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転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい  作者: RYUJIN
第二章 魔導帝国オルテアガ編
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冒険者ギルドへ

「わあ、これが『帝都リスラム』なのね!」


 検閲場を超えてリスラムのメインストリートに入ると、ハーティの目の前に帝都の街並みが広がっていた。


 帝都リスラムは四角形の形状をしており、周囲を塀で囲まれた大都市である。


 都市の中心部に向かって土地が高くなっている山形の形状をしており、街の中心部には帝国の象徴である王宮が聳え立っている。 


 その一番の特徴は、魔導工学が高度に発展していることで、土木技術や建築技術が世界的に優れており、それらを駆使した高層建造物が立ち並んでいることである。


 帝都中心に近く地価が高いところほど顕著に建物が高層になっており、中には7階から8階建てくらいのものも存在していた。


 そして、街道は王都イルティア同様にしっかりと舗装整備がなされており、街灯には魔導ランプが用いられていた。


 都市の規模と人口こそ王都イルティアに劣るが、帝都は他国の追従を許さない、高度な先進都市であった。


 ウィーン・・タタン・・タタン。


 馬車から街並みを眺めていたハーティは、遠くで走る路面鉄道を発見した。


 それは、ハーティが神界で生きていた時代を含めても、初めて見るものであった。


「ええ!?あれは一体何なの!?」


「ああ、あれは『魔導路面列車(マギ・トラム)』です」


「『魔導路面列車(マギ・トラム)』?」


「はい。私も詳しい仕組みはわからないですが、魔導士のマナを使って『発導機』というのを動かして走るそうです」


「帝都中にあの鉄でできた『路面軌道(レール)』というのが整備されていて、あれに沿って定時運行されている、いわば『帝都民の足』ですね」


「といっても運賃は一律『銅貨一枚』なので、私たちは滅多に乗りませんけどね・・」


「まだまだ乗合馬車のほうが運賃が安いですから・・」


 そう言いながらシエラは耳を伏せた。


「なるほどね・・・」


 ハーティ達が馬車で話していると、目の前から馬が引いてない馬車が向かってきていた。


 それを見たジェームズは、すぐに馬車を道の端に停車して道を譲った。


「あ、あれはなんですか!?馬車が馬もひかずに走ってます!」


「あれも『魔導車』と言って、発導機で動く車です」


「でも、車自体も高価で、御者もマナを込める上位の魔導士を雇わないといけないので基本的に貴族の乗り物なんですよ」


 そう言いながらジェームズはにこやかに微笑んだ。


「す、すごい・・・魔導帝国オルテアガ・・」


 想像を遥かに超えた先進的な街並みにハーティは驚きを隠せなかった。


 それからも見慣れない街並みにハーティが目を輝かせていると、馬車が冒険者ギルドに到着した。


 ちなみに、ハーティ達が盗賊をゾロゾロと連れていた為に、すれ違った帝都民は皆驚きを隠せないようであった。


「これが・・冒険者ギルド!!」


 ジェームズさんが停車場に馬車を止めると、ハーティの目前には大きな五階建ての建物が聳え立っていた。


「ここが帝都リスラムの冒険者ギルドです。なんでも、冒険者ギルドの規模では最大らしいですよ!」


「では、早速行きましょう」


 そう言いながら、シエラは盗賊達の縄を馬車から外していた。


「さあ、あなた達をギルドに引き渡すわよ。ここまで歩きで大変だっただろうけど、もう少し頑張ってね」


「「「へい!!」」」


 ハーティの言葉を聞いて、盗賊達は威勢の良い返事をした。


(だがら私の子分みたいに思われるじゃない・・・)


