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転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい  作者: RYUJIN
第二章 魔導帝国オルテアガ編
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冒険者登録

「あなた、冒険者でもないのに『煉獄盗賊団』の一味と渡り合ったんですか・・」


「まあ・・・一応魔導士ですので・・・」


「はあ・・・それはまあ見ればわかりますが・・」


「どちらにせよ冒険者に登録しないと報酬は受け取れないので、今から登録をしましょう」


「時間は大丈夫ですか?」


「・・私は大丈夫ですよ」


 ハーティはどのみち冒険者登録をするつもりだったので、受付嬢の案内に従う事にした。


「じゃあ、私たちは先に宿に戻って夕食の支度をします」


「もう遅いですし、ハーティさんも食べますよね?」


「私たちの宿屋は『暁の奇跡亭』という名前の宿屋です。ここから結構近いんですよ!地図を書いておきますね!」


 そう言うと、シエラは帳簿に使っていただろう、使い古した羊皮紙の裏にギルド備え付けの羽ペンでサラサラと地図を記入した。


「はい、どうぞ。まだ御礼もできていないので必ず来てくださいね!!」


「ええ、わかったわ。あとでまたよろしくね!」


 ハーティがそう言うと、シエラがぶんぶんと手を振り、ジェームズがペコリと会釈をして、二人はギルドから去っていった。


「・・・では冒険者登録を始めますので、こちらの羊皮紙に必要事項を記入してください」


 そう言いながら受付嬢がハーティに冒険者の登録用紙を渡した。


ハーティはそれを一読する。


(名前・・は『ハーティ』だけでいいか・・)


(年齢は・・・15歳・・出身は・・『神聖イルティア王国』・・・と)


 ハーティは項目を淡々と記入して埋めていった。


(ジョブ?・・・ジョブってなんだろう・・?まあとりあえず『魔導士』でいいか・・)


 ハーティは魔導も素手喧嘩(ステゴロ)もなんでもござれであったが、身なりが丸腰の女の子なのでとりあえず『魔導士』であることにした。


(犯罪歴・・・は『無し』よね・・・)


 そして、一通り記入が完了した羊皮紙をハーティは受付嬢に渡した。


 羊皮紙を受け取った受付嬢はそれを無言で一読する。


「・・・わかりました」


「・・では、これから冒険者の適正をチェックします」


「適正??」


「はい、冒険者は一応誰でもなれるわけではありません」


「自己申告したジョブに対してある一定以上の素質があるかを確認して、それがあれば冒険者として認められるわけです」


「過去に冒険者になったばかりの人が無謀な依頼を受けて命を落とすことが多かったので、最近は冒険者になるときは適正試験を受けて、一定以上の素質があるかを確認するようになったわけです」


「なるほどねえ」


 ハーティが一通り説明を受けると、受付嬢は何やら石板のようなものを取り出してきた。


「まあ、魔導師の場合は『見た目』からだいたい想像できるんですけどね・・・とりあえずこの石板に手を置いてもらえますか」


「・・・はぁ」


 ひたっ・・。


 ハーティは受付嬢からの指示に従って、石板に手を置いた。


「では、その石板になるべく強くマナを込めてください」


「え?」


 受付嬢の言葉にハーティは困惑した。


(どうしよう・・私が神白銀(プラティウム)じゃない物にマナを込めたりしたら・・一瞬で消し飛びかねない・・)


(ユナにマナを込めた時くらいに手加減して流し込もう・・)


 そしてハーティは石板に、恐る恐るマナを込め始めた。


 パァァァァァ。


 すると、石板の表面にびっしりと魔導式が浮かび上がり、石板全体が淡く発光し始めた。


 ガタッ!


 それを見た受付嬢が目を見開きながら立ち上がった。


(!!ちょっと!驚かさないでよ!驚いた拍子にマナを流しすぎて石板を消し飛ばしてしまうじゃない!)


 ひとまずハーティは、驚いた拍子にマナを込めるのをやめてしまったので事なきを得た。


「あ・・あのう・・これでよかったんですか?」


 ハーティは冷や汗を流しながら石板を眺めていた受付嬢に声をかけた。


「え?あ、はい。大丈夫です・・なるほど、それで盗賊達を・・これは大事ですね・・」


 受付嬢は冷や汗を流しながら、何やら独り言を言っているようであった。


「大事なのか大丈夫なのかどっちなんでしょうか・・」


「はっ!?あ、ご協力ありがとうございます!どうやら魔導士としての素質はクリアですね!はい!」


「はぁ・・」


 そして、受付嬢は机の上に置いてある魔導結晶が嵌った台の上に一枚のカードを置いた。


「で、では!この『ギルドカード』の四角い枠に右手の人差し指を押し当ててください」


「・・・こう?」


パァァァァァ・・。


 ハーティがカードに描かれた、黒くて小さな四角の枠内に指先を当てるとカードが淡く光った。


 そして、指先を触れるまで真っ黒の四角だった部分に、ハーティが見慣れない紋様が青白く発光して刻まれていた。


「この紋様は?」


「ああ、これは私も受付嬢をしてから知ったんですが、指の模様を読み込んで登録してるみたいです」


「指の模様?」


「はい。自分の指を良く目を凝らしてみて見たら、溝みたいに刻まれた紋様がありますでしょ?」


「まあ、それは前から気になっていましたけど・・」


「どうやらそれは『指紋』というみたいで、その紋様はどんな人であっても決して人とは同じにならないみたいです」


「それを利用して『ギルドカード』の偽造を防止するものです」


「今や世界中のギルドで使われている、いわば帝国魔導技術の結晶ですね!」


 ガチャチャ・・ガチャチャ。


 そう言いながら受付嬢は先ほどのカードを、次は卓上に置いてある沢山のボタンが付いた機械のスリッドに差し込んで固定した後に、そのボタンを両手の指で器用に押していた。


 受付嬢がボタンを一つ押すたびに、機械に差し込まれたカードが左右に往復して動いていた。


「それは?」


「これは『タイプポンチ』といって、ボタン一つに大陸共通文字一種類が割り当てられている機械で、ボタンを押すと、連動した文字のポンチが動いて、ギルドカードに文字を刻んでくれるんですよ」


「これで先ほどあなたが記入してくれた内容をギルドカードに打ち込んでいるんです」


「へえ・・それも凄い魔導具ですね」


「いえ、これはただのギミックですよ。魔導具でもなんでもありません」


「・・・・・」


ガチャガチャガチャ・・チン!


