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転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい  作者: RYUJIN
第三章 商業国家アーティナイ連邦編
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『黒竜』狙撃作戦

 それからしばらくしてハーティの声掛けによって盛り上がった場が収まってきた頃、一人の兵士が慌てた様子でハーティ達の元へとやってきた。


「女神ハーティルティア様!大変です!」


「何があったんですか?」


「はい、先ほど見張りの伝達が『カームクラン』に迫る『ワイバーン』の群れを確認した様子です!」


 兵士の言葉を聞いたハーティは眉を顰めた。


「思った以上に早くやってきたわね。どうやら、相手は『邪神デスティウルス』復活の邪魔になる存在は早期に始末したいようね・・・」


 そして、ハーティは顎に手をやって思案すると、矢継ぎ早に指示を出した。


「連邦軍は都市外周に展開して飛来する『ワイバーン』の迎撃を、冒険者と神官のみなさんは市民の避難誘導と戦闘で負傷した人の治療にあたってください!」


「御意!」


「「「了解!」」」


 ハーティの言葉を聞いたシゲノブやその場に居た者達は声高らかに返事をすると、速やかに人員を展開し始めた。


「クラリス、こっちも予定通りいくわよ!!」


「りょーかい!」


「みんな!必ずエメラダと『黒竜(バハムート)』を倒すわよ!!」


「「「おうっ!」」」


 続いてハーティが『白銀の剣』のメンバーに声を抱えると、パーティメンバー達が力強く頷いた。


 そして、早速クラリスが自分の髪をかき分けたあとに広場の空地に向かって手をかざした。


()でよ!『プラタナ』!!」


 クラリスがいつもの決まり文句を言うと、広場の地面から『プラタナ』が出現する。


「ザワザワ・・」


 突如現れた巨大な人工女神(アーク・イルティア)を目の当たりにした人々は一様に驚愕の表情を浮かべていたが、今は緊急事態の上、ここには女神まで存在するのである。


 民衆達にとって、自分達の目の前で至高の女神が実在しているという現実に比べれば、巨大な人工女神(アーク・イルティア)の一つや二つが突如現れても大した出来事ではなかった。


 その為、民衆たちはすぐに気を取り直して、それぞれの役割を果たすために動き出したのであった。


 シュイイイイイン!!


 そして、出現したプラタナにクラリスが乗り込むと、発導機の駆動音を鳴らしながら『プラタナ』が起動した。


「私たちもいくぞ!ニアール!!」


「はい、ナラトス様!!」


 続いてナラトスも人工女神(アーク・イルティア)を出現させるために手をかざした。


()でよ!『メルティーナ』!!」


 そして、クラリスと同じような言葉を言って『メルティーナ』をナラトスの収納魔導から出現させた。


『プラタナ』は小型の発導機が搭載されたクラリスの髪飾りに格納されているが、『メルティーナ』は『邪神』であるナラトスの潤沢なマナを利用して、彼自身の収納魔導に格納されていた。


「ナラトスもそのセリフを言うの?」


 思わずハーティはナラトスへ問いかけた。


「うん?いや・・クラリスが『こういう風に言うのが決まりだから』と言っていたからやってみたのだが・・確か『様式美』だとも言っていたな」


「クラリス・・・」


 そして、ナラトスとニアールも顕現した『メルティーナ』へ乗り込んで行った。


 人工女神(アーク・イルティア)二機の準備が完了すると、『プラタナ』が何もない空間に向けて腕部を伸ばした。


『ホーリーバスターキャノン!!』


 クラリスがコクピットで掛け声をあげると、『プラタナ』の腕の先からクラリスの収納魔導に格納されていた『ホーリーバスターキャノン』が顕現した。


 そして、『プラタナ』は顕現したそれを掴み取ると、使用承諾を得ていた最寄りの家屋の上に砲身の先端を置いた。


 ドガァァン!


