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転生女神は自分が創造した世界で平穏に暮らしたい  作者: RYUJIN
第三章 商業国家アーティナイ連邦編
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ミウとの会談

ついに100話を達成しました!皆様の応援を心より感謝します!

 ハーティ達の目の前で執務をしていたシノサキ大統領は、その肩書きに釣り合わないほど若い容姿であり、見た目だけで言えばハーティやユナと同世代といっても過言ではない程であった。


 髪と瞳の色は薄紫色であり、目はややつり上がっているが大きくて顔立ち全体はあどけない感じである。


 その艶やかで美しいストレートヘアをハーフアップにしており、白色の生地に魔導銀(ミスリル)糸を用いた見事な意匠の刺繍が散りばめられた、見るからに仕立ての良い着物を身に纏っていた。


 そんなシノサキ大統領は、ハーティ達の視線を感じると手に持っていた筆を(すずり)に置いて顔を上げた。


 それを見て、ミウの前に立っていた三人はすぐさま跪こうとする。


「あー、よいよい。そちらの国では代表という人間は君主という形で身分が高いのかもしれぬが、この『アーティナイ連邦』は一応共和制を取っておってな。わらわも選挙によって選ばれた人間なのじゃ。だから跪く必要はないぞえ」


「どれ、隣に応接間がある故、そちらに移ろうではないか」


「は・・はあ」


 ハーティ達はミウに促されると隣の応接間へと移動した。


 応接間に置いてある机やテーブルは、シノサキ大統領が執務に使っているものと同等程度のもので非常に精巧で豪華な造りであった。


 そして、応接間には見事な掛け軸や美しい陶器の大皿がシンプルに飾られており、部屋全体が非常に洗練されたものとなっていた。


 そして開け放たれた障子の向こうは美しい和風庭園が広がっていた。


「どうぞ、そちらに腰かけるがよい」


 シノサキ大統領に促されて、三人は彼女の向かいに腰かける形となる。


「まずは自己紹介からじゃな。わらわは名を『ミウ・シノサキ』と言う。現在『カームクラン民族』を統治しているシノサキ家の者じゃ。こんな肩書きをしておるが、わらわも所詮は二十歳の小娘。それほど肩肘を張らなくて良いぞえ」


「では、次は私たちですね。私は『ハーティ』と言います。出身は『神聖イルティア王国』で先日十六歳になったばかりです。一応今は『魔導帝国オルテアガ』の『帝都リスラム』冒険者ギルドに登録されている『一級冒険者』です」


「私は『ユナ』と言います。私も『神聖イルティア王国』出身の人間で二十一歳です。今はハーティさんと同じ『白銀の剣』と言うパーティで冒険者をしています」


「あたしは『クラリス・フォン・レゾニア』です。一応『魔導帝国オルテアガ』ではレゾニア男爵家の令嬢という身分です。ちなみに、閣下とはひとつ違いの十九歳ですね」


「あたしも帝国でいろいろあって、ハーティ達の冒険者パーティに参加して一緒に旅をすることになった者です。ちなみに、あたしも帝国で『一級冒険者』の称号を賜りました」


「ほう、『レゾニア男爵家』とな。我が国でも『レゾニア商会』は魔導具分野で一番輸入取引高の大きい商会であるぞ」


「我が家をご存知頂いて光栄です」


 全員の自己紹介が一通り終わると、着物姿の給仕らしき女性がお盆に乗せた飲み物を机の上に並べた。


 それを見たハーティは思わず首を傾げる。


「こんな緑色をした飲み物は見たことがないですね」


「ああ、それは『緑茶』と言ってな、我ら『カームクラン民族』が昔から愛飲しているお茶なのじゃ。まあ、言わばそちらの『紅茶』みたいなものじゃな。このアーティナイ連邦は四つの民族による自治区の連邦政府なのじゃが、飲み物一つにとっても民族ごとにそれぞれこのように違った特色のお茶が好まれているのじゃ」