 ハーティは嘆息しながら冒険者ギルドに入った。


 ウィーン・・。


「うわっ!?扉が勝手に開いた!」


 ハーティは早速ギルドの入り口に驚いていた。


「自動扉ですね。これも魔導具の一つですよ!」


 何故かシエラが得意げに言った。


「なんというマナの無駄遣い・・手で開けたら良いじゃない・・」


 ハーティは呆れながら受付まで盗賊を引き連れたのであった。


「すみませーん」


「こんばんわ。冒険者ギルドへようこそってうわっ!?こんな大人数でどうしたんですか!?」


早速ハーティが手短な受付嬢に話かけると、彼女はハーティ達があまりの大所帯であったのでびっくりしていた。


「道中で盗賊達に襲われたので、逆に返り討ちにして捕まえたんです。ですので引き取りをお願いします」


「え、貴方達だけでこれだけの人数を!?」


「いえ、ハーティさん一人でです」


「ええ!?」


 シエラがそう言うと、受付嬢はさらに驚いていた。


 どちらかというと信じていないという様子であった。


「疑っちゃあいけねぇぜ嬢ちゃん!俺らは本当にこのあね・・嬢ちゃんに捕まったんだぜ!!」


「盗賊は殺しもするし盗みはするが嘘はつかねぇぜ!」


 盗賊は何故かそう言いながらドヤ顔であった。


「ま、まあ捕まった本人が言うなら・・・って貴方達は!!」


ドヤ顔の盗賊を見ながら、受付嬢は指を指して驚いていた。


「『煉獄盗賊団』!しかも勢揃いしてるじゃない!!本当にどういうこと!?」


「『煉獄盗賊団』?」


ハーティは聞き慣れない話に首を傾げた。


「あなたが捕まえたのに知らないんですか!?」


「『煉獄盗賊団』と言えば、帝都の周りを根城にする最悪の盗賊団で、冒険者ギルドが生死を問わずに一人頭金貨十枚の懸賞金をかけるほど手を焼いていた奴らです」


「それをこれだけの人数一網打尽にしたなんて、凄いことなんですよ!」


「え・・?一人金貨十枚ということは・・三十人だから・・金貨三百枚!?」


ハーティは思いもよらなかった大金に驚いていた。


「ね?だから俺たち言った通り、金になりやしょう?」


「・・なんで捕まった貴方達が得意げなんですか?」


それを聞いた受付嬢がジト目で盗賊達を見ていた。

ハーティは元侯爵令嬢なので、その程度のお金であれば下手をすればかつて身につけていたアクセサリー代にもならない。


 だが、金貨三百枚というお金は、生まれて初めて一人旅に出て自分で手に入れたお金としては十分に大金であった。


 そして、そうこうしている間に他のギルド職員と帝国の衛兵がやってきた。


 受付嬢は衛兵達と言葉を交わすと、ハーティ達から彼らへと盗賊達を引き渡した。


「ハーティの姉御!達者でな!俺たちはきっちり罪を償うから、来世でまた頼んますよ!」


「もう悪いことはしないでね!私もあなた達がちゃんとした人間になれる事を祈っているわ」


 彼らが今までしてきた事を考えれば縛り首の可能性が高いはずである。


たとえ運が良くて縛り首を逃れられても、生涯犯罪奴隷として過酷な環境で働かされるのが関の山である。


それでも最後はにこやかに去った盗賊達を見て、せめて『縛り首はありませんように』と祈るハーティであった。


どれだけ偽善と言われても、元が女神のハーティは人間が死ぬということを看過できない性分であったのだ。


「これだけの人数ですと検分に時間がかかりますのでしばらくお待ち下さい」


「あと、手続きをしますので『ギルドカード』をみせてもらえますか?」


「あ・・あのぅ」


「?」


突然もじもじし始めたハーティに、受付嬢は怪訝な顔をしていた。


「実は私、冒険者じゃなくてですね・・今日は冒険者登録も兼ねてここに来たんです」


 ハーティが気まずそうに頬をかきながら答えると・・。


 ガタッ!


「あなた冒険者ですらなかったのですか!?」


受付嬢があまりに驚いてカウンターから立ち上がっていた。


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