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国の依頼

「あんた、自分からこの『魔王討伐』に志願したのかい?」

「ん?ああ、俺はギルドにいた所を集められただけだ」

「やっぱりか、どうにも冴えない顔だったからな」

当たり前だ。国の依頼は難易度が高すぎるから俺みたいな一端のクロア(雑用屋)にはほとんど無縁だ。事実、勇者と呼ばれているのはほとんどが稀代の天才ばかりだ。

「俺にはこの時間は無駄でしかない」

「はっはっは、栄光をつかむチャンスが時間の無駄か。あんた、名前は?」

「アイル。アイル・ノーウォーラだ。おっさんは?」

「ルドガンだ。アイル、本当に普通の依頼なら可能性は低いが今回は『首都のギルド員は強制召集』だ。大物が出たんだ。もしかしたら何かあるかも知れんぞ」

たしかに、これだけのギルド員が集められるのは珍しい。でも、それはこれだけの戦力が必要なくらい大物が出たって事だろ?なおさら可能性は低い気がするのは俺だけか?

「カーライルの戦士諸君!このカーライルにまた新たな脅威が出現した!」

大声に目をむければこの広場の演説台にこの国の大臣、グラード大臣が現われ今回の依頼を述べ始めていた。しかしこれだけの広場だから大臣も相当大声を張り上げている。

「この光景を見ればわかるだろう!今回現われた脅威は!非常に強力だ!すでに南方の!一部には!避難勧告を!出して!いる!はぁはぁ……」

……本題だけさっさと言ったほうが俺たちにも大臣の体にもいい気がする。力が入りすぎて今にも大臣の頭が爆発しそうだ。

「……今回の招集は!その脅威に打ち勝つため!選りすぐりの戦士を選抜するためのものだ!」

「ふむ、ギルド員全員を召集したらギルドが機能しなくなると思っていたが、そういうことか」

「ようは試験を行う、ってことか」

試験か。そりゃちょうどいいな、今までは自分の上限を知ることなんてできなかったから、これは別の意味でいいチャンスかもしれない。

「ちょっとやる気、出てきたかもな」

「おいおい、せっかくライバルが一人いなくいなると思っていたのにやる気出ちまったのか?」

「悪いなルドガンさん、俺は俺の目的のためにこの依頼を受けるぜ」

「最初の課題を告げる!正午までに!300ルドを持って王城へくること!以上!」

300ルド!?そんな大金を今すぐ用意しろって言うのか!広場にもどよめきが起こっている。

「なんだって魔王討伐の課題が金なんだ!」

「金の理由?決まっている!それもひとつの力だからだ!さぁ制限は100人までだ!試験開始!」

その大臣の声を皮切りに一斉に広場の人が動き出した。



「……確かに300ルドだ。違法な手段は使わなかっただろうな?」

「人が必死こいて貯めた金を違法というなら、違法な手段だ」

「よろしい、お前で99人目だ。運がよかったな、ぎりぎりセーフだ」

結局今までためた金(347ルド、ギリギリだ)全て渡すという決心をしてしまった。これで良い結果になるか悪い結果になるかは神のみぞ知る、ってとこだがまぁ、明日生きる金はある。

ゴーン、ゴーン、ゴーン……

「ふむ、正午だ。結局100人には及ばなかったが、仕方がない。門を閉める」

「あ、衛兵さん。ちょっとまってくれ誰か来るみたいだ」

こっちへ向かって小さな影が走ってくる。あれは、ローブか?ローブを着た小柄な人がやってくる。

「きゃあっ!?」

ジャラララララ……

……女の子か?派手にすっころんだ。そして思い切り金をぶちまけたな。

「おい、あんた大丈夫か?」

「あ、はい……。あっ!お金!」

よく見れば俺みたいに銅貨や銀貨がほとんどだ。この子も俺みたいに苦労して金をかき集めたんだなぁ……

「お金持ってきたなら早く衛兵に持ってきな。もう時間だ」

女の子は急いで金をかき集めて衛兵に持っていった。衛兵もだいぶ複雑な表情だ。

「……あー、あんた。申し訳ないが21ルド足りない。今転んだときに無くしたんじゃないのか?」

「そんな!?待ってください、今……」

「そしてもう時間がない、残念だが締め切らせてもらう」

「そんな……、お願いします!もう少しだけ……」

……ここで助けなかったら男じゃないな。

「はい、21ルド。俺が足りないのは代わりに払うよ」

「えっ!?そんな……」

「いいよ、あんた受けたいんだろ?俺の好意なんだから遠慮しなくていい。可哀想だし」

「よかろう、これで100人だ。二人とも中に入るが良い」

「ありがとうございます。必ずお返しはしますから……」

「いいって、もう300ルドも払えば21ルドくらい」

これであと26ルドか……、若干厳しいかもな。まぁなんにせよ第一関門は突破したんだ。何とかなるだろう。さっさと次に進もう。

「あの、お名前は……?」

「ああ、アイルだ。君は?」

「私はレーナです。試験がんばってくださいね」

「レーナもな。まぁ、お互いがんばるってことで」

そして俺とレーナは王城へと入っていった。

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