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第二十話  禁書発見!? お前が見るのは早すぎる!

 ヒーサの寝室を大地の力を借りて調べていたマークは、寝台の下から妙な反応があることに気付いた。おそらくは、なにかしらの“書物”であることまでは掴み、すぐに隣室にいたナルを呼んだ。


「ナル姉! ナル姉! 来てください!」


 ようやく見つけたと喜び、叫ぶ呼び声にもそうした雰囲気が混じっていた。

 弟分の呼びかけに、隣室を調べていたナルと、それに付いていていたテアも寝室に戻ってきた。


「なにか見つかった!?」


「術式で調べたところ、寝台の下から怪しい反応が返ってきました」


「おお、でかした!」


 早速とばかりにナルが寝台の下に滑り込み、マークもまたそれに続いた。整えられたシーツを引っぺがし、モゾモゾと体ごと下に潜り込ませた。


「反応から察するに、書物かと思われます」


「そうか・・・。あ、これかな」


 何かを見つけたのか、ナルもマークも寝台の下から体を引っこ抜き、それぞれ何かの本を握っていた。

 ナルの本はかなりの重量のある本で、上等な皮で装丁されており、かなり頑丈な造りをしていた。しかし、本の題目が見当たらず、背表紙に緑色の線が引かれているだけで、何の本かは分からなかった。

 一方、マークの持っている本はナルの持つ本より一回り小さいものの、こちらもがっちりと上等な皮で装丁されていた。背表紙に赤い線が引かれている以外は題目もなく、やはりこちらも何の本かは分からなかった。

 そして、どちらの本も“鍵付き”であり、閲覧できないようになっていた。


「待て! マーク、その本は開けるな!」


 二人が本の外側をジロジロ眺めているところに、ヒーサからの警告が飛んできた。

 もちろん、そんなことを気にする二人でもなく、本を封印する錠を開けるべく、動き出した。ナルはどこからともなく針金を取り出し、マークの方は小さな鉄の球体をポケットから取り出した。

 ナルは針金を使って、本の鍵穴に突っ込ませ、ガチャガチャと鍵を開け始めた。

 一方のマークは、左の人差し指で鍵穴を抑えつつ、右手に鉄球を持って精神を手中しだした。


「大地に育まれし、硬い金属よ、我は汝の支配者なり。封印されし扉を開く、鍵となれ」


 まずマークの左の指が光だし、次いで右手の鉄球がグニャリグニャリと蠢いたかと思うと、そのまま鍵の形となり、マークの手に納まった。


「おお、鍵を生成する術式か! 見事!」


 ヒーサはあっさり鍵を作り出したマークを称賛し、拍手を以てそれを讃えた。


「金属は大地の恵みを最も受けたる物質。地を操れる自分なら、それを変形させて鍵を複製するくらい、造作もない事です」


「先程の探知の術式といい、密偵としての能力を強化、補助する方向で術の才を伸ばしたか。素晴らしいな。是非とも身近に置いておきたいものだ」


 ヒーサの中で、マークの評価が天井知らずで上がっていった。とにかく、マークの使う術の仕様が、ヒーサの好みと合致していたからだ。


(先日見た地属性の術は、大地を隆起させ、壁を生成して防御力を強化した。そして、今度は振動を利用した探知に、果ては鍵の生成という細かな芸。汎用性の高さ、使える幅の広さは、訓練によるものか、それとも才能か、どちらにしても、是非とも手駒として確保しておきたいな)


 しかし、同時に警戒もしておかねばならなかった。なにしろ、マークは魔王候補でもあるからだ。魔王としての力が上乗せされて、力を奮われてはまず勝ち目がなかった。


(そう、アスプリクとマーク、現状分かっているのはこの二人が魔王として覚醒する可能性があるということ。そして、もし魔王に覚醒した場合、やりにくい相手は間違いなくマークだ。アスプリクの大火力は脅威であるが、頭脳戦に持ち込めば勝てる自信はある。しかし、マークは無理だ。現状の手札では勝ち目がない)


