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第十一話 ヴェルシュタイン侯爵家 その3

俺は侯爵たちに自分が異世界人であることを明かした。全員が驚愕の表情を浮かべている。


「ロア君、それは本当かい?」


「そこの執事は分かっているんでしょう?これが真実かどうか。」


「セバス」


「ロア様のおっしゃったことは真実です、ユルゲン様。」


「そうか。どんな情報が出てくるのかと思いきや、まさか異世界人だとは。想像の遥か斜め上を行く答えだよ。でも、それなら出自を隠そうとするのも、力を隠そうとするのも、この世界の常識を知らないことにも合点がいく。でもそうか、異世界人か」


そう言って侯爵は暫し考え込み、俺に衝撃の事実を伝えた。


「歴史上、異世界人が現れたのは500年前の勇者召喚のみだ。君は実に500年ぶりの異世界人なわけだがその驚きようからして、召喚されたわけではないのだろう?」


俺は異世界人の少なさに驚きつつも答えた。


「ええ、俺は召喚されたわけではありません。前の世界で一度死んでこの世界に転生しました。」


「なるほど転生、か。聞いたことはないがセバスが何も言わないということは事実なのだろう。他言無用というのも分かるね。」


「俺は気がついたときには魔の森に捨てられた赤子に転生しました。俺に有用なスキルがなければ、すぐに死んでいたでしょう。」


「なるほど、それで森を出ようとしたところで娘を見つけ、助けてくれたのか。」


「ええ。それで、俺の今後の扱いはどうなるのでしょうか?」


俺は内心怯えつつも尋ねた。


「ん?何に怯えているのか知らないが、私たちが君の秘密を公開したり、異世界人だからといって態度を変えないことを誓おう。安心してくれ、セバスが真実だと言った時点で君への疑いは晴れている。私にとって君は大切な娘の命の恩人だ。君は今日から、アイリスの護衛であり、我が家の一員さ。」


ふと俺は自分が泣いていることに気づいた。どうやら俺は自分が思っていたより遥かに誰かに秘密を明かすことに不安を感じていたらしい。そんな俺に侯爵は気を遣ってくれたのだろう。


「君のための部屋を用意させよう。落ち着いたら使用人を呼ぶといい。君のことは娘の恩人で今日からの護衛だと伝えておこう。セバス、彼を部屋に案内してあげなさい。」


「承知しました。」


「ありがとう、ございます。」


そうして俺はセバスさんと共にこの部屋を出て、与えられた部屋へと向かった。


「では、ごゆっくりお休みなさってください」


相当精神的に疲れていたのだろう。まだ寝るのには早い時間だったが俺は倒れ込むようにベットへと寝転がり、すぐに眠りに落ちた。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

side侯爵家


その日の夜、ユルゲンの私室にてユルゲンと執事のセバスは今日の出来事について話し合っていた。


「ロア君は寝たかい?」


「余裕そうに貴方様と渡り合っていましたが彼はまだ子供、相当疲れていたのでしょう。部屋に入るってすぐに寝息が聞こえてきました。」


「そうか、申し訳ないことをしてしまったね。だが可愛い娘のためだ、護衛となる人物のことはしっかりと見極めないとね。さてと、本題に入ろうか。セバス、彼、ロアについてどう思った?」


「貴方様の考えを見抜いた洞察力、貴方様に対し堂々と話続けた胆力、そしてアイリス様の話によれば紫の焔を纏った大剣でオーガの変異種を一撃で倒したそうです。護衛としての戦闘力も十分でしょう。」


「いつになく高評価だな、セバス。」


「それだけのものを見せていただいたので。それに貴方様も彼を高く評価しているのでは?」


「そうだねぇ。正直何が何でもうちに欲しい人材だよ。恐らく彼はまだまだ手札を隠し持っているだろうしね。それも強力なものを。もし彼を敵に回せば、僕たちもただじゃ済まないだろう。ならば早いうちに味方にしてしまえばいいい。そういった意図もあって彼をアイリスの護衛にしたが、一番の理由は別にあるんだ。」


「と、いいますと?」


「僕は彼に、アイリスと友達になって欲しいんだよ。アイリスは領地から出たことがほとんどないから同年代の友達が少ない。そんな寂しい子供時代をたった1人の娘に過ごさせたくはないからね。」


「過保護な貴方様にしては珍しく良い考えですね。」


「うるさいぞセバス。僕は過保護なんじゃなくて子供思いなのさ。明日、彼が落ち着いていたら、ステータスを見せてもらえるよう頼もう。それを元にセバス、君が彼を育てなさい。君ならできるだろう?」


「おまかせを。明日彼のステータスを見るのが楽しみですな。」


「そうだね、彼がどんな驚きのステータスを持っているのか、胸が躍るね。アイリスが王都の学園に通い始めるのは15歳からだ。それまでに彼と仲良くなってくれることを祈ろう。」


「帰ってきた時のアイリス様の様子を見る限り、問題なさそうですな。それでは、私は屋敷の掃除をして参ります。」


そうして夜の時は過ぎていった。

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