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【揺花草子。】(日刊版:2024年)  作者: 篠木雪平
2024年08月
239/365

【揺花草子。】[#4595] 記憶。

Bさん「『喉元過ぎれば熱さを忘れる』と言うじゃないですか。」

Aさん「んん、言うねえ。」

Cさん「どう言う意味かしら?」

Aさん「え、そうですね・・・。

    辛い事や苦しい事があっても、時を経ると何でもなかったかのように

    忘れてしまうとか、そう言う意味ですよね。」

Bさん「もちろんそれもそうだけど、

    例えば大恩を受けたのに月日が経ったらすっかり忘れちゃうみたいな

    そう言う使い方もあるよ。」

Aさん「なるほど。」

Cさん「阿部さんがやりがちね。」

Aさん「何でそんな恩知らずキャラに仕立てようとするんです?」

Bさん「ま、ともかく、『喉元過ぎれば熱さを忘れる』です。

    あっつあつのラーメンとかカレーとかは

    食べるときは冷まさないとめっちゃたいへんだけど

    ひとたび食べちゃえばそんなでもないですよ、と言う事だよね。」

Aさん「うーん・・・まあ・・・。」

Cさん「とは言えじゃあ、あっつあつのものが喉を過ぎればもう

    一切ノープロブレムと言えるかと言うと、決してそうではないわよね。」

Aさん「えっと・・・え? どう言う事です?」

Bさん「例えばだけど、1,000℃くらいまで熱した鉄球を

    飲み込まされるって言ったらこれは当然無理だよね。」

Aさん「そら無理だよ!! かなりえげつないタイプの拷問だよ!!!」

Cさん「かと言って、じゃあちゃんと全身麻酔とか輸血とか

    きっちりと医療体制を整えたうえで開腹し、

    直接胃袋に 1,000℃の鉄球を挿入するとするわ。

    この場合は喉を通過しないから平気かと言えば、

    そんな事はないわよね。」

Aさん「そりゃそうですよ!! 

    1,000℃ですもん!!! 胃に穴が開きますよ!!!」

Bさん「ストレスから来る胃炎かな?」

Aさん「確かに鉄球を腹にブチ込まれたらストレスハンパないけど

    そう言う話じゃないんだよ!?」

Bさん「ま、ともかく、『喉元過ぎれば熱さを忘れる』と言う話。

    今の鉄球の例を取るまでもなく、『忘れた』としても

    『存在する』と言う事実が消えるわけではないわけです。」

Aさん「ん、おぉ・・・?」

Cさん「辛い事や苦しい事があって時がその苦難を癒してくれたとしても、

    その過去は厳然とした事実として存在していて、

    なかった事にはならないと言う事ね。」

Aさん「それは、まあ・・・。」

Bさん「同様に、誰かから恩を受けたりとか、誰かに迷惑を掛けたりとか、

    そう言う過去も当人同士は時の流れで水に流すかもだけど、

    過去の事実は消えはしない。」

Aさん「それは、そうだ。」


Bさん「阿部さんが犯した罪も

    決して消えないと言う事だよ。」

Aさん「人の事を咎人呼ばわりとか

    ちょっと酷すぎない?」


 忘れてはいけない事もある。

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