 盗みのことは泥棒に聞くのがいいように、暗殺は暗殺者に聞くのが一番なのだ。そして、マークがそれに該当する。

 ヒーサの得意とするところは、騙し討ちや暗殺であり、知略を駆使して何人も嵌めてきた。しかし、マークは厄介なことに“同業者”なのだ。暗殺を使う者にとって、暗殺は警戒するべきことであり、マークも当然そうした訓練を受けてきていた。


(そう、こちらの得意分野が相手に通用しない。マークが覚醒しないに越したことはないが、魔王になったら対処できん。暗殺を使う魔王とか、どう足掻いても勝てん)


 恐るべき可能性を秘めた少年を見ながら、ヒーサは平静を装いつつ、その実、冷や汗をかいていた。どうかこちらが覚醒しませんように、と。

 そうこうしているうちに、ナルは針金を使って鍵を解除し、マークも生成した複製の鍵を使って、本の封印を解いた。


「あ~ぁ、開けてしまったか」


 ヒーサの警告を無視して本は開かれ、二人は早速中身を確認した。

 ナルの手にした本の中身、それは薬学に関する書物であった。

 薬草に関する情報が事細かに記され、さらには丁寧に描かれた挿絵まで付いていた。

 薬や毒物としての効果や監査経過まで書き込まれており、この一冊さえ修めれば、明日から誰でも薬師になれる、それほどの書物であった。


「公爵閣下、随分と毒に関す書き込みが多いようですが?」


「薬と毒は紙一重だからな。毒と思われている物も、使い方次第で薬にもなる。その逆もまた然り。ようは匙加減というものだ」


「それはそうでしょうね」


 ナルも工作員として、各種薬物の扱いも修めている。しかし、この蔵書に含まれた情報はあまりにも膨大であり、さすがは本職だと唸らせるほどのものだ。

 ゆえに気になるのだ。これほどの知識を封印している事実に。


「公爵閣下、この本を広めようとは考えていないのですか?」


「ないな。知識や技術という物は、独占してこそ高い付加価値を生み出すのだ。自分だけが知っている、自分だけが使える、とな。ならばその優位性を崩すような真似をするバカはおるまい。目先の金を掴もうとしなければな」


「なるほど。公爵閣下はお金持ちであられますから、これを出版して売り捌かなくても、財貨は十分にあるというわけですか」


「そういうことだ。だからこそ、自分だけの知識として大切に保管しているのだ」


 一財産築けるだけの価値がある本だが、それには興味がない。ただ純粋な知識や技術としてのみの価値を認め、大切に扱っていると言うのだ。

 情報の扱いとしては正しいが、同時にナルには一つの疑念が生じた。


(これだけの知識を、いったい“どこ”で仕入れたの? この本の情報は、医大の教科書は元より、教授達の著作をも上回っている。どこで身に付けたの?)


 ナルも薬物に関する書物はいくつか目を通しているが、今目の前にある本は明らかに異質。おそらくは、この世界のすべてを薬物、毒物を網羅している。そう感じさせるだけの凄味があるのだ。

 僅か十七歳の若者が書き記したにしては、あまりに情報が膨大過ぎた。

 しかし、あくまで“凄い”と感じるだけの書物。これ自体はヒーサの実力を測る上での重要な指標とも言えるが、ナルが欲するのはあくまでもヒーサが知られると困る情報なのだ。

 手元の本では、情報が世間に漏れたとて、勿体ないだけで、身を滅ぼすほどではない。


「……マーク、そっちの本はどうかしら?」


 ナルの興味はもう一つの本に移り、それを閲覧しているマークに尋ねた。

 マークは丁寧にページを捲っているが、理解できていないのか、首を傾げていた。


「何かの儀式に関する記述が、挿絵と共に書かれているのですが・・・」


 要領を得ないマークの返事であった。明らかに困った表情をしており、どう表現して返していいか、分からない様子だ。


「だから見るなと言ったのに。今のお前のレベルでは、理解の及ばぬ領域だ」


 再びヒーサの声が耳に突き刺さった。だが、逆に興味の惹かれることでもあった。


(マークが力量不足な書物? なにか、高度な魔術書か!?)


