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転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい  作者: RYUJIN
第二章 魔導帝国オルテアガ編
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『聖騎士』の戦い ~ユナ視点~

(ゴーレムに『上級防御魔導』が備わっている以上、機能停止するには直接『還元』が発動しているブレードで頭部を攻撃するしかありませんね)


 ユナが『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を構えてゴーレムの目前まで迫ると、そのゴーレムがユナを認識して打撃を繰り出す。


 ユナはそれを体の回転により空中で華麗に回避すると、振りぬかれたゴーレムの腕を伝い走りながら頭部を目指す。


(まずは一体!)


 そして、ゴーレムの上腕付近に到達すると、上半身の回転による動きで『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を横なぎに振るう。


 シュパン!


 ズズズ・・ドォォン!


 すると、ユナの振るった剣戟によって綺麗な断面を見せながらゴーレムの頭部が落ちていった。


 そして、その直後に機能停止したゴーレムは、付近の建物を巻き添えにしながら激しく転倒した。


 既に転倒し始めた段階でゴーレムから飛び退いていたユナは、空中で数回転に及ぶバック転をしながら、近くにある住居の屋根へと着地した。


 ドォォン!


 そして、再び『ブースト』による強烈な踏み抜きで高く飛び上がったユナは、そのまま弾道軌道を描きながら次のゴーレムへと迫る。


 ユナが次に狙ったゴーレムの目の前では以前バザールですれ違った二人の神官が『最敬礼』の姿勢になっており、今まさにゴーレムがそれに向かって拳を振り下ろさんとしていた。


 オォォォォォン!


「ああ・・・女神ハーティルティア様・・この瞬間が私の天命なのであるというのならば、悔いはありません」


「女神ハーティルティア様の世界に安寧が続かんことを・・・」


 もはや為す術もなく諦めたという雰囲気の二人に迫るゴーレムに、ユナはそのままの勢いで斬りかかった。


 ザンッ!!!


 そして先ほどと同じように頭部を失ったゴーレムがゆっくりと神官達に向けて倒れかかってくる。


 シュタッ・・・ダダダ!!


 ユナは華麗に着地を行うと、素早い動きで倒れてきているゴーレムの下に潜り込んで、下敷きになりそうな神官二人を両腕で抱えてそこから飛び退いた。


 ドォォォォォン!


 土煙を上げながら倒れたゴーレムを一瞥すると、ユナはその神官二人から離れた。


 そして、助けられた神官二人はユナが持っている『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を見て目を見張る。


「助けていただいてありがとうございます。その防御魔法すら意に介さない程凄まじい切れ味の剣・・もしやあなた様は・・」


「ええ、私は神聖イルティア王国のユナと申します」


 ユナが名乗りながら一礼すると、二人の神官は素早くユナの前で跪いた。


「・・・やはり『神剣』の使い手である『聖騎士』ユナ・エインヘリアル様でしたか!」


「遠く離れた異国の地でご尊顔を拝見出来まして恐悦至極に存じます!噂はこの帝国まで伝わっております!」


「救国の英雄様がいらっしゃるとあれば、この騒動の中でもとても心強く思います!」



『女神教』信者達の伝聞により神聖イルティア王国で起こった邪神との戦いによる奇跡の出来事は、既に他国にまで伝わっている。


 特にその戦いの中で『神剣』を賜って『女神ハーティルティア』と共に戦った『聖騎士』ユナは既に信者の中では英雄として認識されていた。


 そして、今や『女神教』において『聖騎士』は『聖女』や『総司祭』に並ぶ上位の人間として敬われていた。


「お二人が無事で何よりです」


 そう言うとユナは再び『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を構えて二人の神官に背を向けた。


 そして、肩越しに振り向くと二人に真剣な表情で声をかけた。


「私は他のゴーレム討伐に向かいます。神官のお二人は傷ついた帝都民の皆様の治癒にあたってください」


「『聖騎士』様のご命令とあらば全力で事にあたらせていただきます!」


 そう言いながら二人は頭を垂れた。


「頼みます!」


 ドォォン!


