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1 ステファンの目覚め


「うわ。信じられん……! たった17年の人生かよ……。あの階段踏み外してケガした時から完全に俺の人生終わってたな……。イヤ、ねーちゃんのあのおかしな本に手を出さなければ……!」


 そう叫んでから、自分の声が出ている事に気付く。……なんだか嫌な汗をかいている。

 


 そして目を開けば、そこには豪華な天井。いや、布? ていうか、コレは所謂天蓋付きのベッド、とかいうやつじゃないか? 


 俺は少し混乱しながら、今の自分の立場に急に気付いた。



 ――私は、ステファン ヴァンガード。


 この、ヴァンガード王国の第1王子にして王太子。



 先程のニホンの少年ソウタ、アレは夢? ……イヤ、違う。



 ……あぁ、もしかして事故にあって、それでここは病院? ……イヤ、豪華過ぎる。

 事故を起こした車がスゴい金持ちで、病院の特別室とかに運ばれたとか……?


 俺は少し痛む頭に手をやりながら上半身を起こす。混乱してどちらが夢で現実か分からない。


「…………?」


 見渡すとそこは豪華な貴人の為の部屋。全ての調度品は一目で高級だと分かる職人の丁寧で贅沢な作り。


 ――違う。


 あの、ソウタの事故の記憶こそが夢、だったんだ。……そう、俺、イヤ『私』は――。


「うわ。マジか。……詰んだな」


 つい、ソウタ風に言葉が出た。


 俺は『ソウタ』のねーちゃんオススメの一冊、『ときめく恋を王子と☆学園の秘密……からの、ざまぁ!!』の『ヒロイン』の相手で、『悪役令嬢』と決めつけた婚約者に婚約破棄を言い渡し反対にざまぁされる『ステファン王子』だったのだ。


 ステファンは、頭を抱え込んだ。


 ――よりによって。

 自分を支え続けてくれた美しき婚約者を捨て、王子という身分でありながら身分違いの聖女サーシャと頭お花畑な恋愛劇を繰り広げるという、一般社会でも貴族社会でもあり得ないおバカ王子に転生するとは……。


 そして、俺は婚約者である公爵令嬢に冤罪をかけ『婚約破棄』を言い渡し、その後『ざまぁ』され断罪されるのだ!!


 ザマァされた後の『ステファン王子』は、人々に責められその後父である国王に『廃嫡』を言い渡される。そして王子でも無くなった俺を『ヒロイン』はアッサリ捨てる。……そして『ヒロイン』は『聖女』だった為に罪を軽減され教会で一生祈りを捧げる事を命じられる。『ヒロイン』はそこで出会った騎士と恋人となり心を入れ替え立派な『聖女』となり、第二王子と結婚し王妃となった公爵令嬢と、いつしか心を通わせ友人となりこの王国を発展させていったのだ……。て、ホントなんだそれ!!


 この話は『ステファン王子』の一人負けなのだ……!! その後に待つ王子の転落人生を面白おかしく書かれた物語だったのだから……。うわぁ、最悪だ……!


 ……いや待て。


 簡単な話だ。俺が『婚約破棄』なんて言い出さなければいいだけの話じゃないか! ……そもそもは王子が聖女サーシャと『真実の愛』とやらにドップリとハマり婚約者を蔑ろにし、サーシャが王子の婚約者から嫌がらせやイジメに合っているというウソの話を鵜呑みにして婚約者に憎しみを募らせる……、って話だったよな。てか、ちゃんと事実確認しろよ王子! って感じだけど。


 とにかく、俺が『婚約破棄』なんて言い出さなければ騒ぎは起こらない! そして『ヒロイン』はさっさと教会の騎士とくっついてくれ!


 ……良かった良かった。意外に簡単な方法で転落しないで済みそうだな……。せっかく王子に生まれたのに転落人生なんてゴメンだからな!


 

 ソウタ……、いやステファンが頭の中で問題を解決し満足げにベッドで転んでいると、部屋がノックされた。


「ステファン殿下、お目覚めですか? いつもの鍛錬のお時間ですが、具合がお悪いのですか?」


 そう言って入って来たのはステファン王子の側近。


 ……そうだ。毎朝剣の鍛錬をしてから学園に向かうのだった……。それから学園では生徒会長の仕事をこなし……。


 ソウタの記憶が目覚めても、きちんとステファン王子としての記憶もある。

 

 あれ、なんだ。ちゃんと王子やってるじゃん! やるな、ステファン!


 心の中で自画自賛しながら、


「ああ、大丈夫だ。少し考え事を……ね」



 そう答えてステファンは起き上がり、まずは鍛錬に向かう準備をするのだった……。






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