 ナルはヒーサが精神系の魔術を行使する術士だと予測していた。魔力を使用する才能に加え、術を構成するための知識や技術が必要であった。

 師に教えを乞うたり、あるいは魔術書で読み解いたりして、術士はその才を伸ばしていくのが普通なのだ。もっとも、その技術や知識は《五星教ファイブスターズ》の教団がほぼ独占しており、普通ならばまず目に触れることはない。

 マークの場合はたまたま幼児の段階で魔術が勝手に発動し、それがナルの父親の目に留まったのだ。密偵頭という職業柄、教団に属さない隠者の術士と接触して、マークの手解きをしてもらった、というのがマークが術士になった経緯だ。


(もし、魔術書を持っていたのなら、それは術士としての証! 少なくとも、手掛かりにはなる!)


 俄然、興味が生まれたナルはマークの横に立ち、その中身を確認した。

 そして、愕然とした。

 なにしろ、マークの持つ本に書き記されていたのは、“裸の男女”が絡み合う姿で描かれた大人の絵本、すなわち春画エロ本であったからだ。


「ナル姉、これって何かの儀式の所作でしょうか?」


 中身を理解できないマークが、中身を理解してしまったナルに尋ねた。

 その結果は、当たり前のような裏拳であった。マークの手から本が弾き飛ばされ、宙を舞った。


「忘れなさい! 今すぐ、見たことを忘れなさい! 今のあなたは理解しなくていいし、覚えておく必要もないから!」


「え? そんなに危ない儀式……」


「そう! 危ない儀式なの! いいから、もう少し大人になるまで、あの儀式は忘れるのよ!」


 ナルは義弟の肩をしっかりと掴み、必死の形相で訴えかけた。十一歳の少年には、まだ早すぎる内容の本であったからだ。

 見るな、というヒーサの警告は正しかったのだ。間違いなく、今のマークが見てはならない類の書物であり、忠告を無視して見せてしまったナルの失策であった。


(くっ、ヒーサめ。よもやこんな悪辣な罠を仕掛けるとは!)


 忠告したにも拘らず、勝手に罠に落ちたと勘違いしているナルであった。

 だが、更なる失策を犯してしまったことを、ナルは気付いてしまった。マークの目の前から本を吹き飛ばすのを急ぐあまり、本が吹き飛んだ先にティースがいることを失念していたのだ。

