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第十一話  レベルアップ! そして、街道にファンファーレが響く!

 雑談、あるいは情報の擦り合わせをしつつ、街道を馬で進むヒーサとテアの耳に、聞き覚えのある音色が突き刺さった。



 チャラララッチャッチャッチャ~♪


 スキル《本草学を極めし者》のレベルが上昇しました。転生者プレイヤーは所定の手順に従い、カードを引いてください。



 やっぱり来たか、そう思った二人は特に顔色を変えることなく、お互いの顔を見やった。


「経験値、貯まったわね」


「先程の手術で一気に稼いだと言ったところか」


「麻酔なしの開腹手術なんて、普通の医者なら考えもしないでしょうね。あまりに突飛な行動に、経験値ゲージもびっくりでしょうよ」


 そうこう言葉を交わしているうちに、これまた見慣れた箱が現れ、二人の間の空間に固定された。


「この箱って、後ろの連中には見えているのか?」


「それは大丈夫。この箱が見えるのは、転生者プレイヤーと神だけだから。何かをまさぐっているようにしか見えないわよ」


「ならば、よし」


 ヒーサは心置きなく現れた箱に手を突っ込み、ゴソゴソとまさぐった後、一枚のカードを引っ張り出した。色は銀色、Bランクのカードだ

 そして、そのカードの見るなり、ヒーサは目を丸くして驚いた。


「だから、神様よぉ~、ランクの振り分け方、おかしいぞ。この能力が“びーらんく”とか、頭おかしいぞ。本気でどうなってんだってくらいおかしいぞ」


「はぁ~?」


 テアはヒーサが見せつけてきたカードを凝視した。そこには《毒無効》と書かれていた。


「ああ、それね。文字通り、毒に対する完全耐性を獲得できるわよ。おめでとう、これであなたは医者いらず。毒も病気もさようなら。いつまでも健康体でいられるわよ」


「毒どころか、病気にも有効なのか!?」


「ええ。精神系の病気なら《精神耐性》のスキルがいるけど、《毒無効》なら、ウィルス、細菌、毒素や腐敗物の接種にも対応できるわ。それこそ、毒蛇に噛まれようが、フグを食べようが、カエンタケを丸のみにしようが、全然平気でいられるわよ」


「やはり強力ではないか!」


 病気、毒を一切受け付けない体。養生を第一に考え、様々な健康法をかつての世界で試してきた者なのだ。城に火の手が回り、じきに焼け死ぬという段階になってすら、頭の上にお灸を据えていたほどである。

 そんな人物にとって、毒も効かない、病気にならない体など、まさに破格のスキルと言えた。


「あ、でも、酒毒も防ぐから、酒に酔えなくなるわよ」


「なにぃ!? くっ……、それは残念ではあるが、理想の健康体のためにはやむ無しか。早く茶を手に入れねば、酔えなくなるではないか!」


「え? 茶で酔えるの?」


「雰囲気に酔いしれるのだ。風情と言う最高の肴を以てな」


 残念に思いつつも、健康のためならやむを得ないと、ヒーサは酒を断つこととした。飲んだところで酔えぬ酒なら、水であっても変わらないのだ。


「摂取しても意味がないということは、例えば、毒薬を飲み込んだとしても大丈夫と言う事か?」


「ええ、そうよ。それこそ、ヒ素をがぶ飲みしようが、トリカブトを丸かぶりしようが、死ぬどころか苦痛もないわよ」


「ほほう……、面白い」


 ヒーサは何かを思いついたのか、またいつもの禍々しい笑顔を浮かべ始めた。こういう顔をしたときには、毎度ろくでもないことが起きるのであった。

 テアとしても、慎重にならなくてはならなかった。


「……で、何をするの?」


「今宵は我が花嫁と、床を同じくしようと思ってな」


「お、やっと夫婦らしいことをするのか」


 なにしろ、ヒーサとティースは結婚してからすでに半月以上が経過している。その間、かなり多忙であったため、夫婦らしいことはただの一度もなかった。

 せいぜい、結婚式場での口付けくらいだ。


「女神よ、一応聞いておくが、おぬしは毒くらい平気であるな?」


「そりゃね。《毒無効》くらい、パッシブスキルとして標準装備してるわよ」


「ならば安心した。巻き添えをくらうこともないな」


「おい、こら。なんで夫婦の営み云々の話が、毒物の巻き添えなんて話になるの!?」


 やはり嫌な予感しかしなくなってきた。何を考えているのか分からないので、ニヤつくヒーサにテアは戦慄せざるを得なかった。


「よし、そうと決まれば、次の村で今日の巡察は終了としよう。色々と準備があるかなら」


「……私も巻き添え?」


「毒が無効であるならば、耳を塞げばなんの問題もないぞ」


「逃げたい……」


「魔王をどうにかするまで、それは無理なのでは?」


「チクショウ、正論だ、それ」


 嫌々ながらも、ヒーサの悪事に巻き込まれることがまたしても確定したテアは、我が身の不幸を呪わざるを得なかった。

 いったいどこで間違えたのか。そう、単純にパートナー選びにしくじっただけなのである。

 早く終わらせて、この世界からおさらばしたい。そう思わざるを得なかった。



         ~ 第十二話に続く ~

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