第9節 お部屋探し、一等地、高層マンション見晴よし
さて、貴賓室が性に合わない賢者様
独りでゆっくり自分らしくしたいのですが、どうなることやら。
何しろ総督府があるところですから、前世でいえば、丸の内に住んでいるような感じですよね・・・
さて、お部屋見つかるのでしょうか・・・
俺は、お昼ご飯を貴賓室のテーブルで食べていた。なんかステーキだ。正直なところ、ステーキは口に合わぬ。レアなんて気持ち悪くなる。きっと肉食獣ではないんだろう。
前世では、草食男子に分類された。いや、草食男子どころか、無色男子だったかな。
無色男子というのは、俺が自嘲気味に名乗ってただけだが。無色とは、個性がなく、背景に溶け込むような透過性が高い空気のような男子のことだ。しかも、無職と韻を踏んでいるのだよ。何しろ俺はライムスターだったからね。誰だ?駄洒落とか、おじさんギャグとか言う奴は・・・おっと、少しフラッシュバック気味かな。今のは幻聴だろう。ここんところ高ストレスだったから。
そうそう、ステーキを食べてたんだ。お子ちゃまとか言われるけど、俺はハンバーグのほうが好きだ。いや、大好きだ。いや、だいだいだい大好きだ。ハンバーグって、タルタルステーキが元と聞いたが、元はヨーロッパ料理ではないらしい。ということは、ここにはない可能性が高い。
ハンバーグ食べたいなぁ。あれ、俺、死んだんだよね。思い出した。最後の千円で、ラーメン食べようか、母に会いに行くか、迷っていたんだ。ということは、ラーメン食べてないじゃんか。無念じゃ・・・
ま、仕方ないけどね。あれって中国料理の変化したやつだから、イタリアっぽいここじゃ食べられないじゃん。どっちもなければ作るしかない・・・
無理に残りの肉を飲み込むと、丁度アントニオがやってきた。
「賢者様、まずはお部屋探しと行きますか。総督府的には、なるべくこの広場に面したところがいいのですが、ここらはボビーノの一等地ですからね〜」
「高いのは無理。お金ないし」
「今日底なし沼、石で埋めて頂いたじゃないですか。予算1000万ノブタ取ってましたので、石を入れていただいた分で、200万ノブタほどお礼としてお支払したいかと思うのですが・・・いかがでしょうか」
俺の目に¥マークが浮かんだことだろう・・・貨幣単位がわからないなぁ・・・ステイタスを開いてみた。あれ、そういえば、お金とかいくらあるのかな・・・どこだ、数字とGって書いてあるとこ。あ、そうか。ゲームだとついGでゴールドだと思ってしまうから、きっと違うな。
えっと、これは、どうやら体力かな・・・長細い四角い枠からすこし下がってきてるみたいだし、まてよ。残ってるパンも食べてみて・・・おおお、これだ、パンを食べたらゲージが伸びたぞ。眠ると戻るかどうかもテストしてみるか。
「あの、賢者さま?」
あ、アントニオのこと忘れてた。
「すまん。ちっと考えていたのでな。アントニオよ、わしには嘘偽りなく申せ」
「は、はい」
「それなんかおかしくないか」
アントニオは蒼白になって、あたふたしてきた。
「実は1000万ノブタの予算から半分を宴会に使ってしまいまして、500万しか残ってないのです。今年の予算では、合戦する予定をくみこんでなんかいなかったので・・・」
「あのさ、戦費なかったの?せめてヘルメット買うとかさ・・・弓矢を増産するとか・・・だから寄せ集めの雑兵だったのか?」
「申し訳ございません。当初から戦に勝てるだなんて思ってなかったので、最初から埋め立て予算を流用した宴会で、王子を誤魔化そうと思ってました・・・」
おいおい、それ早くゆってよ~。なんか前世で見たCMみたいだな。ま、俺テレビ持ってなかったからね。ワンセグもついてないガラケーだったからね。
でもさ、なんか公共放送ですとかいって、高い金とろうとかしている奴らには良い対策だったな。ま、部屋に入ればテレビないのわかるし、ネット環境があればってゴニョゴニョいわれても、網なんか部屋にないですよっていうと、呆れて退散するしね。
「まぁよかろう。少ない予算で頑張っておるな。わしへの支払いはいらぬぞ」
「え、本当ですか?」
おいおい、アントーニオ。顔輝いてるぞ。
「今夜の祝勝会も中止だ」
もっと顔輝いてきた。どんだけ金ないんだ。
「助かりますぅ~」
またキャラチェンしたぞ・・・
「では、顧問料として、この広場に面します、総督府の所有の建物の一部屋を無料でお貸しいたしたいのですが・・・今から一緒にご覧になっていただけますか?ちょっと狭いかもですが、眺めがいいんですよ」
なんかいい話だな・・・ステイタスのお金どこにあるのかわかんないから、いいかもね。俺は即答した。
「うむ、よきにはからえ~」
「はは~」平伏するアントニオだった。
それから俺たちは総督府をでて、神殿を横目にみながらまっすぐあるいた。広場の長方形の短辺に並んで建っているのが、総督府と神殿だ。おれは巫女様を想像しながら、でも正面をむいて、巫女様に関心がないような感じで、歩いていた。アントニオが余計なことをいう。
「賢者様、どうされたのですか?超右横目ですよ。前を見て頂かないと転びます」
あ、言っちゃだめん。聴こえたらどうするの???
