。正直俺も腹が減ってたのでありがたいです。」


そう言って俺は朝食を食べ始めた。まずはフランスパンっぽいやつからいくか。そう考え俺はパンを齧った。


「美味しい!」


「異世界の食べ物がどんなものか知らないからね。何を作らせればいいのか分からなかったんだけど、口にあったようで良かったよ。」


「うちのシェフは優秀なのよ!色んな種類の美味しい料理を作れるの!」


「へぇ、さすが侯爵家お抱えのシェフだ。あまりいい舌を持ってる自信はないが、すごく美味しいな。」


そう言いながら俺はシチューっぽいスープを飲む。


「アイリスとの関係も良さそうで何よりだよ。」


「どういうことですか?ユルゲン様。」


「昨日、対談の終わり側に君をアイリスの護衛につけたのは親心あってのものだと言ったが。これが答えさ。僕は君にアイリスの良き友人になって欲しかったんだ。」


「なぜ俺にそんな役割を?まだ会って2日目だがアイリスは明るいし優しい子だ。友達ができないとは到底思えないんですが。」


「これは僕の落ち度でね、アイリスに早く自衛できる力を付けさせようと魔法の訓練ばかりさせてほぼ領地から出させてあげられなかったんだ。王都に行ったことも王家主催のパーティーに行く時の2回程度しかなくてね、同年代の貴族の友達を作る機会をあげられなかったんだ。」


なるほどそういう事情があったのか。だからアイリスと年も近く戦う力もある俺に目をつけたし、俺を厳しく見定めようとした。損得勘定もあっただろうが、大部分はアイリスへの愛情と優しさだろう。いい父親だな。


「なるほど事情は分かりました。アイリスを大事に思っている貴方が初対面の俺に護衛を託した。その評価と信頼に応えられるよう俺は全力でアイリスを守りましょう。」


「ふふ、頼もしいね。アイリスもそれでいいかい?」


「ええ、もちろんよ!改めてよろしくね、ロア!」


「あぁ、よろしくアイリス。俺がいる限り君には傷一つ付けさせないと誓おう。」


「それじゃアイリスの護衛はロア君に一任するよ。アイリスを守るためなら私の名を使うことも許可しよう。後で侯爵家の家紋が入った指輪を渡そう。さて、お腹も膨れたところで本題に入ろうじゃないか。セバス、防音の結界を。」


「かしこまりました。」


そう言ってセバスさんは魔法で防音の結界を張った。てか、いつからいたんだよこの人。全く気づけなかったんだけど、自信無くすわぁ。だが、魔法を使ってまで防音したんだ。相当大事な話なのだろう。俺は緊張して侯爵の言葉を待った。


「本題とは、君のステータスだよロア君。申し訳ないが娘の護衛の力は把握しておきたくてね。いいだろうか?」


なるほど、俺のステータスか。そりゃあ気になるわな。隠しておきたい情報は多いが、俺の勘がこの人たちは信用できると言ってる。言いふらしたらはしないだろう。それに、アイリスを心配してのことだろう。


「分かりました。お見せしましょう。」


「こちらから言っておいてなんだが、本当にいいのかい?ステータスは普通隠しておきたいものだ。相当信頼してる人じゃないと見せたりはしないしね。嫌なら断ってもいいんだよ?」


「いえ、俺は貴方のアイリスへの気持ちを信じます。貴方はアイリスの父親だ。娘に能力不明の護衛なんてつけたくないでしょう。まぁ、俺からの信頼の証のようなものですよ。」


「ありがとう、ロア君。」


「どんなステータスなのか楽しみね!」


「「…」」


今確実にいい雰囲気だったよな?俺と侯爵の信頼的な。何壊しちゃってんだよアイリス!まぁ、いいけどさぁ。アイリスは貴族に向いてなさそうだと内心ため息をつきつつ俺は皆に見えるようにステータスを表示した。


