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鬼の魔法使いは秘密主義  作者: 瀬戸 暁斗
魔法高校交流会編
93/101

先輩

 土岐岳との戦いで勝利を飾った蒼真だったが、ある問題を抱えていた。

 無名の学生が「七元素」を相手にあげた大金星。そんな彼を一目見ようと、大勢の人が競技場の選手出入り口に押しかけてきており、なかなか競技場から出られずにいたのだ。


「さて、どうしたものか……」


「大丈夫よ、蒼真君。一緒に来て」


 途方に暮れていた彼の腕を引くものが1人。この状況を作り出した元凶とも言える女学生だった。


「ごめんね。こういう騒ぎになる可能性は予めわかっていたはずなのに、あなたにあんな頼み事をしてしまって」


「気にしないでください。会長から何も言われなかったとしても、俺が『七元素』と戦う未来は避けられませんでした。俺を標的にしている奴が確実に1人いますから」


「そう言ってもらえると、何だか気持ちが楽になるわ。ありがとうね」


 そんな話をしながら、2人は出口へ向かっていく。しかし、誰も彼らのことを気にする様子はない。

 それもそのはずで、今蒼真と共に歩いているのは、「七元素」の光阪恵である。彼女の手にかかれば、姿をくらまして誰にも気づかれることなく立ち去ることなど朝飯前だ。加えて、幸いにも野次馬の声で彼らの足音や話し声はかき消されていた。


「助けていただいて、ありがとうございました。では、俺はこの辺りで……」


 競技場から十分離れたところで、蒼真は恵の手を離した。

 この日、アサルト・ボーダーの準決勝と共にシェパード・ボールとポールダウン・ソーサリーの決勝戦が行われていた。直夜、澪、リサの出場するこの競技の応援に行こうと、修悟達と約束していたのだ。

 だか、彼らの元へと向かおうとする蒼真を恵は呼び止める。


「待って。今の蒼真君って、一時的にだけど私達も比にならないほどの有名人よ。人だかりに行ったら大騒ぎになるわ」


「それなら、さっき会長がしていたみたいに魔法で姿を消して——」


「いいから、こっちに来なさい」


 再度恵は蒼真の腕を取ると、有無を言わさず彼を引っ張り、宿舎へ連れ去っていった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「こんなこともあろうかと、先に一部屋借りておいたの」


 2人がやってきたのは、宿舎内のある一室。

 そのドアを開けると——。


「あっ、蒼真! お疲れ様。もう試合始まってるよ。ほら、座って座って」


 2つの画面で競技を観戦する修悟、白雪、志乃の姿があった。

 呆気に取られる蒼真の背中をポンと押すと、恵はいつになく優しい笑顔を浮かべていた。


「じゃあね、蒼真君。お友達と楽しんでね」


「会長……いろいろ手を回してもらって、ありがとうございました」


「いいのよ。私も蒼真君にはたくさん手伝ってもらってるし、何より可愛い後輩達のためですもの。ここで先輩らしいところを見せておかないとね。この学校で蒼真君達と一緒にいられるのも、あと半年くらいだから」


 ドアが閉まり、恵の姿が見えなくなると、蒼真は自分を待ってくれていた友人達の元へ向かう。彼らと並んで座ると、試合前から今までの緊張感が和らぎ、肩の力が抜けていくのを蒼真は感じていた。


「お疲れ様です、蒼真さん。もう決勝戦を残すばかりですね」


「ああ、あと1勝で決着がつく。それより、この部屋は会長が用意してくれたとはいえ、直接見に行かなくて良かったのか? 初めの約束だと、先に始まるシェパード・ボールの会場に行く手筈だったが」


「それが、試合の時間が重なっちゃってね。どっちも見るのは移動時間が足りないし、体が2つないと無理だってことになっちゃったの。やむを得ないことだったし、リサ達にももう説明済みだから、何で観客席にいなかったの、ってリサにわがまま言われることもないわ」


 そう志乃に評されたリサだったが、彼女に観客席にいる人物を探すほどの余裕は持ち合わせていなかった。

 それは蒼真と同じく「七元素」と対戦している直夜もであり、蒼真達4人の眼前に映し出されている2つの試合は、どちらも猛烈な展開を見せつけていた。

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