「ほんとですわ、賢者様はまっすぐ前をみてくださいね」
このかわいい声は・・・しまった、巫女様が外にいたのか・・・俺の超右横目見られてしまった・・・はずいよ~、なんかさ、俺下心というか、エロな感じ、満載みたいじゃん・・・えっといつもの手でいこう・・・
「昔な、優秀な傭兵隊長がいて、そのものの真似をして練習してるのじゃ、視界を広げるための訓練じゃよ。どの方角から攻撃されても視界が広いものは、全戦全勝じゃからな。よし今度は反対側じゃ」
俺は神殿側ではない広場側を、超左横目でみた。正面から見ると、目玉はほとんど見えないだろうな・・・視界を広げるというより、無くなるかも・・・いてて、また目が筋肉痛だ・・・
「例の赤子の母親見つかりましたよ。お帰りに神殿にお立ちよりくださいませ」
「うむむぅ~よきにはからえ~」
なんか意味あるのかなこのセリフ・・・賢者っぽいと思ってたけど、もしかしてすごく馬鹿っぽいかも。いや、巫女様は平伏している。大丈夫かな・・・
巫女様、有能だよ・・・こんな人が秘書だったらなぁ。アントニオと交換したいよ・・・
アントニオは広場の角の建物の前で、こっちこっちと手招きしてる。
アントニオは建物の正面からは入らず、建物の裏側に回った。石造りの立派な建物だ。俺は期待してしまった。石造りというだけで、俺の住んでいた、築60年の新大久保のアパートよりはいいのではないか。
彼は裏口みたいなドアを開けて、どんどん上がっていった。うは~疲れる、エレベーター無で5階なの?え、さらに上?急に階段が狭くなった。しかも螺旋階段になった。
「こちらです。最上階で、広場に向いてる部屋ですので、見晴しいいですよ・・・窓があればですが・・・」
確かに小さく開いた明り取りから神殿の屋根が見える。これは眺めは期待でき・・・あれ、今なんか言ってたよね・・・ま、見ればわかるか・・・いや窓があればといってたのではないか・・・
「なにー! 窓がないとな・・・それでは真っ暗ではないか」
「はい、なにしろタダでございます」
「えええええ。そういう問題じゃないじゃろ」
「いやでも、窓はないのですが、トップライトがあるので明るいですよ」
なんだ、最初からそういえよ。この馬鹿チンが。心の中で毒づいてしまった。
「ドアには外からカギもかかりますし、天井はななめでおしゃれですよ~」
ちょっ、ちょまてよ・・・久しぶりにキムタクの真似しちまった。
カギってさ、外からの南京錠じゃん。内側からかかるの?え、ありませんって?ドアに汚い字でさ、持ちだし禁止とか書いてない?え、泥棒よけだって?屋根裏倉庫じゃないの?
「でも賢者様、タダですから」
ニコニコすんなよ。アントニオ!と心の中心で不満を叫んだ俺だった。
「じゃ、お気に召しましたら、ベッドを持ってきますね」
布団ならわかるけど、ベッドって、あの狭い階段上がれるのかな・・・
やはり、ベッドは運びこめなかった。俺は木をもらって、すのこを作ったよ・・・
なんか前世より酷くなってない?くそー貧乏神のやろう・・・
いかがでしたか?
新大久保にお住まいの方には失礼しました。
時々お邪魔しますが、いい街です。
今度改定の際は、街の名前を変えたほうがいいかもですね。
次回は、貧乏子ちゃんと、お母さんに会いにいきます。