「ステータス、オープン」


ステータス

【名前】ロア

【種族】人間族 【性別】男 【年齢】10歳

【レベル】50

【称号】世界を超えし者

【HP】1500/1500

【MP】10000/10000

【筋力】1000

【体力】1000

【知力】3000

【魔力】6000

【幸運】45

【ユニークスキル】魔法創造・森羅万象

【スキル】生活魔法Lv4 回復魔法Lv6 火魔法Lv7 風魔法Lv7 水魔法Lv5 雷魔法Lv9 結界魔法Lv5 空間魔法Lv6 身体強化Lv7 魔力操作Lv8 魔力纏術Lv5 高速魔力回復Lv4 剣術Lv4 体術Lv6 思考加速Lv4 並列思考Lv4


これが俺のステータスです。


3人ともしばし固まった後、それぞれ驚愕の声をあげた。


「これはなんとも」「凄まじいね」

「すごいわねロア!」


「想像の3倍ほど凄まじいステータスだね。まさかユニークスキルを二つも持っているとは。」


「それに、魔法関連のスキルが素晴らしいですな。」


「すごすぎるわよロア!空間魔法って伝説の勇者様だけが使えた魔法でしょ!後でどんな魔法か見せてね!」


想像以上の反応に俺は驚きつつも聞いた。


「そんなにすごいんですか?これ。」


「すごいなんてものじゃないね。参考に私のステータスを見せよう。」


ステータス

【名前】ユルゲン・ヴェルシュタイン

【種族】人間族 【性別】男 【年齢】31歳

【レベル】72

【称号】ヴェルシュタイン侯爵家当主

【HP】2000/2000

【MP】5000/5000

【筋力】1500

【体力】1600

【知力】2400

【魔力】3000

【幸運】40

【ユニークスキル】なし

【スキル】生活魔法Lv5 火魔法Lv7 氷魔法Lv7 闇魔法Lv5 身体強化Lv6 魔力操作Lv6 話術Lv6 格闘術Lv4 剣術Lv6


「え?」


流石に体格差やレベルの差でHP、筋力、体力では負けているがMP、知力、魔力では圧倒的に俺の方が上だ。スキルの量も俺の方が多い。どういうことだ?


「見たらわかる通り、君のステータスはとても高いんだ。スキルの数もとても多い。これでも結構自信あったんだけどなぁ、君の前では霞んでしまうね。」


「一つ、心当たりがあります。」


「ほう、それは?」


「俺の称号 世界を超えし者。効果は、ステータスやスキル獲得に大幅な補正がかかる、です。」


「なるほど。世界を渡るという偉業を成し遂げた者への世界からのプレゼントだろうか?妥当な報酬だね。」


「ずるいとは思わないんですか?」


「そんなこと思わないさ。君は前世で一度死んだと言っていたね。そんな人が、2度目の生を受けたんだ。それくらいのご褒美はあってもいいだろうさ。それよりも僕は君のユニークスキルが気になるね。どんなスキルなんだい?」


「そうですね、まず魔法創造はその名の通り魔法を創るスキルです。俺の魔法は全てこのスキルで創ったものになります。既存の魔法はスキルになり、俺だけの魔法は魔法創造に含まれるようです。影魔法もそのうちの一つですね。他には飛行魔法や重力魔法、透明化の魔法があります。」


それを聞いた侯爵は疲れた様に言った。


「もう何を言われても驚かないよ。今日だけで一生分驚いたからね。つまり君は空を飛べるわけだ。恐らく人間でそんなことができるのは君だけだろう。空から一方的に魔法が撃てるのなら確かに強力だが、あまり人の前では使えない魔法だろう。必然的に戦うのは地上となる。そしてロア君のスキル構成から考えると…うん、方針は決まったね、セバス。」


「ええ、彼に教えるべきは格闘術や剣術でしょう。私にお任せください。」


「俺に教えるって、どういうことですか?」


「君のスキルを見たところどうやら近接戦闘が苦手そうだからね、そこを鍛えようと思ったんだ。」


「なるほど、確かに俺は魔法特化ですので近接戦闘は苦手ですね。分かりました、よろしくお願いします。それで、俺に教えてくれるのは…」


「私ですな。ご安心を、2年で完璧に仕上げて見せましょう。」


マジで?セバスさんが俺の先生なの!?


