第10節 貧乏神子ちゃん、会えたね・・・
お部屋探しの次は、貧乏神子ちゃん探しです。
窓のない部屋、でもタダだから・・・屋根裏の倉庫、でもタダだからね・・・俺は、部屋を出て、すぐ側の神殿に向かった。
神殿の入り口にいくと、巫女様が待ってた・・・いや違うよ。女神さまだった。似てるね二人は。女神さまは俺を見ると微笑んでくれた。
「賢者様。質問があるのでしょう?」
「さすが女神さまですね・・・」
「うふふ、ちょっと時間止めますよ」
俺は早速女神さまにステイタスのお金表示の場所とか使い方を訪ねた。
「女神さま、お金はどこに示されているのでしょう・・・」
女神さまによると、俺がヒットポイントのゲージと思っていたのは、貧乏ゲージだった。なんじゃそりゃ・・・おかしいよ。パンを食べたら増えたじゃん・・・
「賢者様、パンを食べた瞬間にヒットポイントが増えるほど人の代謝は早くないですよ」
そうか、それもそうだな・・・何となく納得した。
女神さまによると、なんだか俺の場合、人の幸せとか吸い取ると、もしくは人を不幸にすると、それがポイントとなり、それが加算され、ゲージが右の枠内で振り切れると、貧乏神パワーのレベルが上がるらしい。
なんか酷いよ・・・そうでなくても規格外なのに、どうするのよ・・・
前世の貧乏神みてるとさ、自分自身もすごい貧乏だったじゃん。ということは、俺が規格外のパワーを発揮すると、もっと貧乏になっちゃうんじゃないの?レベルあげないほうが幸せじゃないのか・・・
さらに女神さまが話す内容だと、レベルがあがると、さらに吸える品物の量とか大きさとかアップするらしい。え?、もしかして攻城兵器も吸えちゃうかも。で、肝心のお金だけど、ノブタっていうのは、レプタ銅貨の上の貨幣で銀貨だそうだ。で、さすが貧乏神、お金も吸えちゃうんだって、お金の表示は、違うところにあるらしく、ステータスを出して目で押しながら左に滑らすと、出た出た。すごい金額だ・・・ゼロがいくつあるのかわからないぞ。えっと単位はレプタ銅貨じゃん・・・単位変えられないのかな。また目力総動員だ。
うーん。できない・・
「あら、目で押しながら瞬きダブルクリックよ」
「女神さま。ありがとうございます」
えっと、ノブタになったけど、ゼロがえっと、目をパチパチしたら、また表示がかわっちまった。ゴフタって・・・金貨か・・・なんかすごいことになってるな・・・
あ、そうか、2度の戦いで、2000人ぐらいから財布を巻き上げたんだからか。これは恨まれてるよね。
「じゃ、またね~」
女神さまがいっちまった。アントニオが後ろから歩いてきて、俺にぶつかりそうになった。
「賢者様、いきなりとまらないでくださいよ~」
「ああ、すまんすまん。ところでアントニオ、3200ゴフタってどれくらい?」
「え?金貨ですか、ボビーノの年間予算が100ゴフタぐらいですから、凄い金額ですよ」
「ふーん、そうなんだぁ」
俺の脚はがたがた震えている。どうしてこんなにあるんだろう・・・いくら2千人から巻き上げたとしても多すぎないか?謎だ・・・でも教えてくれる人いないよ・・・
まてよ、ちょっと見てみるか・・・えっと、やっぱり3200だよね。む、なんか3200の前に記号がついている、〇か・・・
「ねねね、アントニオ? 数字の前の〇ってどういう意味なのじゃ?」
「賢者様、それはマイナスという意味で御座います」
え? ちょ、ちょまてよ・・・なんだよ、マイナスって・・・いきなり国家予算よりすごい赤字なの?
