第7節 貧乏神子ちゃんを探して・・・
自分へのご褒美が欲しかったチュチュム様。
寂しくなってしまいました。
でも、思い出さないと・・・女神さまのお願いを・・・
我に返った・・・
まだ俺は総督府2階のバルコニーにいた。
忘れてたよ。あの貧乏神のやろう・・・探さねば・・・
まだ、総督は隣に待機していた。そうだ、彼はこの街の実力者だ。協力をお願いしよう。
おれは、巨匠オーラというか、大物風に総督に言おうと思った。
「アントーニオ?」
総督は答えた。
「賢者様、仰せのままに」
おおおお、さっきの臭いけど輝く鎧をあげたのが効いてるのかな・・・
「実は頼みがある・・・」
「なんなりとお申し付けくださいませ」
おお、いいね、下僕感あるよ・・・褒めてあげたい。俺、前世ではずっと下僕だったので、なんか純粋にうれしい。しかも、名前と苗字の間にデとかドがつくとか、貴族じゃん。おれなんか貧乏神のせいで、生涯というか、今生でも貴族とか金持ちに縁がなさそうだ。チュチュムだぜ・・・ミヤモティだぜ・・・宮本家の進とか貴族感ないよね・・・
アントニオがずっとすたんばっているので、声を掛けた。
「楽にしてよいぞ、アントニオ。実は折り入って相談があるのじゃ」
実は何も考えてなかったのだが、今必死こいて文脈をつないでる。ふと神託の巫女さまの顔を思い出した。命の女神に仕えていると、似てくるのかな・・・
「はっ」
アントニオ、ありがとう。君に会えてよかったよ。
「実は、わしがボビーノを選んだのは、もちろん命の女神さまからの依頼があったからだが・・・実はほかにもあったのじゃ」
アントニオが微妙な顔で見つめてくる。
「おほん!・・・実はな、わしの後継者たるべくして生を授かるものが、昨日、この近くで生まれたようなのじゃ」
アントニオは「なんですとー」みたいな顔をしてる。俺は続けた。
「わしの力はおぬしも知っておろう・・・この力を継ぐ器をもつ赤子が昨日生まれたようなのだ。して、その子は女子なのだ。わしはその子を探し、育み、わしの後継者として立派な賢者となるよう、数多の神々より、命ぜられることとなったのだよ・・・」
「して、その子の名前はなんと申すのですか?」
それがわかればね・・・苦労しないのよ・・・
「それはわからぬ。わかることは、わしが出現したころとほぼ同時刻に生まれたということだけじゃ」
ぬぐぐぐぐって感じでアントニオが力んでいる。なに、その力み。
「実は、昨日、私の妻が4人目の子を出産しましたが・・・」
なになになに・・・もしかして、もうゴール?おれってラッキーマン?
「男でしたぁ・・・」
がっくり来たぜ・・・アントニオってバカ?・・・今俺、女の子っていったよね。あ、そうか自分の子が賢者の後継者だったらと思ったのか・・・
俺が・・・「ああああ、アントニオにはがっかりだよ」ってオーラを出していることに気づいたようで、彼は巻き返しにきたようだ。
「この都市では、赤子は宝ですので、高貴な家柄の子も、貧しい貧民の子も等しく、命の女神さまの神殿で、出産することが義務付けられています」
え、ちょっと、アントニオその続きがすぐ聴きたいんですけど。
「昨日、私の妻以外に主産したのは、父親のわからぬ、ど貧民の女だけでした」
「なんだって?」
「いや、だから賢者さま、そのままですから・・・」
いきなりビンゴかよ・・・おれって、ラッキーマンじゃないの?
「ちょっとちょっとちょっと~、すぐいこ。女神の神殿。いっちゃうよ。あの神託の巫女様のところでしょう?」キャラ違うがそんなこといってられない。
「いかにも・・・では、まいりましょうぞ」
俺は言われるまでもなく、すでに走りだしていた。
「賢者さま~まっ、まって、お待ちくださ~い」アントニオが追いかけてきた。
総督府と命の女神さまの神殿は隣なんだよね。
俺の心は高鳴っていた。あれ、おかしくね?見つかってもどうすれがいいのだろう。
あれこれ考えているうちに、女神の神殿についてしまった。だって隣だもん。
私たちがドタバタとすごい勢いで神殿に入ってきたので、巫女様に怒られてしまった。
「賢者様ともあろうものが、そんなことでどうするのです」
うは、マジ怒ってる。まいったな。
でもさ、かわいい。怒ってもかわいいってどうよ・・・俺は、怒られた犬のようにうなだれた。
「ご、ごめんなさい・・・」
「いいんですよ。賢者さまは。私は総督に怒っているのです」
あちゃーでたよ。俺って特別扱い?
