エメラダとの決着2
・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
古の光景から現実世界へと引き戻されたハーティは、『カッ!』と双眸を開いた。
「おもい・・出したわ!!」
「あの時・・・『バハムス』が放った神技・・・あれを局所的に放てば、きっと『エメラダ』を滅ぼせる」
ブワッ!!
その時、ハーティの眼前にエメラダの拳が迫っていた。
「折角の『滅ぼし合い』なのに呆けているんじゃあないわよ!!」
バァァァン!!
「うっきゃあ!?」
考察に気を取られて防御を怠ったハーティは、そのまま真面にエメラダの狂拳を食らった。
キィィィン・・・ドゴォォォン!!!
そして、そのままハーティは地面を果てしなく抉りながら後方へ吹き飛ばされた。
「いっつ・・・・」
エメラダの攻撃は『女神化』状態の極大防御魔導に防御された為、ハーティに直接的なダメージは無かった。
しかし、不意打ちによって吹き飛ばされた体勢を起こす為に、思わず痛くもないのに声を上げた。
「・・・・かったいわねぇ・・・」
エメラダはハーティの防御魔導に弾かれてぐちゃぐちゃになった自分の手をつまらなさそうに眺めていた。
そんなエメラダの拳の損傷も、即座に肉の触手によって修復されていった。
「どっちにしてもこのままでは永遠に戦いは終わらないわ・・・やってみる価値はあるわね」
そして、ハーティは太古の記憶を頼りに、かつての信頼する部下が発動した神技のイメージを脳内で構築し始めた。
ギュンギュンギュン・・・・!!!
直後、ハーティから出力される莫大なマナが、彼女の全身を更に光輝かせる。
そして、ハーティの美しい白銀の長髪はマナの奔流に揺さぶられて激しく靡いていた。
「っ!?ハーティルティアァァァァァ!!何をするつもりだぁぁぁ!!」
今までの様子と明らかに異なるハーティを見たエメラダは、間髪入れずにハーティへ魔弾を放った。
「ハァァァァァァ!!!」
ビシュウ!ビシュウ!ビシュウ!ビシュウ!
エメラダが連射した魔弾は光り輝きながらも棒立ちになっているハーティへ真っ直ぐ向かう。
「!!」
ブワッ!
ジュンッ!
しかし、その魔弾は急激に勢いを増してハーティの周囲を渦巻くマナにかき消された。
「なぁぁにぃぃぃ!?」
「クソビッチが!!こうなったら・・・」
魔弾をかき消されたエメラダは、直接ハーティを殴りつけようと動き出す。
「な・・に!?体が・・・うごか・・ない?」
エメラダが異変に気づいて自分の体を見ると、そこにはマナで構築されて白銀色に輝く鎖が全身に巻き付いていた。
「『拘束』・・・だと!?魔導の並列発動をしたというのか!?」
ハーティはどう見ても今だに別の魔導を構築中であり、エメラダを拘束する程の強力な魔導を放つことはできない状態であった。
それは即ち、ハーティが強力な魔導を二つ同時に発動できるという何よりの証明であった。
「そんなこと・・ありえないっ!」
昔から現在まで多くは語られなかったが、『神界』の神々の中でも複数の『神技』を同時に行使することは、神格の最も高い『女神ハーティルティア』のみが可能な業であった。
やがて魔導の構築が終わったハーティはゆっくりと双眸を開いた。
それによって、エメラダの漆黒の瞳とハーティの白銀の瞳が再び相対した。
「『邪神エメラダ』よ。女神の裁きを受けて滅びなさい・・」
ゴォォォォォォォ!
既に二人を包み込む程拡大したマナの奔流の中で、エメラダは牙を剥いた。
「ハーティルティアァァァァァァ!!!」
そして、とうとうハーティは女神の裁きを下すために神技を発動した。
「破邪の神技!!『セイント・レイ』!!」
瞬間、まるで一体の空間だけが切り取られたようにすべての音が失われた。
まるで、刹那の時間が引き延ばされているように舞い上がる土埃や石礫の動きがゆっくりに感じた。
「・・・・・・・!!」
エメラダはその音のない空間の中で、直上の空を見る為に顔を見上げた。
二人の直上にあった雲は全て押し広げられて、そこから見える澄み渡った青空は直径数百メートルにもなる円状になった。
そして、その部分は一瞬で眩い白銀の光で埋め尽くされた。
「・・・・・・・!!!」
そこからまっすぐ地上に降り注ぐ、巨大な聖なる光の柱をエメラダは声を発することもできずに、ただ見届けることしか出来なかった。
スギャァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
「・・・・・・・!!!」
「・・・・・・」
その光の柱に押しつぶされ、飲み込まれて消滅していくエメラダの姿を、ハーティはただ静かに見届けていた。
・・・・・・・・・。
「なんじゃ!?あの光の柱は!?」
「あれが・・・『女神の力』であるか・・」
・・・・・・・・・・。
「ハーティ殿・・」
「綺麗な・・光です・・」
「ああ・・女神様・・・」
その、天から降り注ぐ光は『カームクラン』からも観測された。
そして、その光の美しさに誰もが息を呑んだ。
・・・・・・。
ハーティの放った『破邪の神技』は『黒竜』を倒したばかりのユナ達にもはっきりと確認された。
「あの光は!?ああ・・ハーティルティア様っ!」
『さしずめ、天から降り注ぐ戦略級『ホーリーバスターキャノン』ってところかしら?全く・・本当にハーティは規格外にも程があるわ』
『これが・・・女神の力なのね』
『ああ・・エメラダは討伐できたのだろうか』
ユナ達が『セイント・レイ』の光に意識を向けている時、墜落して動かなくなっていた『黒竜』の爪先がピクリと動いた。
そして、『黒竜』はゆっくりと瞼を開いた。
『!!』
そのまま、『黒竜』は遠くで輝く白銀の光の柱に目をやると、驚愕したように目を見開いた。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
ズギャアァァァァァァァン!
アァァァン・・・。
・・・・シュウウウウ!
しばらくの間天から降り注いだ白銀の光の柱は、やがて収束したあとにキラキラと光の粒子を残して消滅した。
ハーティが放った戦略級浄化魔導は、邪悪な存在であるエメラダだけを消しとばし、その場は痛々しい戦いの爪痕を残したまま、果てしなく開けた焦土が広がっていた。
「エメラダ・・・」
ハーティは先程まで死闘を繰り広げた相手の名を呼ぶと、それが消滅した場所を一瞥してから踵を返してユナ達の元へと向かった。