俺の目の前は真っ暗だ。いや、急に建物に入ったからだった。
「いらっしゃいませ。賢者様」
巫女様が、お辞儀してくれた。かわいいの~
「では、例の親子のところに参りましょう」
「うむ、頼む。あ、まて。アントニオこちらへ・・・」
アントニオが何事かとやってきた。俺は耳打ちをした。
「では参ろうか」
アントニオは小走りで出かけていった。
「あら、総督様はいかがされたのですか?」
「いあ、ちょっとな・・・頼まれてもらったのじゃ」
広場に出ると副官がでてきた。お供が変わった。ほかにも何人か武官らしき人もついてきた。
広場をまっすぐ突っ切って、右に曲がっていった。左に曲がると正門だから右は正門から遠ざかる方向ね。よし覚えた。どんどん進んでいくと、だんだん寂れた感がでてきた。通りも細くなり、通りに面する建物の壁も黒ずんでしまっている。
「賢者様、このあたりは街の恥部でございます。申し訳ありません」
「いや、いいのだ・・・」
副官は恐縮していた。いあ、平気だよ。なにしろ俺は筋金入りの貧乏神憑きだから・・・ぼそぼそと呟いたけど副官には聞こえない筈。
さらに進んでいくと、街全体がゴミの集積場のようになってきた、匂いもきつい。
外壁の傍までくると、行き止まりだった。崩れそうな石造りの建物の更に外側に木造で壊れそうな増築建物がくっついている。2階建てだろう・・・どうやら親子の住んでる建物の入り口まできたようだ。巫女様が口を開いた。
「賢者様、つきました。ここの中に暮らしていると聞いております」
「うむ、副官頼む」
「はっ」
武官たちが今来た道を全員戻り出した。巫女様は怪訝な顔をしている。いいのよ、巫女様。かれらは伝令なのよ・・・あとからアントニオがくるの・・・説明してると賢者っぽくないからね。
「では参ろうか。副官頼む。総督が来たら案内してくれ」
俺は巫女様の案内について入っていった。階段を上る、上るたびにギーと鳴る踏み板、そして板が取れて落ちそうだ。あ、巫女様がミニスカートでなくてよかった。あと、階段がぼろいから上を見る余裕がなくてよかったよ。
2階建でなくて3階建てだった。
明り取りのない廊下を進んでいく。ちょうど赤子の鳴き声が聞こえだした。泣き止まない。
巫女様は奥の部屋をノックした。
「はい。すみません。産後なので動けなくて・・・入ってください」か細い声が聞こえた。
巫女様は、俺に合図した。はいよ、はいはい。
「ごめん。邪魔するぞ・・・」
「あ、どちら様ですか」
がっくしきたけど、気を取り直した。巫女様がすぐにフォローするために、ドアから顔を見せた。
「こちらは街を救ってくださった賢者様、チュチュム様です」
女は起き上がろうとした。
「寝たままでよいぞ」
「申し訳ございません」
「それよりも、赤子が泣き止まぬがどしたのじゃろぅ?」
女は乳の出が悪いようで、赤子はお腹がすいているようだ。
なんか外で凄い音がした・・・アントニオがすぐにやってきたが・・・どうやら、階段の板を踏み抜いて下まで落ちたようだ。
「賢者さま」
おいおい、腕から血が出てるよ・・・
「おお、すまぬ。例のものをこれに」
「はっ」
総督は包みを開いた。中には、果物や、赤子用の品々があった。
「うちで、同じ日に生まれた赤子に皆より頂いたものですが、よろしければ、賢者チュチュム様の命令ですので、お受け取りいただけますでしょうか」
「そ、そんな、もったいない。うけとれません。それに、まだ神殿へのお礼もしておりませんから」
どうやら巫女様がきたので、集金もかねていると思っているらしい」
「まぁよい。受け取るのじゃ。お産費用はわしが出すぞ。それよりも、赤子のためにも養生せぬとな。おぬしのためでなく、赤子のためじゃ」
「もったいのうございます」
貧乏神子ちゃんの母は赤子と一緒になって泣き出してしまった。
出産プレゼントと、巫女様の領収証を置いて、俺らは部屋をあとにした。ついでに副官の財布からすこし銀貨をまきあげて置いてきた。副官はすこし泣きそうだ。
建物の下までおりた俺は、総督と巫女様と副官に声を掛けた。
「相談なんだが・・・わしはこの街に、救貧院とか母子院をつくろうと思う」
えっ?ていうような顔を二人がしていた。
「そのためにも次の戦いにも必ず勝ってみせる!」
アントニオが驚いて何か言おうとしている。なに、なんなの?
「賢者様、お考えは承知しましたが、勝つこととそれ関係がありますか?」
ガクッときたぜ・・・勝って、お金を稼ぐの・・・だってすごい赤字なんだから。ピーンときたんだよね。いいことをすると赤字がへるんじゃないかな・・・貧乏な人をさらに貧乏にすると、貧乏パワーが増えるような気がするんだよ。幸せにすると、貧乏パワー減るような気がしない?
俺は考えていた。服をはぎ取るということは、相手は不幸になる。貧乏神経験値が増える?相手を幸福にすると、貧乏経験値が減るのではない?
「まぁいい。アントニオ、どこかに建物を建てる場所はないか」
「この建物を壊せば何とかできますよ。立ち退きが上手くいかないんですよ」
え?それじゃ、貧乏神子ちゃんの家がなくなっちゃうじゃん・・・あれ、ということは、
不幸にしちゃうから、貧乏経験値増えない???もう、混乱して頭がとれそうだ・・・
何を考えているのでしょうか。チュチュムさま。
お金が沢山あるかと思ったら、マイナスだったとかで・・・やけくそになったのでしょうか。または気が狂ったのか・・・次回をご期待ください。