緊急クエスト依頼
ご丁寧に誤字のご指摘を頂いた方に感謝致します。思った以上に誤字が多くて驚きました。
これからもよろしくお願いいたします。
「あ・・あのー、大丈夫ですか」
とにかく、今の状況のままでいると注目を集めるばかりなので、ハーティは倒れている受付嬢を抱き起こして声をかけた。
「う・・・うーん、はっ!?」
ハーティに声をかけられてようやく気が付いた受付嬢は、すぐさま体を起こすと転倒した椅子を元に戻してからカウンターに座りなおした。
「も、申し訳ありませんでした。あまりにも衝撃的な出来事が続いたのでびっくりしてしまいました!」
「と・・・とにかく、『一級冒険者』である皆様は、通常このような受付広間で並んだりせずに別階の応接室で接待を受けながら、ギルドが選りすぐったクエストから受注するものを選択してもらったり、通常の冒険者では達成困難なクエストを直接指名依頼で受注してもらう、という形をとるんです」
「へえ・・・そうだったんですね。私達最近『一級冒険者』になったばかりなので全然知りませんでした」
「・・・逆に今まで一体どんなクエストをこなしてきたのか気になります・・」
「それは・・まあ・・ははは」
(まさか『王都を救いました』とか『帝都を救いました』とは言えないわよね・・)
とりあえずこれ以上受付嬢を驚かせないように、ハーティは笑って誤魔化すことにした。
「と・・とにかくここではなんですし!ギルドマスターを呼んできます!ちょっとま・・」
「その必要はないぞえ」
その時、受付嬢の言葉を遮るようにハーティ達の耳へ聞き覚えのある声が入ってきた。
その声の方を向くと、少し息を上げたミウが一人の男性を連れて立っていた。
「ミウさん!」
「『白銀の剣』の三人よ、ここにいたのか・・随分探したぞえ」
「そちらの邸に伺ったら、マルコが『お三方はギルドに向かわれました』と言っておったのでな。ギルドマスターと会っているかと思ってやって来てみたら、ギルドマスターに『こちらには来ていない』と言われたのじゃ」
「よもや、こんな一般冒険者の集まる広間で律儀に順番待ちをしていたなんて思うまいて」
すると、ミウの隣に立っていた中年の男が一歩前に出てきて恭しく礼をした。
「お初にお目にかかります、『白銀の剣』の皆様。私、『カームクラン冒険者ギルド』を任されております、『アキト・マツダイラ』と申します。私の事は『アキト』とお気軽にお呼びください」
アキトから挨拶を受けると、ハーティ達も順番に自己紹介を行った。
「さて、自己紹介が終わったところで話を元に戻すのじゃが、わらわ達はそちらに用があって探しておったのじゃ」
「はあ・・どういった要件でしょうか?」
ハーティが尋ねると、アキトが一枚の羊皮紙をハーティへ手渡した。
「実は、当ギルドで現在緊急クエストを依頼しようとしているのです」
「緊急クエスト?」
ハーティは聞きなれない言葉に首を傾げた。
「うむ、先ほど『カームクラン』から北へ五十キロ程離れた山地で『ワイバーン』が大量に発生しているという情報が、見張りの伝令より大統領邸に入ってきたのじゃ」
「そこで、連邦政府はこれに対処すべく、ギルドへ緊急クエストを依頼したのじゃ」
『ワイバーン』は魔獣の中でも最強種に属する『ドラゴン』の亜種で、体長は二、三メートルとさほど大きくはないが、飛行能力を持っており、口から火炎魔導を放つ。
基本的に単体で巣を作る『ドラゴン』と異なり、群れで行動することが殆どで、ひとたび人里に襲い掛かってくると甚大な被害をもたらす、非常に厄介な存在であった。
「『ワイバーン』・・・数はどのくらいですか?」
ユナの質問を聞いたミウとアキトが表情を曇らせる。
そして、アキトが意を決したように話し始めた。
「『ワイバーン』は数年に一度の頻度で大量発生するのですが、その数は五十程度です・・それでも大変な脅威となるのですが、今回はその数が異常なのです」
「見張りの伝令から聞き及んだ話だと、目視で確認するだけでも二百は下らないそうじゃ」
「もしそんな数の『ワイバーン』が『カームクラン』にやって来れば、それによる被害は計り知れぬ・・・」
「『ワイバーン』を討伐するには有効となる対空戦力が必要なのです。ですが、それほどの対空戦力を持つ冒険者は少ない」
「そこでギルドは『二級冒険者』以上の冒険者に緊急クエストを依頼しておるのじゃ。しかし、また間の悪いことに、現在カームクランに滞在している『二級冒険者』パーティはたったの一組しかおらぬ」
「『カームクラン』外周には市街地への進入を防ぐ為、連邦軍の弓矢部隊を備える予定じゃが、それらの射程に到達する頃にはかなり市街地に接近を許してしまう」
「そんな中、まさに現在『カームクラン』で最強の戦力となるそちらへ白羽の矢が立ったのじゃ!」
「『ワイバーン』が二百・・・ちなみに『ワイバーン』の飛ぶ速度ってどのくらいなのかな」
「・・・少なくとも『帝都リスラム』から『カームクラン』まで数時間で飛行できるハーティさんに比べたら止まっているも同然ですね」
「「ファッ!?」」
ユナの呟きを聞いたミウとアキトは声にならない叫び声を上げた。
「ふうん、まあ腹ごしらえも済んだし、一人七十匹くらいやっつけたらいいわけでしょ?だったら早く出発するわよ!今日のメインはマルコ特製の『霜降りオーク肉の鉄板焼き、赤葡萄酒仕立て』よ!夕食までには帰らないと!あたし楽しみにしているんだから!」
「え!?うそ!?じゃあ急がないと!!」
「いや、そちら『ワイバーン』討伐の緊急クエストをピクニックか何かと勘違いしておるのか!??」
「さ・・さすが『一級冒険者』の方は感覚が違いますね」
「そういう次元の話じゃないじゃろう・・」
「なんでよ?『誘導火球魔導を連射する上級防御魔導付き飛行ゴーレム』を相手するよりよっぽどマシじゃない」
「・・なんじゃその物騒な能力を持ったゴーレムは・・・」
「じゃあ、さっそく行くわよ!」
「「おー!」」
掛け声をあげた三人は早速ギルドを飛び出そうとする。
「ち、ちょっと待つのじゃ!まだ条件とか何も話してないじゃろ!?それに『二級冒険者』パーティが一組いると言ったはずなのじゃ。今回はそのパーティとの合同クエストなのじゃ!」
「確かにさっきそんなこと言ってたわね。考えたら『合同クエスト』なんて初めて受けるわね」
「既にそのパーティには説明を終えて正式に受注をしてもらっておる。先ほどこちらに呼んでおいた故、そろそろ来るころなのじゃが・・・」
ミウがそう言いながら受付広間を見渡していると、ハーティ達を遠巻きから眺めていた人垣の中から三人の男女が近づいてきた。
「貴殿達が『一級冒険者』パーティ、『白銀の剣』とお見受けするのでござる!」
その三人の内から、一人の全身黒装束に包まれた男がハーティ達に声をかけてきた。