『ホーリーバスターキャノン』の自重により、それが置かれた家屋の屋根が一部陥没する。


 そして、『プラタナ』はしっかりと両腕部でそのキャノンを保持した。


『ハーティ!あたしの光魔導スクリーンでも捉えたわ!『ワイバーン』の数は見るからに前回以上よ!・・それに、()()も物凄い速度で迫ってきているわ!』


「クラリス、そこから狙える?」


『大丈夫よ!『プラタナ』の望遠能力も向上したし、キャノンの出力も『魔導収束砲』よりも上がっているから射程は十分!あとはあたしの腕次第ってところかしら』


「クラリスの『ホーリーバスターキャノン』がもし『黒竜(バハムート)』の防御魔導を突破出来なかったらエメラダとの同時討伐は絶望的だわ。あなたにかかっているからよろしくね!」


『まかせなさい!』


 ハーティの言葉にクラリスは力強く答えた。


 ハーティはエメラダと『黒竜(バハムート)』に対峙するにあたって、『黒竜(バハムート)』の強固な防御魔導が、自分たちが作り出した魔導具や魔導で突破できるかどうかを懸念していた。


 それは、もし人工女神(アーク・イルティア)やユナ達が『黒竜(バハムート)』の防御魔導を突破できなければ、結果的にエメラダと『黒竜(バハムート)』の両方をハーティが相手にしないといけないからである。


 その為、エメラダ達が自分達に到達する前に超ロングレンジからの先制攻撃を行って、自分たちの攻撃が有効であるかの確認をしようと考えたのであった。


 その結果が『プラタナ』による『黒竜(バハムート)』の狙撃作戦である。


「クラリスの『ホーリーバスターキャノン』が『黒竜(バハムート)』の防御魔導を突破したのを確認したら、一気に出るわよ。エメラダは私が相手するわ。みんなはその間に『黒竜(バハムート)』を何とかして頂戴!」


「『黒竜(バハムート)』はおそらく『黒の魔導結晶』に操られているだけだと思うから、基本的には無力化の上、『黒の魔導結晶』による影響を浄化する方向で行くわよ」


「「「「了解!」」」」


「エメラダ達の速度を考えると時間がないわね。クラリス!お願いね」


『了解!』


 クラリスはそう言うと、『ホーリーバスターキャノン』から神白銀(プラティウム)ケーブルを引き延ばして、『プラタナ』の胸部にあるコネクタに接続した。


 ガチャコ・・・シュイイイイイン。


 そして、神白銀(プラティウム)ケーブルが発導機からのマナを伝達することにより、白銀色に発光し始めて『ホーリーバスターキャノン』の砲身上部にターゲットポインターを表示する光魔導の画面が表示された。


『エネルギーライン、発導機に直結したわ!『ホーリーバスターキャノン』発射シークェンス開始!!』


 クラリスがケーブルの接続を確認すると、彼女の操作により更に高出力のマナが『ホーリーバスターキャノン』へと供給され始めた。


 ウィーーン・・ウィーン・・ウィン・ウィン・・ウィィウィイウィィ・・・。





 ヴヴヴヴヴヴ・・・。


「『ホーリーバスターキャノン』、発導機からのマナ供給ライン正常動作、一次(テンポラリー)魔導結晶(マナ・キャパシタ)マナ充填率百パーセント!砲身マナ収束(ライフリング)術式正常発動、供給マナの収束開始!収束率三十パーセント・・四十パーセント・・五十・・・」


 クラリスがコクピットの中で発射シークェンスをこなしている間にも、光魔導スクリーンには『黒竜(バハムート)』が凄まじい速度で迫ってくるのが映っていた。


「『プラタナ』による『ホーリーバスターキャノン』軌道演算開始、着弾地点予測完了!魔導測距義により着弾予測地点測量開始・・完了・・測量データに基づき砲身調整、仰角プラスゼロコンマ二、射線角マイナス十五秒!」


 ヴヴヴヴヴヴ・・・。


「落ち着くのよ・・クラリス。あたしの作った魔導具に間違いはないわ・・・!」


 コクピットでクラリスは深呼吸をすると、慎重に『ホーリーバスターキャノン』の照準を合わせた。


 ウィウィウィウィウィウィィィィ!


「収束率九十パーセント・・百パーセント!発射準備完了!照準今!!目標着弾点到達予定時間までカウントスタート!!」


 そして、『プラタナ』は『ホーリーバスターキャノン』のトリガーに指をかける。


「五・・・四・・・三・・・二・・・一・・・『ホーリーバスターキャノン』!!発射!!」


 カチャ!


 ビシュウウウウウウウウウウウウ!


 そして、『プラタナ』がトリガーを引いた瞬間、コクピットの光魔導のスクリーンが白銀色の光で埋め尽くされた。


『あたれぇぇぇぇぇ!!!』


 そして、そこにいた誰もが、遥か彼方へと伸びていく白銀の光条の行く先を目で追った。

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