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転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい  作者: RYUJIN
第二章 魔導帝国オルテアガ編
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出発式

 広場の中央に特設された壇上には、既に皇帝を筆頭とした帝国の重鎮が勢揃いしていた。


 帝都民達は衛兵の指示により広場の外側から観覧する形となっており、広場の中央には壇上へ向かって赤い絨毯が敷かれていた。


 その絨毯に横付けされた『魔導車』から降りた三人は真っ直ぐに皇帝陛下の御前へと歩みを進めて跪いた。


 シエラ達はハーティの友人枠として式典がよく見える特別席へ案内された。


 ワァァァァ!!


 そして、ハーティ達の姿を見た帝都民達の歓声が一気に湧き上がった。


「・・静粛に。これより、帝都を救った英雄『白銀の剣』の出発式を始める」


 パーパパパパーツ!


 ドン!ドン!


 宰相の号令と共に宮殿楽団のラッパの音が響き渡り、帝都外壁から花火が上がった。


「・・三人とも、面を上げよ」


「「「・・・はっ!」」」


「此度の帝都への貢献、再びお礼を言おう」


「「「勿体なきお言葉でございます」」」


「そして、クラリスよ。此度は『発導機』の献上、大儀であった。余は必ず平和友好的に活用することを約束しよう」


「・・では、さっそく帝国からそなた達へ各種褒美を授与する」


「それではまず、帝都冒険者ギルドより『一級冒険者』のギルドカードを授与する。ギルドマスタークランよ、前に」


 皇帝に促され、クランはハーティ達の前へ歩み寄る。


 そして、側に立つリーシャが恭しく掲げているクッションが敷かれたトレーから純粋魔導銀で出来たギルドカードを手に取ると、それらをハーティ達へ順番に手渡した。


 そして、クランはギルドカードを受け取った手を優しく包み込んだ。


「ハーティちゃん。君が実は『女神様』だったなんて、本当に驚きだよ。まあ、君は出会った時から僕にとっての『女神』だったけどね!」


「へ?」


 ペシっ!


「痛い!ユナちゃん!なんて力なんだい!手がもげてしまうよ」


「はん、ハーティさんに邪な感情を抱く男の手など、下の()()ごともげたらいいのです!」


「こらユナ、あなた『聖騎士』なんでしょ?そんな下品なこと言ったらダメよ!」


「ひぃ怖い怖い!ユナちゃんにやられる前に退散するよ。じゃあハーティちゃん、元気でね!いつでも戻っておいで!」


 そういうと、クランはハーティの手の甲へキスを落とした。


 キャァァ!


 それを見た観衆の一部が黄色い声を上げた。


「貴様ァ!」


 シュバッ!


「うぉっとい!」


「っおい!今の手刀!確実に僕の首を狙ってたよね!?もし飛び退かなかったら僕の頭が胴体にお別れを言わないといけなかったぞ!?」


「っち、無駄にすばしっこい男ですね・・私が仕留め損なうとは・・腐ってもギルドマスターは伊達じゃないってことですか」


「仕留める・・」


「こらユナ」


「アアア!志尊なる女神様の清らかな御手になんということだ!この下衆がぁぁ!!天誅もががっ!!」


 そして、クランとハーティのやりとりを見ていた民衆の中からハーティの見知ったエルフがクランに向けて飛び出そうとしていたが、すかさず衛兵に取り押さえられた。


「うわぁぁぁん、ハーティ様お元気でーー!『女神教』の布教活動は私にお任せください!」


 シグルドはそう言い残しながら引き摺られていった。


(シグルド・・相変わらずの狂信具合ね)


「・・ごほん。では気を取り直して、次はクラリス博士へ『カームクラン商業ギルド』宛の魔導銀(ミスリル)鋼引き換え書を進呈する。マニアス財務卿、頼む」


「はっ!」


 マニアス財務卿はクラン達と同じように部下から書簡を受け取ると、クラリスへと手渡した。


「ありがたき幸せ」


 書館を受け取ったクラリスはそれを恭しく掲げながら頭を下げた。


「最後にハーティよ、余からそなたへ『商業国家アーティナイ連邦』への親書を託したい。こちらへ来るが良い」


「はい」


 ハーティは皇帝に促されて目の前まで歩み寄ると跪こうとする。


「跪かなくて良い」


「ですが・・」


「そなたは『女神』なのであろう?であれば、余とは対等、いや寧ろ余がそなたに頭を下げなければならない身である」


「それに、これからイルティア王国と親交を深めるのにそなたのことを蔑ろにできぬ」


 そう言うと、皇帝はハーティの手を取って親書を握らせる。


「ハーティよ。世界の命運はそなたにかかっている。頼むぞ」


 皇帝はしっかりとした眼差しでハーティを見つめて、親書を握らせた手を優しく包み込んだ。


「・・ぐっ!」


 流石に真面目な表情をした皇帝には手が出なかったユナだが、血が滲む勢いで下唇を噛んで耐えていた。


 皇帝はそのまま細くしなやかな指をハーティの顎へやると、それを優しく持ち上げた。


 所謂『顎クイ』である。


「そして、ふたたびそなたが戻ってきたときに我が妃になることを心待ちにしておるぞ」


「そ・・それは、イルティア王国のこともありますし、世界が平和になった後に改めてお話ししましょうと言ったはずですっ!」


 ハーティも流石に『顎クイ』には免疫がないのか、真っ赤な顔で汗を飛ばしながら視線を逸らした。


「・・・斬る!」


 そう言いながら、ユナが腰に装備した『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』に手をかけた。

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