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プロローグ ソウタの話


「ねーちゃん。何だよ、コレ……」


 姉から手渡された数冊の本。それを見てゲンナリした俺は思わずそう呟いた。

 そんな俺の様子を見た姉は、信じられないとばかりにその整った顔を歪ませた。


「ちょっと! せっかく優しい姉がケガで部活が出来ないヒマで哀れな弟に、姉厳選のお気に入りの本を貸してあげようっていうのに……! 何なのその顔は!」


 心外だ! と要らん優しさを押し付けてきた姉。……しかしここで逆らうと更に面倒臭い事になるのは過去の苦い経験からよーく分かっている。賢い俺は、渋々ながらも大人しく従う。


「アリガトウゴザイマス、オネーサマ。…………読むかどうかは分かんねーけど……」


 つい最後にポツリと余計な一言を言ってしまった俺に、姉はニコリと笑った。


「……後で、感想聞くからね? どの話が1番アンタの心に刺さったか、50文字以上100文字以内でキッチリ聞かせてもらうからね?」


 ……何だコレ、拷問か。


 もうすぐ試合って時期に俺は階段を踏み外して怪我をした。暫くサッカー禁止のドクターストップがかかるという不幸に見舞われ落ち込む俺に、なんで更にこんな仕打ちが待っているんだ……。


 本の山を持ったまま固まる俺を満足そうに見た姉は、颯爽と自分の部屋に去って行った。……くそう。断っても受けても面倒なら、断っときゃ良かった。


 俺は渡された本の表紙を恐る恐る見る。


『ときめく恋を王子と☆学園の秘密……からの、ざまぁ!!』

『恋とラブラドール~モフモフは恋のキューピッド!?』……。


 ……ワオ。


 そう思いながら、その本達を自分の部屋に仕方なくいったん持っていって、ペラリとめくってみる。……めくる、まためくる。そしてめくる。めくる…………。


 あ。最後まで読んじまった。


 あー…、うん。まあまあだな……。て、すみません、意外に面白かったです。


 そう思いながら、俺は次の本に手を出した。


 ◇


「……行ってきまーす……」


 翌日。朝の日差しが眩しい。

 玄関から出た俺は、思わず目を閉じる。完徹明けの俺の目に容赦なく差し込む光。……昨夜は結局、夜通し姉ご推薦の本を読んでしまった。

 特に『ときめく恋を王子と☆学園の秘密……からの、ざまぁ!!』が意外にも面白くて……。


 ふわぁーと大アクビをしながら俺は考える。

 ……それにしてもヒロインのサーシャのあのあざとい演技に、なんであのおバカ王子はまんまと夢中になるのかね? あの王子は表面ばかりみて本質を見抜けないのかな。そりゃ将来国のトップになるのに向かないわな……。

 

 だいたいステファン王子は美人で完璧な婚約者を捨ててキャピキャピなヒロイン選んで、その後国が成り立つと思うのかね? アレは俺のクラスのオシャレとイケメンにしか興味がない一部の女子達と同じレベルだぞ……。

 そりゃ、あの王子はザマァされても仕方ねーわ……。


 そんな事を考えながら、また大アクビをした。……アカン、眠い。

 この調子で学校へ行って、また女子共に囲まれるのも面倒だな……。


 元々顔が小さく最近ぐっと身長が伸びた事で一見ルックスが良くなり、やたらと女子に絡まれる事が増えた俺。……うん。自慢では無いがモテている。


 今日は早くユウマ達と一緒にいていないと、絡まれて余計にダルいなぁ……。


 そんな事を考えて、俺はもう一つ大きなアクビをする。



 その時、前方で車のクラクションとブレーキ音がした。アクビを終えて前を見ると、歩道に車が突っ込んで来ていた。



 俺はその様子をまるでスローモーションを見るかのように眺めながら、「コレはアカンやつだ」とまるで他人事のように考えた。



 ……そしてそのまま俺は車とぶつかったのだった。




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