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鬼の魔法使いは秘密主義  作者: 瀬戸 暁斗
魔法高校交流会編

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92/101

新時代

「……痛えな、クソッ」


 救護室のベッドの上。岳は目を覚ました。


「ハッ! 試合は!?」


「終わりましたよ。我々、大阪校は3位決定戦に挑むことになります」


 勢いよく起き上がり、ベッドの横で彼が起きるのを待っていた教師の声で岳は自身が蒼真に敗北したことを否が応でも思い知らされた。

 意識が暗転する直前に聞こえた声が何度も彼の頭の中で反響する。


(……実践不足、か。確かにオレには、あの名古屋校の2人のような競い合える相手はおらん。でも……)


 岳は常にお山の大将だった。歳上だろうが関係なく、まさに敵なしであった。

 他の「七元素」とは面識があったが、魔法使いとして勝負をしたことはない。そんな彼の前に現れた壁。これを乗り越えずして「七元素」として、魔法使いとしての成長は得られない。


「強く、ならなあかんな」


 挫折を知った岳の覚悟は固い。何よりも、弱いままの「七元素」という存在は自分自身も、そして他の「七元素」の魔法使いも許してはくれないだろう。


「土岐君の意識もはっきりしているようですし、私は引率に戻ります。そういえば、君に面会に来ている学生がいると聞いています。調子が良ければ会ってあげてください」


 彼が魔法使いとして新たなステージに足を踏み込もうとしていたが、その前に重要な客人がまっていた。

 大阪校の教師が救護室を出た後、入れ替わるように部屋に入ってきたのは、岳と同じく「無元素」の魔法使いに手痛い一撃を受けた「七元素」——雷電刹那だった。


「やぁ、久しぶりだね。前に会ったのは、『七元素』の会合の時だったかな」


 日本魔法界の手綱を握る者達による会合は、表立って世間には報道されていないが定期的に行われている。

 族長ではなく、ましてや未成年である刹那と岳はその集まりに参加することは無かったのだが、いずれは「七元素」を背負い立つ者として同席する形で度々顔を合わせていた。その際には2人の間で言葉が交わされることはほとんどなく、この日が面と向かって話をする初めての機会と言っても過言ではない。


「どうした? 負けた挙句、気絶までして救護室送りになったオレを笑いに来たんか?」


「そんなことできるわけがない。勝負に負けたのは俺も一緒さ。今でも信じられないけどね。油断と驕りがあったんだろう」


 2人の脳裏に浮かぶのは、未知の敵に追い詰められ、生まれて初めて感じた敗北の恐怖。交流戦が無ければ、2人の術師が参加していなければ生まれるはずのなかった感情だ。


「……冗談はこの辺にしといてやな、本題にいかな話が進まん。決勝で当たる、結城の情報でも仕入れに来たんやろ?」


 湧き出てくる感情を押し留め、岳は重い口を開いた。恐怖に負けたままの自分を、自身のプライドが許さなかったのだ。


「それも聞きたいけど、そうじゃない。もっと広い意味で、『無元素』についての君の考えを聞きに来たんだ。異様に強い『無元素』と戦って、何か感じることがあったはずだよ」


「感じるもなにも、あいつらが強すぎるってことくらいしかわからんよ。『無元素』とか言う括りでは縛りきれんくらいにな」


「そう、強すぎるんだ。本来、魔法使いの能力は血縁関係が重要だと言われてきた。実際、俺達『七元素』は優れた血を持っていると自負している。それを『無元素』の彼らが超えていってしまった。……もう『無元素』と呼ぶのもおかしいのかもしれないね」


 魔法使いの能力は遺伝する。そのため、優れた能力を選別し、引き継がせて出来たのが「七元素」だ。


「俺達が持って生まれた両親の力で、より強くなることを望まれている。一族の当主になる前には親を超える。俺も君も、涼もそうだ」


「そうやな。それが『七元素』や」


「でも、それと同じ方法で他の魔法使いも強くなる。魔法使いは世代を重ねるほどに強くなるんだ。そして、鞍馬さんや結城のようなイレギュラーが生まれてきた。もしかしたら俺達の知らないところで、とんでもない戦力が生まれているのかもしれない」


 刹那が危惧する、次々に強力な魔法使いが生まれ出る新しい時代。

 これが現実のものとなるのか、はたまた机上の空論で終わるのか、今の彼には到底わからないことであった。

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