前世との違いに戸惑うよ。怒ってもらえるのっていいよ・・・
無視とかスルーされるのが一番つらいからね。
巫女様に事情を説明し、産婦さんのところに案内してもらった。
総督がこっちですって招いてるけど、無視した。そっちは君の奥さんでしょ?俺は用ないから・・・あ、拗ねてる、アントニオ。石がないのに石をける真似とか、どこでみたんだ?
「わかった、わかった。後で行くから、嫁に鎧を見せながら、まっておれ」
アントニオの顔が、ぱぁと輝いた。
「賢者様、こちらでございます」
俺は巫女様の後ろについていく。う、うしろ姿が綺麗・・・
「賢者様、今なんか変なこと考えてませんでしたか?」
う、ばれてる。
なんだか、神殿の裏手にある、粗末な小屋に連れて行かれた。小屋の扉をあけると、何人かの妊婦さんや、赤ちゃんを抱きながらねている何人かがベッドに寝ていた。
「賢者様、驚かれましたでしょう・・・これでも、ベッドを導入できたので、衛生面でも女性たちの健康面もよくなってきたんですよ。神殿も寄付でなりたっておりますので、思うように経営ができませぬ」
アントニオのところは貴族だから特別待遇だそうだ。昨夜の貴賓室みたいなものだな。この小屋は、部屋が足りないので付け足されたものらしい。聴くところによると、先代の巫女長が始めたらしい。出産でなくなるものや、子供を捨ててしまうものが多かったので、命の尊さや命を生む女性の素晴らしさを信条とする命の女神の神殿として、始めた慈善事業だそうだ。死亡率や捨て子率も下がったらしい。是非続けてもらいたいものだ。女神さま喜ぶぞ~
「さて、昨日生まれた女の子はおるか?」
巫女様が、案内してくれた。まだ巫女様には詳しい話はしていない。
「あ、その子なら今朝退院しましたよ・・・一応些少ですが、お金がかかるので、払えないらしくて・・・あとで必ず返しますと書置きがあったそうです」
「なに、そんなに貧しいのか・・・」
「お世話をしている巫女からききましたが、苦しいようですね・・・未婚の母だそうです。というか、父親が亡くなってから身ごもっていることに気づいたそうです。頼れる実家もなく、夫の実家は知らん顔をしているらしいですよ。実際結婚する前に亡くなったそうですし、交際にも反対してたらしいです」
なんだ、貧乏神。今生でも貧乏パワー全開してるじゃないか・・・俺は巫女様にその親子を探している事情を話した。すごく驚いてた。すぐにその逃げた母親と赤ちゃんに連絡を取ってみるって約束してくれた。
帰りにアントニオの奥さんのところに寄った。奥さんというより、貴族の奥方様って感じで上品だった。こっちが気おくれするよ。赤ちゃん抱いてくれてといわれて、抱っこしたが、壊れそうで怖かったよ。あれ、これってもしかして前世で、関取に抱っこしてくれっていうのと同じなのか?
丁度、息子のミヤモティがママのところに遊びに来ていて、俺は、すごい人気者になった。なんか俳優というか、ヒーローものの役者のような感じの歓迎だった。
「ミヤモティ様、うちに遊びにきてください」うるうる瞳で懇願されてしまった。お父さんのアントニオも同じ目で訴えてくる。
「うむ、よきにはからえ~」
おお、生よきにはかれえだって喜んでる。俺は部屋を出て、アントニオに話しかけた。
「相談なんだが・・・」
「はい、なんなりと」
「部屋を借りたいんだが、どこか貸間はないか?わしひとりだから、狭くていい。お金はあとで払うので・・・」
「あのお部屋がお気に召しませんか?」
「いや違うのじゃ、わしは賢者じゃ。よい暮らしは必要とせぬ。贅沢はむしろ賢者としての力を奪ってしまうのだ」
「さすがでございます。わかりました。明日の決戦のあと、物件探しに参りましょうぞ」
うあ、今夜もあの豪華セットで寝るのか・・・さっきの力云々はもちろん嘘だ。落ち着かないんだよね・・・だから寝れない・・・体力回復しない・・・まぁ強ち嘘でもないか。
いかがでしたか?
次回は、いよいよ決戦2国めです。
朝から大変な騒ぎが起きますよ~
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