『カームクラン』防衛戦7
『ちょっと、ユナ!?一体どういうつもりなのよ!?』
クラリスは、突然『プラタナ』の前に出てきたユナに驚きを隠せないようであった。
そして、ユナは眩いマナの光の中で『プラタナ』の方を見た。
「言いましたよね?『応援します』って」
『えっ!?』
ユナは不敵な笑みを浮かべると、キョトンとしたクラリスを無視して、今もなお発導機からマナを伝達している神白銀ケーブルを抱きかかえた。
神白銀のマナ抵抗はゼロである。
そして、常時垂れ流しとは言え、ユナのマナ出力は『プラタナ』の発導機に匹敵する。
そんなユナがケーブルを抱きかかえた直後、ユナから出力される膨大なマナが『ホーリーバスターキャノン』へ送り込まれ始めた。
ドギャアァァァァァン!!
『ぐぅっ!?何てすごい力なの!?』
クラリスは更に増した操縦レバーのフィードバックに思わず声を上げた。
そして、ユナと『プラタナ』が出力したマナが合わさる事により、『ホーリーバスターキャノン』は一気にその威力を増して『黒竜』のブレスを押し返した。
『グギャオウウウウ!!』
やがて、二つのマナを合わせた『ホーリーバスターキャノン』は、『黒竜』の防御魔導を消しとばして頭部ごと飲み込んだ。
『今よ!!』
『任せて!』
クラリスは喜びを感じる暇なく二アールへ指示を飛ばした。
バシュウウ!
クラリスの指示を受けた『メルティーナ』は『飛翔魔導』で『黒竜』より遥かに高い高度まで上昇して、右腕部を天に向かって高く上げた。
『ナラトス様!!』
『いくぞ二アール!』
『これでトドメよ!!『ホォーーーリィーー』』
ギュウウウン!!シュイシュイシュイシュイ!
いよいよ『メルティーナ』が浄化魔導を発動すると、高らかに上げた手から眩い光が放たれ始めた。
そして、マナによる光が束られて、まるで巨大な光の槍のような形状になった。
『『アローーーーー!!』』
『メルティーナ』は光の槍が完成すると、それを『黒竜』に向けて力一杯投擲した。
ギュウウウン!!
光を迸らせながら、巨大な光の槍は猛スピードで『黒竜』へと向かっていく。
ズギャアァァァァァァァン!
それは『黒竜』の胴体へ突き刺さる様に命中すると、『黒竜』の体を眩い白銀の光で包み込んだ。
「ギャアアアオオオウウウウウ!!」
その光に包まれた『黒竜』は苦しそうな声を上げる。
ピシッ!パリィン!
直後、『黒竜』の首元にあった『黒の魔導結晶』が浄化の光によって砕け散った。
「グルルァ・・・・」
ドォォォォン!!
そして、『黒竜』の巨体は力なく、ゆっくりと墜落していった。
・・・・・。
・・・・・・・・。
パシシシッ!バキバキ!ドシュ!
ユナ達が『黒竜』と戦っていた頃、ハーティはエメラダとの殴り合いを続けていた。
「このクソアマがぁぁぁ!!その光輝く白銀の髪が気に入らないんだよぉぉぉ!!」
バチバチ・・・!
打撃の応酬をしていたエメラダは拳に魔弾を纏わせると、ハーティに向かって殴りつけた。
「はぁぁぁぁ!」
バギィ!
「私だって好きでこんな姿になったわけじゃないわよ!」
「私は、ただの冒険者になって平和に生きるはずだったのよおぉぉぉ!!」
ハーティは周囲が聞いたら『いやいや!』と突っ込みそうな台詞を吐きながら、迫り来るエメラダの拳をそれより更に強力な魔弾を纏った拳で迎え撃った。
「はああああ!」
そして、その状態のまま空いている左拳にマナを纏ってエメラダの顔面に叩き込んだ。
ズヴォバギャア!
「ぐるぶるぁばぁぁぁぁ!」
ハーティの左拳はそのままノーガードのエメラダの顔面にめり込み、エメラダは脳漿を背後へとぶちまけながら吹き飛んでいった。
ギュッ!
ハーティは吹き飛んだエメラダの行く末を確認することなく、再び力強く右の拳を握りしめた。
そして、上体を捻りながらその拳を後ろに引くと、ハーティは魔導を発動し始めた。
ギュウウウン!!シュイシュイシュイシュイ!
ハーティによって練り上げられた莫大なマナは、轟音を立てながら右手の中で眩く光るマナの矢を形成する。
「女神の力を受けなさい!『ホォーリィィーー!アロー!!』」
ハーティは自ら生み出した、最早槍と言っても過言ではないほど巨大な光の矢をエメラダに向かって全力で投擲した。
ギュウウウン!
ドガァァン!
「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!」
光の矢が命中したエメラダは、浄化の光に包まれて身体を不規則にバタつかせながら、頭部がないにも関わらず断末魔の様な声を上げて苦しんでいたいた。
「ア"ア"ァ・・・」
シュウウウウ・・・。
頭部が爆散した上、全身を焼け爛れさせたエメラダは最終的に膝立ち状態になると全身から煙を上げながら動かなくなった。
「はぁ・・はぁ・・やったの?」
シュウウウウ・・。
「・・・・・」
ハーティは肩で息をしながら、しばらくエメラダの様子を伺っていた。
ズブシャア!
すると、爆散したエメラダの頭部が乗っていた首の断面から、細い肉の触手のような物が血潮を吹きながら飛び出した。
グチュチュ・・グチャア・・グジュジュ・・。
それらは肉をこねる様な気味の悪い音を立てながら絡み合って、すぐに一つの形を作り上げていった。
それと同時に、焼け爛れた皮膚からも肉の触手が飛び出してきて、焼失した血肉に成り代わっていった。
「嘘・・・でしょ!?」
目の前で怒っている悍ましい光景にハーティは目を見開く。
「・・・わねぇ」
やがて、その血肉は髪の無い美女の頭部を形成していく。
ブァサッ!
そして、その直後に一瞬で伸びた黒い長髪を靡かせたエメラダは、自分の手で出来立ての顔をペタペタと触りながらハーティを見た。
その身体は全身が自分の血潮で染まっており、辺りには血生臭い臭いが広がっていた。
「その顔・・いいわねぇ」
エメラダはハーティが先程聞き取れなかった言葉をもう一度口にした。
そして、指先に付いた自分の血をペロリと一舐めすると、微かに口角を上げた。
「そんな・・どうして!?」
完膚なきまでに撃破したはずのエメラダが一瞬で回復した事実にハーティは慄いていた。
「その絶望に染まる顔・・わたくしはその顔が一番だぁいすきなのヨォ・・・」
「さぁ、女神ハーティルティアぁ?『第二ラウンド』の始まりよ。今度はわたくしが、あんたのその綺麗な顔を無茶苦茶にしてやろうじゃあないか!」
エメラダはそう言いながら邪悪に嗤った。