 そして、ユナは次のゴーレムの元へと跳躍していった。


「なんと凛として美しい御方だ・・・」


「『聖騎士』の称号は伊達じゃないな・・エインヘリアル様に『女神ハーティルティア』様のご加護があらんことを・・・」


 二人の神官はユナへ向かって静かに祈りを捧げた。


 ・・・・・。


 ・・・・・・・。


「っく!よくもこれほどのゴーレムをこれだけ短時間の間に用意したものですね!」


 それからも、ユナは次々と帝都で暴れるゴーレムを仕留めて行った。


 そして、討伐数が二十体に迫ろうとした時、ユナの目前に今までのタイプと様子が異なったゴーレムが現れた。


 そのゴーレムは頭部だけでなく、腕部も人工物のようなものに変えられているようであった。


 そして、そのゴーレムはユナを発見すると、その人工物で出来た腕を上げて掌をユナに向ける。


 イィィィィィン!!


 その掌が白銀色に発光した瞬間にユナの頭の中で嫌な予感がよぎった。


 ドゥンドゥンドゥンドゥン!!


 そうしている間に、ゴーレムの掌から魔導式が展開すると、そこから大型の火球が勢いよく放たれた。


「っく!火魔導ですって!!??」


 ユナは連続で放たれた火球を俊敏な動きで全て躱す。


 すると、回避されて後方へ飛んでいったはずの火球が突然軌道を変え始めた。


 そして、大きく旋回するように軌道を変えた火球はユナの背後から再び飛来してきたのであった。


「ゆ・・誘導する火球ですって!!?」


 思いがけない火球の軌道に回避が間に合わなかったユナは背後からまともに火球を食らってしまう。


 ドドドォォン!!


「ぐあぁぁ!」


 火球によるダメージで防御魔導が解除されたユナはそのまま激しく地面を転がった。


 幸い展開していた防御魔導によって火球自体のダメージはほとんど無かったが、その後に地面に叩きつけられた衝撃によって、ユナは全身を擦りむいたような状態になっていた。


「誘導式の魔導なんてものがあるなんて・・」


 ユナが一人呟いている間にもそのゴーレムは火球を再び放とうとしていた。


 そのモーションを見たユナはポーチからアタッチメントを取り出すと、携えている『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』のブレード部分に装着した。


 すると、激しい水流が渦を巻いたような状態で『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を纏いだした。


 ドゥンドゥンドゥンドゥン!!


「・・・・・」


 そして、再び放たれた火球に対して、ユナは回避行動を取らずに『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を水平に構えた。


「『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』が二の剣!『水流(アルクラ)』!!!」


 ユナが勢いよくそのまま『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を横なぎに振るうと、飛来してくる火球を迎え討つように渦巻く水による水球が激しく衝突した。


 ジュゥゥゥゥゥ!!


 お互いが激しくぶつかり合うと、高温の火球もユナが放った水球には耐えられなかったのか、それは激しい水蒸気を発生させながら消滅した。


 そして、その水蒸気による霧の中から、ユナはゴーレムの頭部目がけて飛び出した。


 直後、水を湛えながら振りぬかれたユナの剣戟は、飛び散った滴による美しい光の乱反射を発生させながらゴーレムの頭部を切り落としたのであった。


 ドォォォン!!!


「・・・・・」


 ビシュン!


 ユナはそのまま華麗に着地すると、ゆっくりと倒れていくゴーレムを背にしながらブレードに装着されたアタッチメントを取り外し、携えた剣に残った水滴を目にもとまらぬ速さで『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を振ることで吹き飛ばした。


「・・・ここら一帯のゴーレムはあらかた討伐できましたね」


 キィィィィン!ドドーン!!


 その時、ユナの上空で衝撃波音が響き割った。


「・・・やっと彼女(クラリス)が来ましたか・・」


「・・・宮殿はハーティさんたちがいれば問題ないでしょう・・私は引き続き残りのゴーレムを討伐しますか」


「とにかく、腕部を強化されたゴーレムには注意しないといけませんね」


 ユナはそう一人呟くと、『女神(イルティア)(・レ・)(ファティマ)』を携えて再びゴーレムによる破壊音と帝都民の悲鳴が響く方へ向けて歩き出した。


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