「ふふ、驚いているようだね。確かにセバスは細身だし、あまり強くなさそうに見えるだろう。でも、こう見えてセバスは近接戦闘のプロなんだ。セバス、ステータスを。」


「承知いたしました。では、ステータス、オープン」


【名前】セバス

【種族】人間族 【性別】男 【年齢】60歳

【レベル】75

【称号】ヴェルシュタイン侯爵家執事長

【HP】2500/2500

【MP】2000/2000

【筋力】3000

【体力】2000

【知力】900

【魔力】800

【幸運】35

【ユニークスキル】なし

【スキル】生活魔法Lv5 闇魔法Lv7 結界魔法Lv6 身体強化Lv7 魔力操作Lv6 剣術Lv8 格闘術Lv8

体術Lv8 瞬地Lv6 暗器術Lv6 隠密Lv7 看破Lv6 気配察知Lv6


わぁ、俺と反対の近接特化じゃん。全体的にスキルレベルも高いからたぶん超強い。てか暗器術ってセバスさん暗殺者じゃないっすか。こえぇなぁ、見なかったことにしよっと。


「セバスはとっても強いのよ!」


「この通りセバスは君とは真逆の近接特化でね、魔法も基本的には近接戦闘での補助にしか使わない。そんなセバスの戦闘技術を君に叩き込む。そして君を魔法も近接も強い万能な護衛に育て上げる。5年以内にね。」


え?明確な期限があるの?


「5年後に何かあるんですか?」


「5年後、つまり15歳からアイリスは王都にある王立魔法学園に通うことになっている。自分で言うのもなんだがヴェルシュタイン家は魔法の名家として有名でね、それによる嫉妬などでアイリスが学生同士のトラブルに巻き込まれる可能性もあるだろう。しかし学園の決まりで学生同士の問題に貴族の親はあまり関わってはいけないんだよ。すると僕はアイリスを守ることができなくなる。そこで君の出番だロア君。アイリスを傷つけさせることのないように君がしっかりと守るんだ。」


なるほど、そう言うことか。だけど、一つ気になる点がある。


「でも、平民である俺が貴族の子息に暴力を振るったら問題なんじゃないですか?」


「そこは心配ないよ。学園では王族だろうが貴族だろうが平民だろうが皆平等だという決まりがあるからね。流石に自分から暴力を振るったらダメだが、相手に非がある様な正当防衛が成立する場合は問題ないと思うよ。でも、たまに世間を知らないバカな貴族の子供が無理矢理権力を行使することがあるからね。そういう時のためにコレを持っておくといい。」


そういって侯爵は俺に向かって何かを投げてきたので、俺は慌ててキャッチする。そこにあったのは装飾の入った綺麗な指輪だった。


「指輪?」


「当然、ただの指輪じゃないさ。我がヴェルシュタイン家の者であることを証明する指輪だ。それを君にあげよう。それを所持していればヴェルシュタイン家当主と同格として扱われる。僕の名代みたいな感じだね。もちろん複製されないように本物と証明する魔術処理がなされている。刻まれた刻印に魔力を流せば発動するから、必要な時には使うといいよ。」


え?コレ無くしたり盗まれたりしたら終わるやつじゃね?あとでアイテムボックスにしまっておこう。


「分かりました。ありがたく受け取っときます。まぁ、基本的にはお蔵入りですけどね。」


「むしろ使う機会が来ない方が君にとっては良いだろうね。まあ、僕からの誠意みたいなものだと思ってくれ。うん、渡すものは渡したし君の力も分かった。君の今後の方針も決まったことだし早速、セバスと一回模擬戦をしてもらおう。ついておいで。」


…まじかよ

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