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鬼の魔法使いは秘密主義  作者: 瀬戸 暁斗
魔法高校入学編
22/101

任務

 土日休みが明け、また新たな一週間が始まる。

 おそらく、いつの時代も月曜日は憂鬱な生徒が多いことだろう。

 それは魔法高校でも例外ではないだろうが、そのような仕草を見せるような者はなく、1日は過ぎて行く。

 そして放課後。また部活勧誘が始まるため、蒼真は一度生徒会室に来ていた。

 蒼真1人だけでいたのではなく、彼が生徒会室に来た時にはすでにそこには先客がいた。

 生徒会長の恵、生徒会顧問の立花、そして見慣れない男子生徒の3人だ。


「あっ、こんにちは。蒼真君」


 恵は入ってきた蒼真にいつもの笑顔で挨拶をした。


「こんにちは会長、立花先生」


 蒼真が恵と立花に挨拶を返した時、その面識のない男子生徒が彼の方へと近づいてきた。


「君が結城君だね。生徒会長から話は聞いているよ。僕は魔法工学科の代表をしている村崎蓮治(むらさきれんじ)です。今後ともよろしく」


「よろしくお願いします」


 よく見てみると、蓮治の制服はデザインが蒼真達、魔法応用科の物とは若干異なっている。

 魔法高校別でも制服は異なるが、学科別でも違いがある事に蒼真は初めて気づいた。

 他学科には本当に興味がなかったらしい。


「でも、聞いてるような生徒ではないみたいだけど……」


「聞いてる?」


「光阪さんには、手がつけられないほどって聞いてたんだよ」


 蒼真と蓮治が恵の方を見ると、彼女は視線を逸らして知らないふりをしている。


「はぁ。会長の言う事はまともに受け取らない方がいいですね」


 恵の遊び相手(被害者)の輪が広がっていくのを蒼真は感じていた。


「ところで、村崎先輩と立花先生はなぜ生徒会室に?」


 横道に逸れていた話を、蒼真は元に戻すべく尋ねた。


「僕は月一の学科代表の会議があって来たんだ。会議の相手の赤木君は、少し遅れるらしいからここで待たせてもらっているんだ」


「赤木先輩を? 会長ではなく?」


 当然のように言った蓮治だったが、誰が聞いても生徒会長が学科代表でないというのは意外な事だと思えるだろう。


「学科代表を生徒会長が務めないといけないとは決まってないのよ。なら、仕事を分担した方がいいでしょう」


(この人、自分の仕事を減らしたいだけだな)


 蒼真は言葉には出さなかったが、そんな事を思った。

 おそらく代表になった(ならされた?)一彦も同じことを思っていただろう。


「じゃあ、光阪さん。結城君をちょっとお借りしますよ」


 話は突然変わり、立花が生徒会室にいたのは蒼真を待っていたかららしい。

 既に恵と話はついているようで、引き止められるようなこともなく蒼真は立花に生徒会室の外へ連れ出された。


「結城君。話があるので、職員室まで来てくれますか?」


「はい。先日の件ですね」


 言うまでもなく、校内に式が入ってきた時のことである。

 蒼真は素直に従い、立花の後ろをついて行った。


 蒼真達が職員室に着くと、一彦も同じように中年の教師、田辺(たなべ)に連れてこられていた。


「赤木先輩も来てたんですね。村崎先輩が生徒会室で待ってましたよ」


「この話が終わったら直ぐに行くから問題ない。それに、あいつには遅れるかもしれないと伝えてあるから大丈夫だ。心配ありがとう」


 一彦は蓮治が生徒会室で恵と一緒にいるのを知らない。

 よって話が長引けばそれだけ蓮治への負担が増えるのだが、それはまた別の話だ。


「もうわかっているかもしれませんが、今日2人に来てもらったのは、他でもなく先日の式の件についてです」


 職員室の奥に行き、立花は本題を切り出した。

 蒼真も一彦も予想していた通りの内容だったので、特に表情を崩すような事はなく話を聞いている。


「実は少し昔、今回と同じように外部から魔法の干渉を受けた事がありました。その時に本校の生徒が2人その外部の人間にそそのかされて行動を起こし、退学処分を受けています。行動を起こしたとは言っても、そこまで大きな事にはなりませんでしたが」


