第11節 商売の神様がやってきた
すみません。更新に時間がかかってしまいました。
商売の神様がやってきました。この世界では貧乏神がいないらしいです。
商売繁盛と貧乏神は相対する勢力なのではないでしょうか・・・
チュチュム様は一応人間ですから心配です。
まいった。ノープランだ。
俺はそう呟やきながら、自分の部屋への階段を上っていった。
必ず勝つなんて大見得を切ったけど、本当無策なんだよな・・・やはり研究されているんだろうな・・・弱点とか・・・
最後の螺旋階段を上って、南京錠をカギであけた。あれ、俺のベッド・・・いやすのこの上に布団なので、ベッドといえないけど、俺は一応ベッドとよんでいる。
その俺のベッドの上に土足で脂ぎらぎらの男が立っていた。首に太い金の鎖をつけている。成金ちっくだ。俺の苦手なタイプだよ・・・
「あの・・・土足なんですけど」
「あ、まいど。そんなこと気にしたらだめですよ。賢者様は大物なんだから」
なんだこいつ、ていうか、カギかけていたよね。自慢じゃないが、俺の部屋は内側からはカギがかからないんだからな・・・なんで居るんだ?
「あの・・・どうやって入ったんですか?」
俺はどうしても金回りの良さそうな奴には弱いんだよな・・・
「あ、そこですかぁ。わしメルカト言います。一応、神やらしてもらってます」
「あ、神様でしたか・・・もしかして時間止めてますか?・・・で、何の用ですか?」
なんだかな、人の家というか倉庫に土足で踏み込んで、しかもベッドに土足かよ・・・神様かもしれないが、無神経にもほどがあるよ。
「すみません。時間は止めてませんよ。あと、こんなとこで立ち話もなんなんで、カフェでコーヒーでも飲みませんか?」
こんなとこでも、俺の部屋なんだけど・・・つくづく気に障る神様だ。
とりあえず、階段を降りようとしたら、神様がぶつぶついって、次の瞬間、広場に面したカフェのテーブルに座っていた。うわ、驚いたぜ・・・脂ぎっても神なんだな・・・凄い。
「いやーそれほどでも~あんさんの収奪というか有無を言わせぬ借金とりたてのような神業には、まけます」
なんだかんだ腹立つな、誉めてないよね。心を読むみたいだから気を付けないと。
カフェの人がやってきたので、コーヒーを二つ頼んだ。カフェの人には神様が見えないので、不思議な顔をしてた。
コーヒーが出てきた。お金払ってくれって。しまった。お金なかったんだ・・・ていうか国家予算以上の借金だらけだったんだ。困った・・・
「ここはワシが払いますよって、いいから、いいから」
メルカトさんが手を振ると銅貨が出てきた。急に出現したコインに店員さんが驚いている。さすが賢者様ですねとか言われてもね・・・
「ごちそうになります」
急に機嫌をよくした俺って、メシ奢ってくれる人には前世から弱いのよ・・・
「で、メルカト様はどういったご用件ですか」
「わたし、明後日、ボビーノと戦う国の神なんですよ。あんさんに、相談があるんですわ」
おや、これはまずいな。絶対勝つなんて言っちゃってるから・・・探られないようにしないとな。
「いあ、勝ち負けはどうでもいいんです。ワシとしては、金が儲かるかどうかが重要なんで。戦争をすると、人が死んだりはしますが、武器も食べ物もよく売れるんですわ・・・しかし、戦争は再生産性がないんですよ。武器屋は喜びますけどね・・・だから死の商人って言われるんですな」
メルカト様は、一時的に儲かるのは商売の神として、短期的にグッドだが、中長期的にはバッドだそうだ。なるほど、一理あるな・・・
「戦の神さんは、どうでもいいんでしょうけどね。うちらの領分ではあかんのですわ」
なんか、落ち込んでるのか?メルカト様は、意外といい神様なのかもな・・・メルカト様はコーヒーを飲んだ。カップ浮いて見えるのかな・・・僕もコーヒーを飲んだ、美味しい・・・あれ、メルカト様、沢山お砂糖入れだしたよ・・・それ入れすぎじゃないの?俺の考えに気づいたようで、
「甘党なんですよ。しかもタダなもんは、とことん使わないと・・・」