 しかも、見開いて床に落ちており、バッチリとティースの視界に収まっているのだ。

 実際、ティースは興味を覚えたようで、床に開いた状態で落ちている春画エロ本に視線が釘付けであり、顔が紅潮しつつもしっかりと見つめていた。


「ふぉぉぉぉぉ!」


 主人の頭が破壊されると感じたナルは、奇声を上げながら床に落ちている本に飛びつき、勢いよく閉じて、しっかりと鍵までかけた。


「ティース様! これは教育上不適切な物です。見てはなりません! ダメですからね!」


「えぇぇぇ……」


 ティースは明らかなに不満げな顔をナルに向けた。腰かけていたソファーから立ち上がり、恐る恐る手を差し出した。


「な、ナル、その本を」


「ダメです!」


「ちょっとくらい」


「ダメです!」


「ほんのちょっとでいいから」


「ダメと言ったら、ダメです!」 


 食い下がるティース、敢然と拒絶するナル、割って入って止めようとするも、視線は本に釘付けのマーク。三者三様に、手にする魔導書(?)に振り回されていた。

 その混乱の極みにある伯爵家の面々を、ヒーサはニヤリと笑いながら眺めていた。


「ククク……、離間の計、成功だな」


「いやいやいやいやいや」


 いつの間にかヒーサの後ろに控えていたテアが、三人の醜態を見ながら首を振った。無論、聞こえないように、耳打ちしながらの小声である。


「離間の計って……。春画エロ本を使った離間の計なんて初めて聞いたわよ!?」


「ティースの“エロさ”に依存した策で、いささか不確定要素も大きかったのだがな。しかし、効果は抜群だ」


 実際、三人の混乱ぶりを見れば、間違いなく離間の計が炸裂したのは間違いなかった。

 本を隠すナル。それを奪おうとするティース。どうしていいのか分からないマーク。間違いなく、ヒーサの仕組んだ策にはまっているとしか思えなかった。


「じゃあ、初めからこれを狙って、家探しを許可したの?」


「当たり前だ。私が何の準備もなしに、寝所に他人を入れると思うのか? 当然、強烈な毒針を用意してあるさ」


「毒針……。春画エロ本が毒針……」


 テアとしては納得しがたい策であったが、無様を晒す三人の姿を見て納得せざるをえなかった。


「まあ、昨夜の内に、ティースには仕込んでいたからな。“寝技”の悦楽というものを。口では何とでも言えるが、体は正直なものよ。男であれ、女であれ、性的な享楽には逆らえん」


「昨夜って、ヒサコがティースにあれやこれやとやってたあれ!?」


「女の体で、女を抱くと言う珍しい経験をさせてもらった。ご立派様が使えぬ分、薬の力で補ったが、もう体に染みついたであろうよ。誰かに抱かれる“性の悦び”というやつをな」


「“身体検査”云々とか、何かの冗談か適当な理由付けかと思っていたけど、そこまで計算に入れてたの!? てか、結婚してから、ずっとこんなことを考えていたの!?」


「無論。焦らしや緩急は、相手を“堕とす”のに、必須の技術だぞ。まあ、初めてのお嬢様には、少しばかり効き過ぎたかもしれんがな」


 そこで、ヒーサがぺろりと舌なめずりをした。なにしろ、ティースへの“開発”が成功し、あとはじっくりと楽しむだけという算段になったのを、しっかりと確認できたからだ。

 今夜にでも、改めて“結婚初夜”を楽しもう。そう考えると、楽しくて仕方がないのだ。


「さて、それではとどめと行きますかな」


「ここから、まだ追い打ちがあるんだ」


 テアはあまりの準備の良さに呆れ返ると同時に、恐ろしさすら感じた。

 ヒーサは自分が背もたれに使っていたクッションを手にすると、そこから一冊の本を取り出した。三人を惑わす“魔導書”であった。なお、こちらには鍵は付いていなかった。


「ティース!」


 ヒーサがニヤニヤしながら手にした本を見せびらかすと、目を輝かせながらティースがやって来て再びヒーサの横に腰かけた。そして、ヒーサは本を差し出した。


「はい」


「いいんですか?」


「もちろん」


 早速、ティースは本を受け取ると、恐れ半分興味半分に本を開いた。

 当然、それはナルの逆鱗に触れることとなった。


「だから、ダメですってば!」


 ナルは慌ててティースから本を取り上げようとしたが、素早くヒーサが間に割って入り、それを妨害した。


「主人の心穏やかな読書の時間を邪魔してはいかんぞ、ナル」


「心穏やか・・・?」


 明らかに場違いな単語が飛び出し、ナルは困惑した。

 なお、その目の前でティースの口からは、「うわぁぁぁ」とか、「こ、こんなことまで」とか、「アクロバティィィック」などと漏れ出していた。


「公爵閣下、なんて代物をティース様に見せるんですか!?」


「花嫁の興味を満たしてやっただけだよ」


「やっていい事と、悪い事があるのですよ!?」


「やっていい事の範疇だと思うのだがな、これは」


 ニヤニヤ笑うヒーサに、ナルは怒りを覚えたが、かと言って殴りかかるわけにもいかず、我慢に我慢を重ねねばならなかった。


「ひ、ヒーサ、す、凄いですね。なんて言うのか、ナルとか婆やに聞いた話とは、全然違うもの」


 本から視線を逸らさず、中の挿絵を凝視しながらティースが尋ねてきた。

 もう何もかも終わった。ナルはそう感じずにはいられなかった。


「まあ、それはあれだ。お前が教わってきたのは、いわば入門編みたいなものだ。で、それは専門書に属する類の物。より深みにある応用や発展の形、とでも思ってくれればいい」


