リーフィアの樹海
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キィィィィィ・・・・。
ハーティ達が『カームクラン』を出発してから三時間程度が過ぎた頃。
白と黒の二機の人工女神は『魔導帝国オルテアガ』から南へ四千五百キロ程南下した場所に位置する、広大な樹海の上空を超音速で飛行していた。
この場所は『カームクラン』からは九千キロ近く離れており、長距離の飛行になることからユナは『プラタナ』のコクピットの中に入っていた。
ハーティも飛ぶことに飽きた頃には『メルティーナ』の肩部装甲の上に腰かけて、足をぶらぶらとさせていた。
『それにしても人工女神の飛行能力は凄いわね。『カームクラン』から『リーフィアの樹海』までひとっ飛びなんだから』
『まったくであるな』
「ナラトスは大丈夫?」
現在飛行している人工女神『メルティーナ』へ直接動力となるマナを供給しているナラトスが一番長距離飛行の負担が大きい為、ハーティはナラトスの調子を確認した。
『ふん、わたしが『邪神』であることを忘れたわけではあるまい?この程度のマナ消費でへこたれていては話にならぬよ。マナさえ込めていればいいので『飛翔魔導』に意識を集中しなくても良いしな』
「それはよかったわ」
キィィィィィン・・・。
『・・それにしても、『エルフの国リーフィア』って樹海の中にあるから、『エルフ』にしかその場所はわからないって話じゃなかった?見つけることなんてできるの?』
クラリスが指摘するように、『エルフの国リーフィア』は『リーフィアの樹海』という広大な樹海地帯の中に存在する為、一般の旅人などが見つけ出すのは困難である。
また、『エルフ』自体が『エルフの国リーフィア』から出てこないこと、他国との国交もなく自給自足の生活をしていることから、その場所については公になっていないというのが実情であった。
「まあ大体『リーフィアの樹海』中心部に存在するって話は聞いてきたから、あとは上空から探すしかないわね」
『こりゃ確かに地上で歩いて探したら骨が折れるわね』
クラリスは果てしなく続く樹海を眺めながら嘆息した。
『ねえ、あそこ・・・樹海の一部が谷になっていて開けた部分があるわ!』
そして、しばらく樹海の上空を飛行していると、ニアールが集落らしきものを発見して『メルティーナ』の手で指差した。
「本当だわ。谷に大きな集落みたいなものがあるわね」
『きっとあれが『エルフの国リーフィア』なのよ!あそこに向かってみましょう!!』
クラリスの声を皮切りにして、二機の人工女神は谷部の集落へと向かっていった。
「とにかく『エルフ』がどういう対応をしてくるかわからないから、集落の中にいきなり着陸するのは悪手ね」
『では、集落のすぐ傍の樹海へ着陸するのが良いだろう』
『わかったわ』
ナラトスの提案により、二機の人工女神は『エルフの国リーフィア』と思われる集落の手前の樹海へと着陸した。
キィィィィィン・・・・バギバギバギバギ!!!
二十メートル近い人工女神が着陸できるような開けた土地が樹海にはなかったので、やむを得ず機体は樹海の樹木をなぎ倒しながら着陸した。
『ひとまず『エルフ』の出方を確認するまで、私達は人工女神から降りないほうがいいわね』
『わかりました』
『わかったわ』
クラリスの提案によって『プラタナ』と『メルティーナ』の二機はなるべく動かないようにしてしばらく待機する。
ガサガサッ!!
すると、木々を揺らす音と共に複数の『エルフ』と思わしき影が動いているのが確認できた。
そして、数十人にもなる『エルフ』らしき気配がハーティ達の周囲を取り囲んでいるのを感じることが出来た。
「囲まれちゃったね」
ハーティは『メルティーナ』の肩部装甲の上で体育座りをしながらのほほんとしていた。
ギリリ・・・!
ハーティ達が囲んでいる人の気配を凝らして見ると、そこにはやはり『エルフ』が樹木の枝などに身を隠しており、見事な意匠の弓を引いてこちらを狙い定めていた。
「あんまり歓迎されていなさそう・・かな?」
『そりゃこんなデカブツが空から降ってきたらびっくりするわよね』
ちなみに、クラリス達は『エルフ』を刺激しないように『拡声魔導』を使わずにピアスの通信で会話をしていた。
すると、樹木を巧みに飛び跳ねてかわしながら、数人の『エルフ』が二機の人工女神の足元までやってきた。
それらの『エルフ』は魔導銀製の剣とプレートアーマーを装備していることから、かなり位の高い騎士のような人物だと伺えた。
その中でも一際豪華な鎧を着た、高身長で美しい金の長髪を靡かせた男の『エルフ』が剣を構えながら一歩前へ出た。
「ユリシア、君には視えるか?」
その男は隣に控える、膝ほどにもなる美しい金髪を緑色のリボンで纏めた女性騎士に声をかけた。
どちらも抜きん出た美男美女なので、その様子はとても様になっていた。
「いえ、わたしにも視えません・・もしかすると、この巨大な魔獣は『ゴーレム』ではないのでしょうか?」
「たとえ『ゴーレム』であっても魔獣であれば視えるはずなのだがな・・とすれば生物ではないのか?」
「ですが、この巨人からは凄まじいマナを感じます。特に、あの黒い方・・何やら邪悪な気配と清らかな気配が織り混ざった不思議なマナを感じます」
メルティーナの肩部に腰掛けているハーティは、地上の『エルフ』からは視認することができなかった。
その為、『エルフ』達は、目の前にいる巨人の存在を知りあぐねているようであった。
『ハーティルティア様・・ここは私が』
バッシュウウ・・・。
シュタッ!
「「「!!!」」」
このままでは埒があかないと判断したユナは『プラタナ』から降りて両手を上げて敵意がないことを示しながら、『エルフ』の騎士の元へと歩み寄った。
ガチャ!!
その様子を見た『エルフ』達がユナへ一斉に武器を向ける。
「動くな!」
ユナは『エルフ』の指示に従って歩みを止めた。
「紺色髪の女・・・」
「本来魔導を使うことに適さない人間の筈ですが・・にしては今も複数の上級魔導を同時発動しているようです」
「馬鹿な・・!?そんなはずは・・もしや、装備がすごいのか?っつ!?まて・・そんな馬鹿な!?あの女が身につけている鎧は・・!?」
『エルフ』の騎士達はユナの姿を見ながらヒソヒソと耳打ちをしていた。
そして、ユナの装備している『神聖魔導甲冑一型』が普通の鎧でないことを見抜いたようであった。
その様子を見たユナは『エルフ』をなるべく刺激しないように落ち着いた口調で話し始めた。
「私は『神聖イルティア王国』の騎士爵第一位『聖騎士』を賜る『ユナ・エインヘリアル』と申します。貴殿を騎士とお見受けしてお願いします。私達を『リーフィア』の女王陛下とお取り次ぎ願えませんでしょうか?」
「貴様っ!只人の分際で陛下に会わせろだと!?」
ギリギリッ!!
しかし、ユナの言葉を聞いた瞬間、『エルフ』達が一斉に武器を持つ手に力を込めた。