メルカト様は、話を戻した。基本的に人は死なないほうがいいとは言ってる。経済活動をずっと続けたほうが市場としてはプラスらしい。だから、殺さないで奪うだけという、チュチュムのやり方が好きだそうだ。鎧を奪われた国では、新しい鎧のために、皆一生懸命働いて仕事して、逆に経済が活発になってきているらしい。取れない鎧を開発しようとか考えているらしいが、メルカト様は、神の力を理解してない人間に呆れているそうだ。俺の力をなめたら大変だって。
「あんさん、その気になったら命も奪えるでしょ?それをやらないのは、命の女神さまに好かれたいと思ってる・・・いや、冗談、冗談。でもね、命ホイホイなんてあんさんが唱えたら、みんな死んじゃうますわ。その時は死神はんが、喜ぶでしょうけど・・・」
最近、神界では、他所の世界からの神の侵入に戦々恐々としているらしい。規格外の力を持ちながら人の体で、たとえ死んでもどうなるかわからない・・・つまり、そのまま霊的な存在となって、神としてその力を宿したまま残るかもしれない・・・そうなると猶更やっかいだ。性格も能力もすべて未知数だから、味方にするか、敵にするか、様子見しているらしい。
神同士が争うなんてすごいことになりそうだなって思っているとメルカト様が答えてくれた。
「死神と、命の女神は、敵同士です。戦の神と平和の神も争ってます。わかり易いでしょう?でもね、この組み合わせでは力が拮抗するようになっているんです。死神の力が強すぎると人が滅んで、神の仕事もなくなるし、戦ばかりでも人が滅んで、神の仕事がなくなるわけですよ。だから、本気の殴り合いをしてるわけではない。でも、あんさんが絡んでくるとそうはいかなくなる・・・下手をすりゃ、世界そのものが滅ぶかもしれない・・・」
確かに拮抗してないとそうなりそうだよ・・・、でも、メルカトさんの意図というか真意はなんなんだろう?俺に何を要求してるのか?
「あはは、最初から言えばよかったですね。簡単なことなんですよ。あんさんが徴収した鎧とか武器を売ってほしいんですよ」
「メルカト様にですか?」
「いやいや、臭い鎧とか、ばい菌いっぱいの籠手とか要りませんよ。ボビーノの商人に命じて、取り上げた国でないところに持って行って売らせるんです。元手がほとんどかからないから、輸送費と人件費だけ。利益だらけじゃないですか。安く売れば沢山さばけるでしょ?儲かりますよ~。一定の割合で、上納金を受け取れば、あんさんも借金減らせますよ。没収されたらどうするかって?いや、敵対したら賢者様の呪いですべて消えるとか言えばいいんです」
いい話じゃないか・・・信じていいのかな・・・どうしてメルカト様は・・・すると、メルカト様はニヤニヤしながら続けた。
「ワシなりのあんさんとの付き合い方を探りたいわけですよ。敵にはならず、むしろ互恵関係を築く。あんさんが今考えた、ういんういんってやつですわ」
それを言うならWin-Winです。あ、そうか、さっき、階段を上るときに、お金の心配してたのを読まれたか。
「メルカト様、お話はわかりました。で、あなたの国はどうされたいのですか」
「それがわかれば苦労しないのですわ。時の神様や、運命の神様がどう動くか・・・わたしら神の力はすべての国々に及ぶのです。商売というか、市場の神のワシと専属契約してる国に神殿おいてもらってますけど、命の神や死神の小さな神殿もありますからね・・・まぁ、明後日の戦のあとにでも、この話を思い出して、商売繁盛に結び付けていただければ、市場の神としては、オッケーなんですわ」
わかりましたと俺が答えると、すごい甘いコーヒーを残してメルカト様は消えた。砂糖が沈殿してるよ・・・これじゃ、俺の評判が落ちるじゃん。せっかく入れてくれたコーヒーなのに・・・
俺は残ったコーヒーを飲みほした。口の中がお砂糖でいっぱいになった。うは、糖尿病になっちゃうぜ。
なんだかいつも貧乏くじ引かされる気がしてきた・・・とりあえず、気を取り直して、俺は部屋に戻った。
お読みいただきまして、ありがとうございました。
神聖祓魔師が結構大変で、、時間が足りません。
すこし更新ペースが落ちますが続けていきたいので、よろしくお願いします。