帝都襲撃3
ユナがゴーレムと戦闘していた時と同時刻、ハーティは宮殿へ飛んでいた。
(黒の魔導機甲はまっすぐに宮殿へ向かっていた!急がないと多数の被害者が出るわ!)
ハーティが宮殿へ向けて更に飛行速度を加速させようとしたとき・・。
ゴォォォォォン。
進路を妨害するように四体の飛行したゴーレムがハーティの目の前に現れた。
「っつ!あなた達を相手している暇はないのよ!!」
ハーティは一人悪態をつくが、ゴーレム達はそれを無視してハーティに向けて掌を向けた。
それらは皆ユナが苦戦していた、腕部まで改造されていたタイプのゴーレムであった。
「?」
キイィィィィン!
初見であるハーティはゴーレムが掌で生み出した魔導式に首を傾げた。
ドドドドドドドドドドドゥン!
直後、四体のゴーレムが魔導を発動して大量の火球をハーティに向けて放った。
「っつ!!!」
ゴーレムが突如放った火球に目を見開いたハーティは即座に回避行動に移る。
シュバババババババ!!!
それらの火球はハーティの高い機動性により全て回避することが出来たが、ユナの時と同じように様々な方向に軌道を変えながら再びハーティの方へと戻ってきた。
「・・なんですって!!??」
四方八方から戻ってきた火球を回避する為に、ハーティは垂直方向へ一気に高度を上げた。
すると、その火球も上空方向へと軌道を変える。
ハーティが真上に上昇している状態を追尾している為、それらの火球は同じ方向に束になって揃い始めた。
ドゥン!
ハーティの上昇速度は音速を突破したが、それでも火球は追尾してきていた。
「もう!なんなのよ!」
やむを得ずハーティは防御魔導が持つ最高の速度で宙返りをして、空に大きな縦向きの円を描きながら高度を落とした。
そのまま一気に高度を落としてゆくと、追尾してくる火球が上空から降り注いでくるような形となった。
「これでも追尾してくるわけ!?」
イィィィン!!
そして再び一気に高度を上げる。
ハーティの凄まじい飛行速度による衝撃波で、付近の建物の屋根材や簡素な扉などが吹き飛ばされていった。
ドドドドドォォォォォン!!
そして、流石にハーティの曲芸のような飛行に追いつけなかったのか、落下状態から軌道の修正が間に合わなかった火球が地上の建物に次々と命中していった。
「っく!なんてしつこい火球なのよ!!ゴーレム達を纏めて倒したいけど・・獣人が人質になっている以上、派手な魔導は使えないから厄介だわ!」
ハーティはもしゴーレムの胸部に獣人が埋まっていなかったら、それなりの出力で魔弾を放って消し飛ばすつもりであった。
尤も、もし少しでも地上に向けて放ってしまったら、魔弾が市街地に命中することによって起こしてしまう惨事の方が問題になってしまうので使いどころが難しいのだが。
「あなた達に構っている暇はないわ!ごめんね!」
そして、仕方なくハーティはゴーレム達を追い抜いて宮殿へ向かうことにしたのであった。
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
その時、宮殿でオルクス皇帝はクウォリアス軍務卿から現状報告を受けていた。
「帝国軍及び衛兵や緊急派遣された冒険者達もゴーレム討伐にあたっていますが、ゴーレムに施された『上級防御魔導』によって全く攻撃が通用しない状態です」
「何故だ!何故そのようなことがゴーレム如きに出来るのだ!!」
「それは分かりかねますが、何らかの方法で『メルティーナ』のような大規模のマナ供給システムが確立されていると思われます」
「くそっ!よりによって自国が開発した兵器で帝都が壊滅の危機になるなど、こんな愚かな話があるか!!」
ダン!
皇帝は悔しそうな表情を浮かべながら自分の玉座にある肘掛に拳を叩きつけた。
「ですが、報告によると一人の冒険者が単騎で二十体程のゴーレムを撃破しているようです」
「なんだと!?それはどんな冒険者だ!?『一級冒険者』なのか!?それほどの戦闘能力を持つ人間がいるというのか!?」
「・・それが、市街地にいる目撃者から上がってきた情報によりますと、その人物は最近帝都にやってきた冒険者パーティ『白銀の剣』に所属している『二級冒険者』の『ユナ』という女性だそうです」
「『二級冒険者』だと!?『上級防御魔導』を打ち破る程の大魔導士が!?」
「・・それが、目撃者によると生身による剣技のみでゴーレムを打ち倒したと・・」
「そんな馬鹿な話があるか!!」
「ですが実際に討伐しているのも事実で・・ん!?」
皇帝と話していたクウォリアスは、何かの気配を感じて謁見の間にある窓へと意識を向けた。
クウォリアスの視線の先にある窓ガラスには、徐々に大きくなる黒い影が映っていた。
「っつ!陛下!危ない!」
その影を見た瞬間、クウォリアスは皇帝を護るべく、窓の方に立って自分の体で壁を作った。
バァァァン!
直後、窓の周りの壁ごと突き破るようにして巨大な握り拳が謁見の間へと突っ込んできた。
「ぐううう!」
それによって飛んできた瓦礫に体を打ち付けられて、クウォリアスは苦痛の表情を浮かべた。
そして、立ち込めた土埃が風で流れたことにより、皇帝とクウォリアスの視界が戻った。
その視線の先の壁に空いた大穴からは、まるでこちらを覗き込むように巨大な『黒の魔導機甲』の頭部が見えていた。
『やはり、ここにいらっしゃいましたね。皇帝陛下』
『ナラトス様と私の悲願達成の為に・・陛下には死んでもらいますね』
拡声魔導越しに聞こえる少女の声は、氷のように冷徹なものであった。