「・・・とまあ、これでハーティさんの冒険者登録は完了です」



 そう言いながら、受付嬢はハーティに出来上がったギルドカードを手渡した。


 そのカードには、大陸共通文字で『四級冒険者証』と書かれていた。


「『四級冒険者』?」


「はい、冒険者には一級から四級の冒険者ランクがあります」


「それぞれのランクでは受注できる依頼が異なり、それによって報酬額も異なります」


「基本的には過去の依頼実績や他者からの推薦などによって冒険者ランクは上がっていきます」


「そして、上のランクであればあるほど、その人が実力者であることも証明されます」


「一級ほどの人物になれば、各国の指導者からも一目置かれる存在となるでしょう」


「ランクに関係なく受注できるのは『指名依頼』というものです。こちらはクライアントが直接特定の冒険者を指名するので制限がありません」


「まあ、いずれにしてもある程度有名にならないと『指名依頼』を受けることはありませんが・・」


「もしくは『たまたま遭遇した魔獣の討伐』もランク制限はありません」


「ただ、本当に偶然なら仕方ありませんが、事情があって実力があるのにランクが低い冒険者じゃない限り、強い魔獣に挑むのはただの自殺行為なんで気をつけてください」


「また、一度受けた依頼の達成状況はギルドに保管されます」


「そして、依頼失敗が多い冒険者はランク降格やギルドカード剥奪の処分が下る場合があります」


「また、奴隷になったり犯罪者になっても剥奪の対象になります」


「あくまで冒険者は冒険者ギルドの顔として意識して行動するように気をつけてくださいね」


「以上が冒険者の簡単な心得です。何か質問はありますか」


「・・特に問題ないですよ」


「またなにかわからないことがあれば、いつでも来てくださいね!」


「はい、ありがとうございました」


 ハーティの主たる目的は『黒の魔導結晶』を探し出すことなので、別に優れた冒険者を目指しているわけではない。


 なので、説明はさらりと聞き流す事にした。


 すると、受付嬢の元に一人の美青年がやってきた。


 その青年はずっしりとした革袋を受付嬢に渡すと、二人でヒソヒソ話を始めた。


 ハーティが見たところ、その青年はどうやら報酬の金貨を渡す為に来たようであった。


 そしてその男は、受付嬢とヒソヒソ話をしながらチラチラとハーティに目を向けていた。


 ちなみに、受付嬢はその青年に耳打ちをされながら恍惚な表情をしていた。


 やがて、二人が話を終えると、青年がハーティへ和かに語りかけてきた。


「はじめまして。僕は『帝都冒険者ギルド』を管轄しているギルドマスターのクランと言います」


「私はハーティといいます。神聖イルティア王国からやってきました」


「それは大変な道のりでしたね。」


 二人が会話していると、受付嬢がクランからもらった革袋をハーティに手渡した。


「検分がおわりましたのでこれは今回の報酬です」


「久しぶりの大きな案件なので僕が挨拶に伺ったのですが、これはまた驚いた!なんて美しいレディなんだ!」


 そう言いながらクランはハーティの何も持っていない方の手を取って口づけをした。


 そして、それを見た受付嬢は「はうっ!」という声を上げながら顔を赤くしていた。


「金貨三百枚って重いんですねえ」


 しかし、ハーティは侯爵令嬢時代から手の甲にキスをされるなど日常茶飯事だったので、さして気にすることはなかった。


「え・・・?」


 しかし華麗にスルーされたクランの方は意外だという表情であった。


 しかし、それもすぐに気を取り直した様子であった。


「ごほん!そ・・そうですね、重いでしょう?でしたらギルドで預かりも可能ですよ」


「あ、大丈夫ですよー」


 ハーティはクランの提案をやんわり断ると、ずっしりとした革袋を展開した収納魔導の空間に放り込み、やれやれといった感じで両手をパンパンと打ち払った。


 ガタッ


「収納魔導だと!?」


「収納魔導ですって!?」


 ハーティは自分の身の上的に、神聖イルティア王国を去った時のような事態になるのを想定して、すべての荷物を持ち歩きたいと思っていた。


 しかし、ハーティは失念していたのだ。


 普通の魔導士は収納魔導を使えないということを。


 そして、それを目の当たりにした二人は信じられないものを見るような顔をしていた、


「あっ!はあはあ・・やっぱり『収納魔導』はマナ消費がキツいわ・・・宿に着いたら解除しましょうはぁはぁ」


 収納魔導を見られたことの重大さに気付いたハーティは、金貨袋を入れたらもうマナが切れかかっているという状態を演じて見た。


「「・・・・・」」


 しかし、案の定二人はハーティの大根な演技に納得していない様子であった。


「あ、だいぶ遅くなってきたし、シエラちゃんが待ってるわ!」


「ありがとうございました!私はもう行きますね!」


「あ、あのちょ・・・」


 その状況に居た堪れなくなったハーティは、クランの言葉を無視して冒険者ギルドから飛び出した。


そして、取り急ぎ『暁の奇跡亭』に向かうことにしたのであった。


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