「やけに詳しく知っているんですね」


「立花先生は、ここの魔法高校の卒業生だからねぇ。しかも、風紀委員長もやってたくらいの秀才でねぇ」


 田辺の何気ないこの言葉は、聞いていた在校生2人に衝撃を与えた。


「立花先生、卒業生だったんですか!」


「風紀委員長って……」


「田辺先生、昔の話はいいじゃないですか。恥ずかしいですよ」


 立花は少し頬を赤らめている。

 誰でも昔の自分の事を話されるのは、恥ずかしいらしい。


「あと、僕が3年の担任だった時に——」


「もういいです! 早く本題の話をしますよ!」


 まだ話し足りなそうな田辺だったが、流石にこれ以上時間を割くわけにはいかないと思ったのか、もしくは立花の逆鱗に触れると思ったのか、話すのをやめた。


「式の件は教員と生徒会、風紀委員会の上層部しか知りません。なので2人には、1つ頼みごとがあります」


 初めから真剣な立花はもとより、田辺も真剣な表情をしている。


「まだいると決まったわけではないですが、外部の人間と関わりがある生徒がいる可能性がゼロとは言い切れません。前例もある事ですし……。そこで、それらしい生徒がいないかチェックしていて欲しいんです」


「なるほど。先生方があまり動きすぎるとそういった生徒がいた場合に、警戒される恐れがあるからですか」


 一彦は冷静に話の意図を汲み取って考えている。

 さすがは恵の右腕として、生徒会の仕事をこなしているだけある。


「わかりました。ですが……」


「どうしたの? 結城君?」


「もし、そのような生徒を見つけた際に抵抗してきたら、その時は実力行使で構いませんよね」


 そう、確実に捕らえるためには実力行使が一番手っ取り早い方法だ。

 実際、蒼真や一彦が本気で生徒を捕らえようと向かっていけば、結果は既に見えている。


「そうね……。極力ないようにはして欲しいけど……。本当の最終手段だって言うことだけ、頭に入れておいてね」


 立花は、絶対に力で抑えつけて生徒から話を聞き出すべきではないとは考えていない。

 目的を持って動いている生徒が、無抵抗で学校側に従うとは思えないからだ。

 よって、最後の手段として実力行使、つまりは魔法を使うことも許可したのだ。


「よろしくお願いしますね。もし、何か必要になれば言ってください。できる限り学校として協力しますので」


「わかりました。で、一体この事をどの生徒が知っているか教えてもらえますか? 知らない生徒に話してしまう可能性があるので」


「生徒会では、明智さんを除く全員。風紀委員は委員長、副委員長の2人です」


 一彦の質問に立花はすぐに答えた。

 生徒では、この7人しか詳細を知らないということになる。


「明智には話していないんですね」


「明智さんは、争い事には向いていないと私が判断しました。確かに彼女は優秀ですが、それは学校で評価できる成績面でのことです。性格や身体能力などを考えると、もし戦闘になった時には脆さがありますので」


 この数日で立花は、そこまで分析していた。

 鋭い観察眼を持つが、幸い蒼真は一彦達と同じ「無元素」の優れた魔法使いとしか、その目に映っていないのだろう。


「私の考えは聞いてもらいましたが、どう思いますか?」


「そうですね。俺も明智を巻き込むのには反対でした」


 一彦はそう答え、蒼真は頷いた。


「では、これくらいにしておきましょう。2人共まだ仕事があったのに、呼び出してすみませんでした」


「いえ、俺達に出来ることならやりますよ。生徒会役員なので」


 蒼真、一彦は職員室を出て、それぞれの仕事の為に動き出した。

新登場人物紹介


・村崎蓮治ー国立東京魔法高校3-E。魔法工学科代表。


・田辺ー国立東京魔法高校2-C、3-D担任。

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