「な、なるほど・・・。うわ、この『イチノタニ』とかいうの、す、凄そう」


「ほほう、百八の必殺技の一つ『一之谷』に目を付けるとは、なかなかにお目が高い」


「ひ、百八種類もあるの!?」


「あるぞ」


 もう止まりそうもないティースの勢いに、ナルは頭を抱えてしまった。


(ヒーサめ、わざと家探しを誘ってきたのは、これが狙いか!? 悪書を“さりげなく”ティース様に差し出し、悪い道に落とし込むとは!)


 あまりにも予想外過ぎる奸計に、ナルは思わず歯ぎしりをしてしまった。すべては掌の上で転がされていた。そして、今夜は主人が寝台の上でいいように転がされることも明白であった。

 もう、ナルにはどうしようもないところまで突き進んでいたのだ。


「おい、それよりもだ、ナル。あれはいいのか?」


「え?」


 ナルがヒーサの指さす方向を見てみると、そこにはマークが禁断の魔導書をばっちりと閲覧している姿が飛び込んできた。いつの間にか手からすり取られ、鍵も開錠されていた。


「マークぅぅぅ!」


 ナルは慌てて義弟から本を取り上げ、再び封印した。


「油断も隙もあったもんじゃない。密偵の技術を、バカみたいなことに使わないの!」


「なんか、隙だらけだったものですから、つい」


「ついとかじゃないの! あなたには早いからダメ!」


 いくらなんでも、十一歳の少年には強烈すぎた。これで性格が歪んでしまったら、もう一度矯正しなければならず、育てる側としては面倒この上ないことであった。

 しかし、その歪みを助長するのが、ヒーサという男であった。何やら不満げなマークに肩に手を置き、そして、笑いかけた。


「マーク、確かにお前には少々早い。しかし、二、三年たったら、ティースと同じものをくれてやるから、今は我慢しておけ」


「いいんですか!?」


「ああ。どのみち、あれは“布教”する予定であったからな」


 ヒーサは上機嫌に笑い、そして、視線をナルに戻した。どうだ、とでも言わんばかりの意地の悪い顔をして、ナルを挑発した。


「禁書です! ただちに禁書指定にするべきです!」


「その権限はお前にはないぞ」


「ぐぬぬ・・・。それに、布教だと仰るのなら、あっちが優先でしょう!?」


 ナルの指さす先には、禁断の魔導書と並んで見つけられた医学書があった。数々の薬物を始めとする有益な情報が記されており、もしあれが世間に出回れば、間違いなく医学界に変革をもたらすであることは疑いようもなかった。


「技術と知識は独占してこそ、と言ったはずだ。あちらは布教する気なんぞない」


「では、あのいかがわしい本は!?」


「広めた方が、面白かろう?」


 ヒーサは腹を抱えて大爆笑し、ナルは主人ティース義弟マークが毒されたことに頭を抱えた。

 かくして、春画エロ本によってもたらされた不協和音はとどまることを知らず、カウラ伯爵家の三人組の結束に微妙な空気を醸し出し、僅かばかりのヒビを入れることにヒーサは成功した。

 “子作りの儀式”のために、エロは必要かもしれないが、行き過ぎは毒でしかない。一連の騒動を傍観者の視点で眺めているテアは、そう思わずにはいられなかった。

 なお、その後の家探しは思うように進まなかったのは、言うまでもないことである。



          ~ 第二十一話に続く ~

ちなみに、「自作のエロ同人誌配布」は松永久秀の“史実ネタ”です。


悪辣な梟雄のイメージがありながら、こうした笑いを取れるネタが尽きないのが、松永久秀の魅了ではないかと、自分は考えています。



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感想等も大歓迎でございます。


ヾ(*´∀`*)ノ

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