会敵
『プラタナ』から放たれた光条は『カームクラン』に向かって突き進む『黒竜』に向かって伸びてゆく。
ビシュウウ！！
「グルァオゥ！？」
ズキャアアアアン！！
そして、光条は『プラタナ』の計算により、寸分違わず『黒竜』へ吸い込まれるように命中した。
バァァァン！
『黒竜』の防御魔導は命中した光条を数秒程度凌いだが、その後防御魔導を貫いた光条が『黒竜』の肩口を穿った。
「グギャアアアア！！」
『ホーリーバスターキャノン』は光属性の高出力浄化魔導の為、通常であれば魔獣にダメージを与えることは出来ない。
しかし、『黒の魔導結晶』の影響を受けた『黒竜』に光属性魔導は影響を与えているようで、『黒竜』は苦しそうな声をあげていた。
『『ホーリーバスターキャノン』命中！防御魔導を突破したわ！』
「みんな！」
コク・・。
『プラタナ』から響き渡ったクラリスの言葉を聞いたハーティが目配せすると、皆が頷き合った。
ドゥン！
そして、まずユナが『飛翔』の魔導で飛び出す。
『行くぞ！ニアール！』
『はい！ナラトス様！』
キィィィン・・バシュウ！！
続いて、ニアール達が駆る『メルティーナ』が離陸した。
『さて、あたしも行くわよ！』
『プラタナ』は『黒竜』との戦闘の為に、先程発射した『ホーリーバスターキャノン』を収納魔導に格納する。
『マギ・ライフル！！』
そして、背部に折りたたみ格納されていた『マギ・ライフル』を、展開した補助アームから取り外して携えた。
『『プラタナ』、行くわよ！』
キィィィン・・バシュウ！！
ライフルを携えた『プラタナ』は『メルティーナ』と同じように飛翔魔導による膨大なマナを放出しながら飛び立った。
最後にハーティがエメラダの元へ向かう為に飛び出そうとした時、ミウとアキトが息を切らしながら駆け寄ってきた。
「はぁはぁ、ハーティさん！」
「ミウさん？どうしたの？」
「はぁはあ、何とか間に合ったぞぇ・・いや、何て事はないのじゃが、『アーティナイ連邦』の代表としてそちらを見送りたかったのじゃ。じゃが、現場をあちこち駆け回っている間にタイミングを逃しての・・」
「そうだったのね」
「うむ、ハーティさん・・わらわ達は人の身故、はっきり言えばそちらの力になれぬので悔しいばかりなのじゃ・・」
「じゃが、そんなわらわ達でも自分達の『カームクラン』くらいは何とか守ってみせるのでな、どうか『邪神』から世界を救ってほしいのじゃ」
「私からもお願いします。どうか『カームクラン』を、この世界を救ってください」
「ミウさん・・アキトさん」
二人からのお願いを聞いたハーティは二人の手を取った。
「大丈夫、私は必ずエメラダを滅ぼして、『邪神デスティウルス』復活を阻止してみせるわ！だから『カームクラン』の事はお願いね！」
ドゥン！
ハーティは二人を激励すると、今度こそ大空へと飛び出していった。
「「ハーティさん・・」」
ミウとアキトは飛び去ったハーティの背中を仰ぎ見ながら見送った。
キィィィン！
そして、音速を突破したハーティは瞬く間にユナ達へ追いついた。
「みんな、通り過ぎついでに『ワイバーン』を減らすわよ！！」
『了解した！ニアール！』
『はいっ！』
ハーティの言葉を聞いたニアールは早速魔導を詠唱し始める。
それから数秒して詠唱が完了した『メルティーナ』は手を『ワイバーン』の群れへ翳した。
『ファイアーボール！！』
ゴウゥゥゥ！！
直後、『メルティーナ』から放たれた火球が『ワイバーン』の群れへと吸い込まれていく。
チュドォォォン！！
そして、着弾によって発生した大爆発により木っ端微塵になった数十匹の『ワイバーン』がパラパラと地上に墜落していった。
『次はあたしよ！『マギ・ライフル』！バーストモード！』
続いて『プラタナ』がワイバーンの群れに向かって携えたライフルの引き金を引く。
ビジュシュシュ・・・！
すると、『マギ・ライフル』の銃口から魔弾のようなものが連射されて、次々と『ワイバーン』を打ち落としていった。
『ふん！ただ発導機から発生したマナを束ねて撃ち出すだけの芸もない魔導具だけど『ワイバーン』にはそれなりに効くようね！』
その得意げな声を上げる『プラタナ』の脇をすり抜けたユナは『ワイバーン』に迫りながら『女神の絆』を構えた。
『『聖騎士』ユナ・エインヘリアル！参ります！』
キィィィン、ザシュッ！ズバシュッ！
そして、飛翔しながらすれ違う『ワイバーン』を次々と一刀両断にして行った。
「『翼』を手に入れた私に『ワイバーン』など敵ではありません！『女神の絆』が三の剣！『雷鳴』！」
ヴォン！ヴォン！
ビシュウウ！ビシュウウ！
ユナが『女神の絆』に新たなアタッチメントを装着して剣を振り抜くと、そこから雷の矢が次々と発生して遠くの『ワイバーン』数匹を纏めて叩き落として行った。
「・・・」
ハーティは皆が『ワイバーン』に攻撃するのを一瞥すると、軌道を変えて真っ直ぐエメラダの方へと向かった。
キィィィン！
ハーティの視線の先で米粒のようであったエメラダは、ハーティがエメラダとの距離を急激に詰めることによって大きくなっていった。
ドォン！
衝撃波の音を大気に響かせながら迫るハーティを視認したエメラダは、細くてしなやかな指で自身の黒い唇を撫でた。
「うふふっ、思ったより早い復活ねえ・・そうこなくっちゃあ滅ぼし甲斐がないってわけよねぇ！」
ドゥン！
そして、エメラダもハーティに向かって飛翔した。
「ハーティルティアァァァァ！！」
「エメラダ！」
ゼロ距離に向かって接近する二人はお互いに拳を握って振りかぶる。
「！！」
接近によりハーティの姿をしっかりと視認したエメラダは、前回と異なり白銀に輝くハーティの髪を見て目を見開いた。
バァァァァン！！
そして、二つの拳が衝突した瞬間、激しい閃光が生まれて防御魔導が破壊された音が響き渡った。
「な！？にぃぃ！？」
キィィィン！ドヴァァァン！
ハーティとの打撃の衝撃を受け止めきれなかったエメラダは右腕を吹き飛ばしながら目下の大地へと吹き飛んで衝突した。
対するハーティはと言うと・・・。
「・・・・」
全身に白銀の光を身に纏いながら、悠々とした姿で空中からエメラダを見下ろしていた。
「あんたっ！！その姿は・・・！？」
「私の本気、見せてあげる。そして・・」
ハーティは狼狽えるエメラダを無視して言葉を綴り、ゆっくりと彼女を指さした。
「『邪神エメラダ』よ。あなたは『女神ハーティルティア』が滅ぼすわ！！！」
そして、ハーティは驚愕するエメラダに向かって高らかに討伐を宣言した。