「なるほど・・・」


「まあ、初めて飲む者にとっては渋みを感じて好みが分かれるかもしれぬが、我々にとってはこれが一番好まれるのでな。今はないが甘い茶菓子ともよく合うのじゃぞ」


「そうなんですね・・コク・・私は結構好きかもです」


「そう言ってもらえて何よりじゃ。さて、ではそろそろ本題に入ろうかの」


「そうでしたね。では、こちらがオルクス皇帝陛下より預かった親書です」


「うむ、今まで帝国から親書が送られることなど滅多となかったのじゃが・・何やらやんごとなき事情があるのかの」


 ミウはハーティから親書を受け取ると、無言でそれに目を通した。


「なんと・・・」


 そしてその内容を見て驚きの言葉を漏らしていた。


「『邪神』・・が復活・・『黒の魔導結晶』・・・『邪神デスティウルス』復活の阻止・・」


 親書の内容を辿るようにぶつぶつと単語を連ねていたミウが文章の最後に差し掛かる頃に突然視線をハーティへと向ける。


 そして、その瞬間にミウは目を見開いて口をパクパクとさせた。


「女神・・・ハーティル・・ティア・・・・様」


「あの・・・どうかされましたか?」


「ひ・・ひぃぃぃぃ!」


 ミウの様子を心配してハーティが声をかけた瞬間、ミウは慌てて座椅子から飛び退いて畳の上で平伏し始めた。


「もも申し訳ございませぬ!あなた様がめめめ女神ハーティルティア様とは存じ上げず大変失礼な態度をしてしまいましたのじゃ!!」


「え・・・いや、あの・・」


「おそらくオルクス皇帝陛下の親書にハーティさんの正体についても書かれていたのでしょう」


「そういえば『カームクラン民族』って『女神教』について『神道』という独自の宗派で信仰しているってあたしのお父様が言っていたわ」


「・・・くっ!こんな東の果てまで『女神教』が伝わっているなんて!」


「最近『女神教』を信仰していなかった帝国民も()()したしね・・もう諦めなさいよ」


「嫌よ!」


「と、とにかくシノサキ大統領・・私はもう転生してかつての『女神』とは別の人物なんです。そんなに畏まらないでください」


「い、いえ!!そんな『シノサキ大統領』などと!わらわのことは『ミウ』と呼び捨てで結構ですのじゃ!」


「いや・・まがりなりにも国家の代表に対してそれは・・」


「お願いですのじゃ!わらわの『シノサキ家』は歴史ある家で『神道』を深く崇拝しておりますのじゃ!もしハーティルティア様に『大統領』などと呼ばせているのが父上にバレたら勘当されますのじゃ!」


「ええ・・・・」


「じゃ・・じゃあミウさま・・・」


「呼び捨てで!」


「で・・ではミウさんで!それ以上は譲れません!」


「で・・できればその敬語もやめてほしいのですじゃ・・畏れ多すぎますのじゃ・・」


「・・でしたら私たちに敬語を使うのもやめてください。じゃないとうっかりつられて『ミウ様』と・・」


「わかりまし・・わかったのじゃ!!なのでお願いなのじゃ!」


 ミウはハーティに畏まられるのを本気で嫌がっている様子であった。


「はあ・・・わかったわ。私のパーティメンバーも同じような対応でいいかしら?」


「『白銀の剣』は『邪神』から世界を救う為にハーティルティア様と供に旅をする勇者達のパーティなのであろう?であればなおの事わらわに畏まらんでほしいのじゃ。わらわも同じように対応するのじゃ」


 それから、ミウはおずおずとハーティのことを上目使いで見た。


「・・親書にはオルクス皇帝陛下より『くれぐれも女神ハーティルティア様の正体を公表しないように』とあったのじゃ。それがハーティルティア様の希望でもあるのじゃろ?なのでわらわはハーティルティア様のことを『ハーティさん』と呼びたいのじゃが・・」


「ええ、私からもそう呼んでもらうことを願うわ」


「・・本当は非常に畏れ多いのだが致し方あるまい」


 ミウはため息を漏らしながら愚痴を言うと、居住まいを正した。


「・・しかしあのオルクス皇帝が親書を寄越してくるわけじゃ。この内容が真のことであれば、今この世界はかつてない危機に晒されておるの」


「であるからして、我々人間社会は今こそ()()()()()()()()()と言うことなのじゃな」


「皇帝は『神聖イルティア王国』とも本格的な同盟を結ぶと書いてあったの。であれば、我々アーティナイ連邦としては全力でそちらの望むことを援助しなければならぬな」


 そう言いながら、ミウは腕を組んで背もたれに体を預けた。



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